失友はね、失恋よりタチが悪いわよ ◇ ◇ ◇ 健太と絶交宣言から数日―――。 俺は見事に体調を壊していた。 あの日から今日に至るまで、熱に魘されている。 大切な友を失っちまったぜ! という精神的なショックからではなく、完全にこれは川に落とされたせいである。川にどぼーん! 制服びしょ濡れ! しかもすぐに着替えず、夜風を受けながらグズグズとヨウに泣き言を連ねた結果、情けないことに熱を出した。家に帰ってバタンキューしたんだ。 いやさ、あの日、ヨウに泣き虫毛虫で愚痴を零していたんだけど、途中から寒気……悪寒が襲ってきたんだ。 最初はショックのせいだと思い込んでいたんだけど、時間が経つに連れて体がゾクゾクぞわぞわ。徐々に気分も悪くなり、舎兄が俺の体調不良を見抜いて家まで送ってくれた。 そこまでは良かったんだけど、家に帰った俺は気が抜けてそのまま部屋で倒れてしまった。いたく真面目な話である。 簡単にいえば風邪をひいてしまったんだ。 ただの風邪ならまだしも高熱を出して、貧血に近い立ち眩みから、バッタンキュー。 これもそれも健太のせいだ。 あいつが川なんかに落とすから。 マジ、なーんで川に落としやがったよ。 サヨナラバイバイこれから憎むからのサンキュで十分だったろうに、この仕打ちどうしてくれよう! 追い撃ちをかけるようになかなか熱が下がらず、家族から過剰に心配された。 部屋で倒れている俺を発見した第一人者は母さんらしく、そりゃもう悲鳴の嵐だったらしい。 いつもはマイペースのほほんの父さんも、この時ばかりは血相を変えていたと弟の浩介に教えてもらった。 俺が家族の立場だったら、おんなじように過剰に心配するだろうな。人が倒れている光景なんてそうは目にしないし。 こうして連日、絶交宣言と熱の苦しさで地獄を見る羽目になった俺はベッドの住人と化していた。 こっちが体調を崩している間にヨウ達の追試が始まった。 追試期間は月曜からの三日間になるわけだけど、正直土曜から高熱で魘されていた俺には曜日の感覚がない。 幸い、追試組には入っていないため期間中は休みになるのだけれど、今日が何曜日なのかよく分からず。 それだけ高熱に参っていた。熱で苦しむなんてインフルエンザ以来だ。 風邪すら滅多にひかないのだけれど、今回ばかりは心身共に弱っていたせいで熱が簡単に引いてくれなかったんだ。 そんなわけで俺は暫くの間、熱と絶交宣言と自分の判断に身悶えることになった。 あの時の判断は正しかったのだろうか。絶交以外の道はなかったのか。他の道があったとしたらそれを今選んでも間に合うのだろうか。 この次、健太に会ったらどんな態度を取ればいいのかエンドレス。 なかなか熱が下がらない原因の一つは、思い詰めるように健太のことばかりを考えていたからだろう。 楽しかった過去とこれから先の未来。色んなことを想像しては熱の苦しみに呻いたり、偏頭痛が出てきたり、嘔吐感に堪えてたり……踏んだり蹴ったり名時間を過ごしていた。 そのせいか、熱を出している間は携帯を見る余力もなく放置していた。 通学鞄に突っ込んだままの携帯には次から次に溜まるメールが溜まっていたのだけれど、病人は気付ず。 まさかそれが仲間達に不要な心配と疑念を抱かせているなんて、その時の俺には想像すらつかなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |