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「チームメートのオレ達だって信じろよ!」




「――日賀野の奴、二人相手に何考えているんだ。こんな団体様で俺等を追い駆け回すなんて」



「いいから走れって! さすがにこの人数じゃ、オレでも相手はできねぇ! オレ喧嘩はそれなりにしかできねぇし!」

「俺なんてちっともできねぇよ! あー、しんどいっ!」



全力疾走で喋るもんじゃない、すぐに息が上がってしまう。

けれど足を止めるわけにはいかない。

掴まれば、俺達にどのような末路が待っているのか想像しなくとも予測できてしまう。

背後をチラ見する。
俺達が全力疾走しているように、後ろの団体様もガチで追い駆けて来る。恐ろしい奴等だよまったく。

罵声や怒声を発しながら追い駆けて来るところがまた恐怖心を煽られる。複数のターミネーターに追い駆けられている気分だぜ。

(しかし参ったな。これじゃ逃げることで手一杯だ。ヨウ達に連絡したいけど到底無理だし)

しかもこのままじゃ、確実に俺達の方が早くスタミナ切れする。

何か手はないか。何か手は。
せめて身を隠せる場所があればいいんだけれど、いかんせん此処は住宅街だしな……住宅街。そうだ!

頭上に豆電球を浮かべた俺は、それを明滅させて閃いたと指を鳴らす。

「モト!」

隣を走る中坊の腕を掴むと、相手を先導するためにモトより先に走る。驚き返るモトを余所に角を右折した。

「そ、そっちは行き止まりだぜ?!」

モトを右から左に受け流す。 
相手の注意したとおり、そこに見えたのは行き止まり。民家の塀が顔を出す。

「のぼるぞ!」「はあ?!」

頓狂な声音を上げるモトに助走をつければ越えられるからと励まし、先に塀に飛びつく。塀の背丈はさほど高くない。俺達の身長を持ってすれば越えられる。

(ヅッ―!)

完治していない左肩に激痛が走る。

くそっ、こんな時に。
舌打ちを鳴らしつつ塀の上にのぼると、もたついているモトに左手を伸ばす。

左肩が悲鳴を上げた。裂かれそうな痛みを堪え、モトの体を引き上げる。

「サンキュ」礼を告げてくるモトに、「こっちだ」俺は塀の向こうに飛び下りて誘導を再開する。

目に飛び込んできたのは民家の敷地。その向こうには大通りが見える。そう此処の壁を越えれば大通りに出るんだ。   

「お邪魔しました!」

侵入者に呆気に取られている住人の奥さんに挨拶し、モトと大通りに出た。

通行人に紛れるように走って、隠れて、走って走ってはしって。それでも粘着質の高い団体様は撒けない。ならば撒けるまで走るまで。

「っ、」

無理に塀をのぼったせいで、左肩が疼いて仕方がない。

「ケイ」

徐々に減速する俺に気付いたモトが声をかけてくる。「気にしなくていい」それより、この先に路地裏がある。一旦そこに飛び込もう。

モトに指示して先に走るよう促す。
物言いたげな顔をしてくる中坊に早くしろと背中を押し、ビルとビルの間にできている細い道へ。

先を走るモトに行く道を指示しつつ、俺は周囲に目を向けては物を散らしていく。
それはゴミが入っているポリバケツだったり。積み重ねられているプラスチックケースの箱だったり。放置されている自転車だったり。

少しでも道を塞ごうと努める。時間稼ぎにはなるだろうから。


再び大通りに出ると、俺達は近場の服屋に飛び込んだ。

わりと広い服屋の試着室に身を隠すため、ローファーを脱ぎ、バタバタとカーテンを閉める。その際、俺のローファーは手に持って上がった。

試着室前に二足も靴があると怪しまれるからな。
尤も、店員さんには既に怪しまれているけれど(だって野郎二人で試着室って)。

今しばらく試着室で息を殺し、外の様子を窺う。


いつまで経っても追っ手らしき声は聞こえない。


静かにモトと顔を見合わせ、助かったとその場に座り込んだ。やっと安心してあがった呼吸を整えることができる。



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