07-15
「ヨウさんはなヨウさんはなっ、罪さえも赦される凄い人なんだ! そこらへん分かれよ!」
「ッハ、そっか……モト、俺っち、間違っていた!」
ははっ、人様の学校正門前で何言ってんだろ、あいつ等。うっるせってんだ。
俺達は同時にヨウを見やる。ヨウは既に引き攣り顔だった。うん、分かるよ。その気持ち。あんなに熱烈アピールされたら、誰だって引くもんな。
子犬のようにキャンキャン喚きながら、二人はヨウの前に立った。
揃ってぺこりと挨拶。顔を上げた二人の目がやたらめったら、きらきら輝いている。尊敬されているのはよーく分かるけど、めっちゃうざったそうだな。
「テメェ等な……」
熱烈なアピールに軽く青筋を立てるヨウに気付かないキヨタは、大尊敬している不良から視線を逸らして各々の不良たちに挨拶。
最後に俺に目を向けてきた。そしてビシッと指差してくる。
「出たっすね! 今は取り敢えず、ヨウさんの舎弟の座に居座っている地味でイケていないケイさん! こんにちはっス!」
地味の何が悪いよ? 地味の何が?
ちぇっ、けなし言葉と挨拶は別にしてくれないかな。
俺、どう反応を返せばいいか分からないだろ。
結局、けなし言葉をスルーして普通に挨拶を返した。俺って超寛大! いや、不良に悪態付く度胸がなかっただけなんだけどさ!
なんで二人が俺達の高校前に現れたかというと、簡単に言えばいつもの溜まり場に向かう途中、俺達の姿を見つけて待ち構えていたんだと。
今の溜まり場と俺達が通っている高校は目と鼻の先。中学から直で来るモトとキヨタは必然的に此処を通るというわけだ。俺がヨウならありがた迷惑と言ったところだ。
あんなに熱烈な歓迎をされるなら、先に溜まり場に行って欲しいと思うよ。
閑話休題。
俺達はヨウ信者を交えて主としている溜まり場、近所のスーパー近くの倉庫裏に向かった。
溜まり場には既に他校に通っているシズ達が到着している。
全員が集まったところで早速集会開始。
池田チーム情報を一通り弥生が報告し、リーダーのヨウと副リーダーのシズが中心となってこれからの行動を組み立てる。
皆がそれに意見をしたり、異論を唱えたりして、話し合いは進んでいった。
泣きたいことに池田チームを潰しに動く日程が着々と決まりつつあるよ。俺、喧嘩できないのに大丈夫かな。
ある程度のことを話し終わった後、おもむろにシズがヨウへ疑問を投げ掛けた。
「舎弟問題は……どうなっている?」
ヨウは能天気に一笑して、まだ決め途中だって中間報告。
早く解決しろと呆れるシズを無視して、「けど一つ決めたことがあんだ」舎兄は俺に視線を送って、浮かべていた笑みを消した。
真顔になるヨウの醸し出される空気が妙に緊張しているのは気のせいだろうか?
「今この瞬間をもって、俺はケイと舎兄弟を解消する」
静まり返るたむろ場。
和気藹々としていた空気は殺伐とした味気のないものへと変化する。
その場にいたチームメートは呆気取られていた。
あのワタルさんでさえ目を真ん丸に見開き、言の葉を理解しようと努めている様子が窺える。
俺自身も驚き返っていたけれど、皆ほど驚愕は抱かなかった。どこかで察していたのかもしれない。
「本気か?」
逸早く我に返った俺の問いかけに、「ああ」これは思い付きじゃなく、少し前から考えていたことだとヨウ。
そうか、なら仕方がない。
微苦笑を崩す俺が首肯を示そうとした、その時、
「なん。で?」
意味が分からないと意見する人間が出てきた。俺を応援してくれていた弥生だ。
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