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舎兄弟解消








放課後。

俺はチャリを押しながらヨウやワタルさん、ハジメや弥生と一緒に学校正門に向かっていた。タコ沢も一緒だ。

ほら、やっぱ何だかんだでこいつもチームに入っちまったからな。必然的に俺達と行動を一緒にしないといけなくなったわけで。

「なんで俺が……はぁーあ」

珍しく吠えることのないタコ沢は大きな溜息をついている。

どんまい、心中で俺は声を掛けてやる。あくまで心の中で。口に出せば絶対に睨まれるだろうから。

きっとタコ沢は頭の中でどうやってチームを離脱しようか考えているに違いない。タコ沢は不良の中でも群れないタイプっぽいからな。

見かねて声を掛けたのは、意外にもワタルさんだった。


「タコ沢ちゃーん。チームに入っとけばイイコトあるぴょん」

「だっれがタコ沢だぁあああ! 俺は谷沢だっ!」


闘争心に火がついたのか、タコ沢はこめかみに青筋を立てて握り拳を命知らずなことにワタルさんに向けていた。

だけどワタルさんは余裕のよっちゃんだとばかりに笑声を漏らし、タコ沢の肩に肘を置いた。

「オイ馴れ馴れしいぜゴラァ!」

またしても吠えるタコ沢に、ワタルさんはニヤリニヤリ。なーに企んでるんだ。ワタルさん。

「ヨウちゃーんとケイちゃーんをぶっ飛ばしたいんでしょー?」

ひどっ、ヨウはともかく俺までダシにつかいやがったよこの人! こっくりと頷くのはタコ沢である。

「ああ、雪辱を晴らすためにな」

「じゃあチームに入っとけば好都合ジャジャジャーン! なんたーって、二人はチームにいるしさ。これから喧嘩も多くなるだろうから、強くなる機会だってあるし? それに君がすこーし目を放した隙に二人、ヤマトちゃーん達にヤラれて喧嘩なんてしてくれなくなるかもよ? いいの? コテンパンにやる前に向こうが取り合ってくれなくても?」

それは我慢ならないとタコ沢は腕を組む。

話を聞いていたヨウがこっそりと「だ・れ・がヤマトに負けるって?」、ワタルさんに向かって握り拳を作ってたのは内緒だ。
それを俺とハジメで止めたのも内緒だぞ(めっちゃ恐かったッ!)。余所でワタルさんは言葉を重ねて話を続ける。

「取り敢えずチームに入っておいて、強くなればいいじゃん。ある程度力がついたら、ヨウちゃん達にリベンジ! タコ沢の名前も返上! どーよ? 舎兄弟をやるのは君しかいないものねねねん?」

「美味い話だが……言いくるめられてる感アリアリなんだゴラァ」

「気のせいぴょーん!」

タコ沢って結構常識人っぽい。

なっかなかワタルさんの話に乗ろうとしない。わりと考える奴なんだな。わりと。

そしたらヨウが、「こいつが強くなるわけねぇ」ちくりと悪態を付く。

途端に逆上したタコ沢が断言。絶対に強くなってリベンジしてやる! とヨウと俺を交互に指差して吠えた。
どうやら俺達が何か言えば乗ってくるらしい男らしい。この単純め!

俺なんてお前にタコさんウインナーを頭に乗せただけじゃないかよ。そろそろ時効じゃね? 俺が君にしでかした罪ってちっさくね? 心の中で嘆きながらヨウ達と正門を抜ける。

同時に「ヨウさぁあああん!」大音声が飛んで来た……めっちゃ煩い、その声の主はもう分かると思うけど。 


「ヨウさんヨウさんヨウさん、こんにちはー! 今日も輝いてますね。俺っち、今日も惚れちまいそうっスよぉおおお! どうしてそんなにカックイィイイんですかぁああ! ヨウさんって罪な男っスね!」


キラキラと輝く笑顔を向けるヨウ信者そのいち。

腕が取れるんじゃないかと心配するほど手を振ってくる白髪頭の不良は、ヨウに大大大アピール。同じくヨウに手を振っているヨウ信者そのに。

親友の言葉に馬鹿じゃないかと異議を唱えていた。



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