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07-12


朝から阿呆なやり取りで舎兄と約束を取り結んだ俺は病院を口実に、遅刻の一報を学校へ連絡。

九時ごろにヨウと公園で待ち合わせた。その後は肩の具合を診てもらうために病院へ。
順調に回復している旨を伝えられ、俺もヨウもホッとした。

診察が終わるとコンビニで軽食を買って、のらりくらりと待ち合わせた公園に戻って駄弁ることにする。

メインはヨウと話すことだ。
舎兄弟として、これからのことを決めていかないといけない。

(さてと、どう切り出そうか)

ブランコに腰掛けながら俺はあんぱん、ヨウは握り飯を口に運ぶ。

そういえばヨウと二人っきりってのも久しいな。
舎兄弟成り立てだった頃はヨウと二人で過ごす時間が多かったんだけど、最近じゃチームで話し合ったり、チームメートの誰かが傍にいた。

だからこうやって二人っきりってのも久しぶりだ。しみじみと感傷に浸りながら缶に入ったカフェオレを啜る。


「ヨウ、俺達やばくないか?」


ついに俺から話を切り出す。
まるで、話題を待っていたかのようにヨウは重々しく溜息をついて、「マジどーするかなぁ」ずっと溜めてた気持ちを吐き出す。

「舎弟問題。まさかここまで話がでかくなるなんてなぁ。後継者だの何だの考えたこともなかったぜ。正直参った。俺の決定でチームに支障が出るなんざ言われてみろ。下手に決められねぇだろ?」

ははっ、だろうな。
普段から真面目に考えていたら、こんな騒動にはならなかった。俺だって舎弟にならずに済んだよ。

「現時点じゃどうなんだ? モトやキヨタは舎弟になりえそうか? あ、別に俺に気ィ遣わなくていいから」 

間を置いてヨウは答える。 


「チームのことだけを考えるなら、手腕のあるキヨタが最有力候補だ。けど俺をいっちゃんに慕っているのはモトだ。あいつが俺の後を必死に追い駆けていることは知っている。それこそ並々ならぬ努力していることも。だが俺の舎弟はケイだ。手前でイケるところまでいこうなんざ誘っておいて、それを蹴るなんざダサい……考え過ぎて頭がどーかなりそうだ!」

「ははっ、そりゃヨウが俺達に気を回し過ぎなんだよ。ヨウって何でも背負い込み過ぎなところがあるし」


能天気に笑ってブランコを揺らす俺に、「笑い事じゃないんだぜ?」舎兄が落胆の色を見せた。

そうは言っても俺の率直の感想なんだから仕方がないだろ? 何度でも言う。

ヨウは仲間に対して考え過ぎる面がある。
自分の決定で誰かが傷付くんじゃないかと懸念しているようだ。

確かに、ヨウの一言で三人の関係が大きく左右されるのは明白。
ヨウがモトを選ぶにしろ、キヨタを選ぶにしろ、俺を選ぶにしろ、一見の関係性は180度変わるだろう。

もしかするとヨウはその関係性によってチームが崩壊するのでは。ないし、自分の安心できる居場所が決壊するのでは、と畏怖しているのかもしれない。


「丸く収まるのはモトを舎弟にすることだろうな。キヨタはモトを推すために候補したようなもんだし」


助言にきょろっとヨウの眼球がこっちを向く。

「それで解決すっか? まず明確な理由がねぇだろ? 理由ねぇとモトだって納得しねぇし……それにケイ、テメェはいいのかよ」

そりゃ仮に俺以外の男を舎弟に選んだ日には“無理やり舎弟にしてリストラかよ!”なーんて不貞腐れる気持ちが生まれるだろう。

けれどそれ以上の気持ちも、以下の気持ちもない。
それがヨウの決定なら、俺は同意するし納得もする。

なにより、俺は喧嘩ができない足手纏いな男。チームの足を引っ張っている自覚は持っている。


「俺達の舎兄弟が終わるだけだよ」


答えを待っているヨウに微笑んだ。
若干不満げな面持ちを作っているイケメンは、「だけ。ね」意味深長に鼻を鳴らした。

そんな兄貴に問う。


「終わっても変わらないだろ?」



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