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07-10




「――ココロ。アンタ……ケイと何を話してたんだ?」



響子の問い掛けに、ココロは力なく笑った。

「お互いに、強くなりたいですね……と話をしてただけです」

それが思いのほか盛り上がってしまったのだと目尻を下げ、恍惚に前を見つめる。

ヨウに話し掛けているケイは近くにいたモトやキヨタからやんやん言われているようだけれど、彼はそれをものともしない。
持ち前のノリ良い性格で罵声その他等々を受け流し、普通に不良と会話を交えている。

ココロには、それがとても凄いことだと思っていた。普通に不良と馴染めているケイは本当に凄い。

最初は少し戸惑いもあったっけ。ヨウが自分と同じような地味な男の子を舎弟として連れてきた時には、なんで? と戸惑ったけれど。

同じ目立たない子があんなにも不良達と交わって、喧嘩に参戦したり、チームのために動いたり、時に友達と喧嘩して挫折したりしてたけれど。

何があっても不良達と対等に向かっていく直向きな姿に強い憧れを抱いた。自分にはない強さを、彼は持っていると思う。

彼に対する強い憧れと、それから……。


(ケイさんに『必要』って言われた。凄く嬉しかったなぁ……もっと頑張ろう)


見ていないようで、意外と自分のことを見てくれてることも分かった。それだけで幸せだ。


(あ、誤解されてないかな……誤解だけはされたくないんだけど。ヨウさんには本当に憧れしかないから……でもケイさんには好きな人がいるようだし。多分、弥生ちゃんなんだろうけど。困ったなぁ。私じゃ勝ち目なんてないし)


「ココロ……アンタ、百面相になってっけど悩みでもあるのか?」


含みある問い掛けには笑いを入っていた。

響子には見抜かれているのだろう。自分の煩いを。

彼女に目を向けると、

「もっと行動してもいいのにな」

笑って頭を撫でてきてくれた。それに羞恥を噛み締めながらも、ココロは今はこれでいいのだと思っていた。

背中を見つめているだけで十分だ。

直向きに不良と共に走る、彼の背中を見つめるだけで今は十分なのだ。



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