07-08
こうしてお騒がせ舎弟騒動は、舎兄であるヨウの責任のもとで決められることが決定した。
候補者は三人。
現時点でヨウの舎弟になっている俺と、騒動の元凶のキヨタ、んでもって前からヨウ信者のモト。
この三人の中から、ヨウの相応しい舎弟を決めることになったんだ。
しかもヨウの責任は重大で舎弟決定プラス、周囲が納得するような説明をしなきゃなんないんだからな。
チームのためにも慎重に選べってシズから再三注意をされていた。
ヨウは事の大きさにスッゲェ参っているみたいで、今日一日だけで手足の指以上の溜息をついていた。
あいつは頭を使うことに関しちゃ、ホントからっきしだからな。頭痛がするって嘆いていたよ。
……まあ俺的に言わせれば自業自得だって。これに懲りたら、少しは思い付き行動を控えてくれよ?
舎弟騒動後は半強制的に仲間に入らされたタコ沢を交えて(タコ沢は帰りたがってたけどさ)、今後の策について話し合った。
日賀野達が情報や人材の輪を広げているのなら、俺達も輪を少しずつ広げていく。
それは勿論だけど、輪を広げるだけじゃ駄目だ。向こうの輪を潰していかないと。
向こうの輪が小さければ小さいほど俺達が優勢に立てる。向こうは繋がりの輪が大きいみたいだしな。
「だったらまずは情報源を沢山持っている池田チームを潰すのが良いと思うよ」
俺等の情報網役・弥生が意見し、その流れでいこうって決断する。
池田というのはこの辺一帯を縄張りにしてる他校の不良。本名、池田 邦一(いけだ くにかず)。
俺はまったく知らなかったんだけど、巷では結構有名な不良さんらしい。
その不良さんが属しているチームは、日賀野達と協定を結んでいるようだ。互いに情報交換をしているんだと。
日賀野チームの中には魚住っていう情報網役がいるけど、やっぱ向こうも一人じゃ限度があるわけで。
魚住に次いでの情報網役がいるってわけだ。それが池田邦一率いる不良チーム。
こいつを潰せば、随分状況も変わる。
情報網役ってのは魅力的でそいつ等を手玉に取れたら万々歳だけど、なにせ日賀野達と協定を結んでいるチームだからな。
裏切られる可能性もあるだろうし、取り敢えず潰すって形で話は纏まった。
こっちはこっちで大変なことになりそうだ。まずは池田達のたむろってる場所を探さないとな。
倉庫裏で延々と続いていた話し合いがようやく終わり、俺は大きく伸びを零す。
「イタッ」
激痛が左肩に走り、軽く手を添えた。動かす度、左肩に鋭い痛みが走る。完治には程遠いな。鉄パイプで負わされた怪我は並大抵のものじゃないや。
優しく患部を擦っていると、「大変だね」声を掛けられた。
声を掛けてきたのは弥生。
それにココロも一緒だ。弥生は微苦笑を零しながら、俺の背中を軽く叩いて応援していると言葉を贈ってくれた。
「私、ヨウの舎弟はケイだと思っているから。改めて舎弟に選ばれるよう、頑張ってね」
「ははっ、サンキュ。弥生。でもなぁ。相手が悪いって」
俺はヨウの方に目を向ける。
ヨウの周囲にはカッコイイと連呼しているキヨタ、それから今回の騒動を何度も深く詫びてるモトがいた。騒々しい光景極まりない。
どっちも喧嘩ができる不良だしな。
ひとりなんて合気道で全国だろ? 勝つ負けるの前に、俺、天に召されそう。
ゲンナリする俺に対し、弥生は変わらない応援を送ってきてくれる。
「ケイだって、すっごく頑張っているじゃん。いつも陰から見ていたよ、ケイの努力している姿。ケイらしく、がつーんと二人を納得させればいいんじゃないかな? 何よりケイは私を助けてくれたんだから、きっと何があっても大丈夫だよ!」
「ね?」笑顔で励ましてくれる弥生に、柄にもなく俺は照れた。
こんな風に言われると、あれだな。すげぇ嬉しいな。
女の子に言われるともっと嬉しいな。やっだなぁ、俺、女の子に対する免疫ほんっとねぇな。
でも超嬉しいって。応援されるとさ。
シズが池田チームの情報を入念に聞くために弥生を呼んだ。
「はいはーい」
返事をする弥生は頑張ってとウィンクを送り、颯爽と駆けて行った。
弥生って人を元気にさせる力があるよな。
今の応援でなんか頑張れそうな気がする。あくまで気がするだけどさ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!