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07-04



清々しくタコ沢を伸したヨウはモトの存在に気付いたのか、まずモトに声を掛ける。そして隣にいるヤツは誰かと疑問を口にした。


「俺の一番のダチなんです」


モトは白髪頭の不良を小突き尊敬するヨウに友達を紹介、しようとする前にその不良は大音声で言った。

「俺っち、貴方のすべてに一目惚れしたっス! ヨウさんの噂、よく聞いてるっスけど、ぜーんぶがカッコイイっス! 男の自分から見てもめっちゃ惚れるっス!」

「お……おお、そうか。そりゃサンキュ」


「気安くヨウさんって呼んですみませんっ。でも俺っち、貴方に会えただけで胸の鼓動がッ、あぁあああやばいっスよぉおおおお! 本物は超カッコイイっス!」


うわぁーを。これまた熱の入った告白なことで。

ちょっと見方を変えれば大変誤解を招く発言に違いない。

ヨウは突然の告白に面食らっているし、モトはモトで「あったり前だろ!」何を今更とばかりに鼻を鳴らしている。
普通はもっと別の言い方があるだろって友達にツッコむところなのに、モト、お前、当たり前だろって……。

「ヨウさんはなヨウさんはな! 誰よりも一番カッコイイ不良なんだぞ! 地元じゃ一番なんだぞ! 分かってるのか、キヨタ!」

地元じゃ一番かどうかは分からないけど、ヨウはイケメンだしな。俺等のチームの中じゃ飛び抜けてる超イケメン。

(自分で言ってて虚しいけど)舎弟の俺が霞むほどのイケメン……チックショウ、惚れるかどうかは置いておいて凡人の俺からしたら羨ましい限りだぜ! 妬んでも仕方が無いよな?! 妬みは生理現象だよな!

「分かってるモト! 地元の枠を越えてもヨウさんはカッコイイ不良なんだろ!」

いやぁ、さすがのヨウも地元の枠を越えるかどうかは分からないけど。実際に枠を越えたらモデルも夢じゃないぜ。

さすがに大袈裟だよなぁ。ヨウがイケメンってのは認めるけどさ。


「おうよ! 日本一だ! 日本中の不良が束になってもヨウさんには敵わない!」

「いや世界一だろ! 外国の不良にだってヨウさんは負けない!」


……駄目だこりゃ。こいつ等は根っからのヨウ信者だ。

崇拝っぷりが凄まじくてこっちが引くっつーの。ヨウも引いているみたいだ。体を引いて困惑している。

二人してカッコイイと騒ぐもんだから、蚊帳の外にいるヨウが俺達に救いの眼差しを送ってきた。

俺とハジメはアイコンタクトを一つ取って愛想笑い。

見捨てるわけじゃないけど、あれをどう救えと? ヨウ信者を止められるのはヨウしかいねぇって。

無闇に俺等が入っていったら逆ギレされそうで恐いしな。ヨウ信者は恐い。めっちゃ恐いぞ。

現に俺はヨウ信者のモトに初対面で蹴られそうになったしな! 悪いけど俺じゃお前は救えないぞ、ヨウ!

ゲラゲラと笑うワタルさんは目尻に溜まった涙を拭きながら「男女にモテモテ」と茶化している。

響子さんはまた煩いのが増えたと呆れているし、弥生とココロはまだ自分達の会話に浸っているし、シズなんかまだうたた寝。タコ沢はまだ伸びている。

誰一人、ヨウを助けようとする奴はいない。

ヨウは自力で状況を打破しようと思ったんだろう。「おい」騒いでいる二人に嫌々声を掛けていた。

途端にピタって騒ぎ声は止まり、モトが改めて白髪頭不良を紹介する。
キヨタと呼ばれている不良の本名は村井 清隆(むらい きよたか)。愛称キヨタだそうな。

前々からヨウのファンだったらしく、どうしても会いたいと言うから此処に連れて来たそうな。

日賀野の件があるから安易に人を連れて来るのもどうかって思うけど(ヨウはタコ沢を考え無しに連れて来たけどさ)、キヨタはモトの一番の友達みたいだし、あの様子じゃヨウ側の味方。

モトも此処に連れて来ても大丈夫って判断したんだろうな。

もしかしてモトはキヨタをチームに入れるつもりなのかな? 見ている限り、そういう素振りはないけど。

思った瞬間、モトがヨウにキヨタがチームに手を貸してくれることを告げていた。きっとキヨタはチームの糧になる。そう付け足して。

「キヨタは凄いんですよ。少し前まで合気道習ってたんで喧嘩がめっちゃできるんです」

「合気道を? キヨタ、ちっせぇからそういう風には見えねぇけどな」

確かに。
目分だけどキヨタの背丈は165ちょいあるかないか程度。俺でも170あるし、チームの男子は大体170越えてるからキヨタが小さく見える。

「小さいと馬鹿にもできないんですよ、ヨウさん。キヨタは合気道で全国に行ったことがあるんです。キヨタ、表彰されたんだよな?」

「ちょっとな……そんなに凄くは無いんだけど」

「凄いじゃんかよ! 準優勝しているんだから!」

モトの紹介にヨウは勿論、俺達もすげぇって感心しちまった。

だって合気道で全国だぜ? 準優勝で表彰されたりもしたんだぜ? そりゃ喧嘩も強いわなぁ。


「なら俺より強いな」


ヨウの褒め言葉に、「そんなことないっス!」滅相もないとキヨタはかぶりを振った。



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