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06-20




「モトで最後だな。うっし全員揃った」 



ブランコに乗って、悠々と立ち漕ぎしていたヨウは、全員揃ったことに満足気に頷いて勢いよくブランコから飛び降りた。

反動でギィ……ギィ……と公園に金属の軋む音が鳴り響く。

誰もその音に目をくれる奴はいない。

隣のブランコに腰掛けていた俺も、ヨウの後を追うようにそれから降りてみんなに歩み寄る。


最初に公園に来たのはワタルさんだった。

はじめから学校をサボってたみたいで俺達が公園に到着する頃に合流した。その次はハジメと弥生。授業の最中にも関わらず抜け出して来たらしい。

次に響子さんとココロ。

一時限目だけ授業を受けて抜け出してきたようだ。地味真面目ちゃんのココロまで抜け出してくれるのは意外だと思った。マジで。


最後はモトだ。

中学校から公園まで若干距離がある。だから一番最後にやって来た。

つまり誰一人欠席せずに、この場に全員揃ったということだ。一部を除いて、みんな、何となく呼び出された雰囲気を察してるんだろうな。

「ヤマトのこと?」

ハジメが開口一番にヨウに疑問を投げ掛けた。

ヨウは頷いて昨日のこと、宣戦布告してきたことについて話し始める。

さして誰も驚く様子はなく、そういう展開になって当然だという顔をした。

だよなぁ。
ずっとちょっかい出され続けていたみたいだから、そういう展開になってもおかしくないよな。

「中学の“あの日”の対立からこれは始まった。あの日から今日に至るまで随分俺達は奴等にしてやられてきたが、もう我慢の限界だ。今度はこっちから仕掛ける。本気で掛かるつもりだ」

「やーっと本気でやれるりんこ。判断を出すのが遅いってぇ」

「うるせぇなワタル。判断を出すってなんだよ。俺は別にリーダーじゃねえぞ」


「も、リーダーも一緒でしょ。あの時の対立から、ヨウちゃーんはリーダー的存在だったし? 向こうはヤマトちゃーんが頭(かしら)だもののん。じゃあヨウちゃーんがこっちの頭するべきなのが筋ってもんっしょいワッショイ」


「もしかして無自覚だった?」ワタルさんはケラケラ笑う。この状況でよく能天気に笑えるな……感服するよ。

響子さんもワタルさんの意見に同調していた。

ヨウはリーダーだって。そして副リーダーはシズだって。

それぞれそういう素質がある、彼女は煙草の先端を噛みながら言った。

まあな、ヨウはヤマト対等にやり合えるだけの力はあるし、シズもいざって時になると的確な指示や意見を出すみたいだしな。

リーダー、副リーダーってのも分かる気がする。うん納得。

「リーダーって柄でもねぇんだけどな」

ヨウは顔を渋めながら話を続けた。


「宣戦布告した以上、もう後には引けねぇ。特にワタル、シズ、ハジメ、響子、モト、そして俺は引けねぇ。なにせ分裂した時のメンバーに入ってるんだからな。引いたら最後、負けを認めることになる。ンなの、俺の性分じゃねえ」

「誰でもそうだって。うちだってちょっかい出されっぱなしで腸煮えくり返りそうだ」


響子さんはゆっくりと紫煙を吐き出しながら鼻を鳴らす。

分裂時のメンバーは全員同意見みたいだ。引く気配も異論を唱える気配もない。

「問題は三人だろ」

響子さんは名前を呼ばれなかった俺、弥生、ココロを順に指差す。
そりゃな……俺達は中学の事件と全くの無関係。高校から知り合った関係だから、関係ないっちゃ関係ないけど。

陰男子という名の勇気を振り絞っておずおずとヨウに意見する。

「俺はヨウの舎弟だし二人だってもうヨウ達と関わった。関係ないけど関係あるだろ? 関わるなって言われても、多分もう手遅れだと思うぜ。俺なんて日賀野に二度も絡まれてるんだし」

「これで関係ないって言われて突っ返されたら、私、ヤマト達のとこに行っちゃうかも」

「えええっ 弥生ちゃん。ほ、ほんとに?」

「嘘だよ、ココロ」

オドオドするココロに弥生は舌を出した。

ココロはもう、と呆れたような顔で微苦笑を漏らす。俺達の気持ちに満足したヨウは、改めて、俺達を見据えるとハッキリ言った。

「これからはグループじゃねぇ。チームだ。俺達はチームとしてこれから動く。もう、ヤマト達から何度もちょっかい出されるような、ちんたら適当につるんでるグループじゃねえ」

ヨウはブランコ側に落ちていた空き缶を拾いに歩き始める。

「正直言うと、俺は前々から奴等のことは潰してやりたかった。ワタルやシズ、モトと何度か、ヤマト達の仲間を潰したことはあるけど、本格的に潰してやる機会はなかなかなかった」

空き缶を拾ったヨウはグシャッと片手でそれを握り潰す。

「けど宣戦布告した以上、もう引けねぇし。分裂した事件がどうのこうの……じゃねえ。これは俺達のプライドがかかってるッ、と!」

空き缶を設置されているごみ箱へと放り投げて俺達に振り返った。


「俺達の目的はひとつ、ヤマト達を潰す。そのためのチームを此処で結成だ。いいな、テメェ等。奴等にヤラれることがあっても、ぜってぇ負けんじゃねえぞ」


ヨウの言葉を聞いて俺は目を伏せた。

今をもって俺は完全に不良の世界に両足を突っ込んだ。もう、逃げられない。



to be continued...




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