06-17
「ケイみてぇな地味タイプと話したことはあれど、テメェほど気が合う地味不良はいねぇよ」
語頭に地味と付けているけど、敢えて俺を“不良”と呼ぶヨウ。
それは俺を仲間だと意識をしてくれている証拠なんだろう。
単なる舎弟じゃなくて仲間意識を持ってくれているから、気が合う地味不良と言ってくれる。
くそっ、小っ恥ずかしい奴だな。
本人を目の前に、そんな恥ずかしい台詞をポンポンポンポンぽんと。俺が女ならイチコロだぞ、イケメン不良。俺もイケメンに生まれて小っ恥ずかしい台詞を吐いてみたいもんだぜ。
照れ隠しのためにポリポリと頬を掻きながら、俺は言葉を返す。
「ヨウにならとことん……ついて行ってもいい気分。うん。あの時、日賀野大和の舎弟にならなくて良かった。これからもなる予定ないけど……ヨウ、サンキュな。あいつに脅された時、お前は俺を庇ってくれた。嬉しかったよ、マジで兄貴って感じだった」
「大したことなんざしてねぇよ」
「それが兄貴っぽいんだって。ヨウ、これから先どうなるかなんて分かんねぇけど、俺は最後までお前について行こうと思う。舎弟としても、友達としても。俺はヨウの舎弟だ」
口に出して決意が固まる。俺はヨウについて行くって。
帆奈美さんがヨウのことをどうこう言っていたし、彼女の言ったような一面がヨウにはあるかもしれない。
だけどさ、こうやって恥ずかしい台詞を俺に向かって言うヨウがいることもまた事実。
俺はヨウを信じてついて行こうと思う。
この先、日賀野達との対立の果てに何があったとしても。俺達は約束した。いけるところまでいこう、と。
喧嘩に関しちゃ誰にも負けない不良舎兄と喧嘩さえ避けてきた地味舎弟。
異質極まりない舎兄弟だけど、俺達でいけるところまでいこうって約束した。
そりゃ舎弟を白紙にしたいけど、もう……そんなことも言ってられないだろう。日賀野達に宣戦布告したんだから。俺はそこにいたんだから。
俺はヨウの舎弟だ。
そしてヨウの足だ。精一杯、俺のできることをさせてもらうさ。
「どこまでもついていきやすぜ、アニキ」
おどけ口調で言えば、嬉しそうな笑声を上げてヨウは「ああ」返事をしてきた。
「おう、どこまでもついて来いよ」
二人分の笑声が俺の部屋に満たされる。
「お前って恥ずかしい奴だな」
ヨウに茶化されたから、
「ヨウほどじゃねえって」
反論してやった。俺も結構言うようになったよな、不良に対してさ。いや今は、ただの友達か。
二人で笑い合っていたら、
「どっちもどっちだ……」
眠たそうな声が飛んできた。シズが欠伸を噛み締めながら寝返りを打って俺達の方を向いてくる。
なんだよ、シズの奴、起きてたのかよ。
「聞いてるこっちが……恥ずかしくなる……余所でしろ……余所で」
「テメェも加担するか? クッサイ話に」
「冗談……死んでも……ごめんだ、ヨウ。舎兄弟で……勝手にしろ」
布団の中に潜るシズに俺とヨウは小さく一笑。
人から言われて改めて思う。
俺とヨウって舎兄弟なんだって。クッサイこと言い合っている俺達は本当の意味で、どーしょーもない舎兄弟の関係になりつつあるんだってな。
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