06-07
やっぱさ、ワタルさんの親友なだけあって結構うぜぇ! 話には聞いてたけどやっぱうぜぇ! ヨウ達も言っていたけどうっぜぇ!
っつーか此処でやる気か、シズ。それは駄目だ。此処は人が多過ぎる。駅中で問題を起こしたら色々と面倒事になるぞ。
いや、きっとシズは分かっていてやるつもりだ。ギラついている目がそう俺に教えてくれる。
ああくそう、俺の足手纏い! 俺のせいで話がややこしくなってるんだぞ! また日賀野のいいようにされちまう! 利二の時もそうだった。
いいように弄ばれて、俺は何も出来なかった。歯痒い、悔しくて仕方が無い。
だけど肩を人質にされると、さすがにこっちも身動きが取れない。全体重を掛けている腕が、容赦なく黒痣になっている箇所を押し潰してくる。しかも肘で。
頑張って足を踏ん張ってはいるけど、めちゃくちゃ痛いっ。
どうにか日賀野から離れなきゃいけないのは分かっているのに。
こんなところで騒動を起こしたら最悪警察沙汰に……先に手を出した方が負けだ。つまり先に手を出そうとしている俺達の負けだ。
「シズ。手ぇ出すんじゃねえ、場所を考えろ」
この声は。
顔を上げれば、そこには眉間に皺を寄せた舎兄の姿。それに響子さんもいる。
「遅いと思ったら」
日賀野達の姿にヨウは忌々しく舌打ちを鳴らし、後は任せろとばかりにシズの肩に手を置いて魚住の脇を擦り抜ける。
「ヤマト、俺の舎弟に何してやがる。ケイから離れろ」
「これはこれは、プレインボーイの舎兄様。随分、兄貴面をかましてくれる。腹立たしいよな? プレインボーイ」
「イデデデデデッ、体重ッ! 体重掛けないでくれー!」
黒痣ができている箇所を肘でグリグリ押され、俺は大絶叫を上げた。
そこは全治二、三週間って診断された場所なんだぞッ! グリグリ押し潰されたら、どんだけ痛いと思ってッ。くっそう、そんなに俺を苛めて楽しいか!
「ケイに何してやがる」
早足で俺達に歩みって来たヨウは、肩に乗っている日賀野の腕を払い落とした。おかげで肩が随分楽になる。
でも体重を掛けられていたせいでズキズキと肩が疼く。痛みを散らすように肩を擦っても、疼きは止まることは知らない。
俺の様子にヨウは片眉をつり上げて、日賀野にガンを飛ばした。
「テメェ。ケイが負傷していることを知ってんな?」
「ご挨拶だな、荒川。相変わらず虫唾の走る面だ」
「質問の答えになってねぇ」地を這うようなヨウの声に、「答えてやるギリはねぇ」日賀野が薄ら笑いを浮かべる。
「その節はよくもハジメとケイを甚振ってくれたな。相変わらず、姑息な手でちょっかい出しやがって。正面から来る勇気もねぇのか、ハイエナが」
「お前と違ってここの使い方が違うんだよ。そっちこそ随分俺達のテリトリーで暴れてくれたようだな。お前等の暴れっぷりには仲間達も迷惑している」
「ハッ、お前等のテリトリー? どっからどこまでが?」
「馬鹿に説明しても同じだ」「うぜぇ死ね」「黙れクズ」
殺気立った二つのオーラがぶつかった。その側で痛みに呻いている俺の心境。泣きたい叫びたい恐い! 二人とも恐いっつーの! ほんと仲が悪いんだな。
話には聞いてたけど、こんなに仲が悪いとは思わなかった。
ピリピリと醸し出される雰囲気に通行人達が大袈裟に俺達を避けて歩く。
迷惑そうな顔はしているけど、誰も何も言わない。通行の邪魔だって注意しない。此処にいるのは不良たちばかり。関わるのはごめんだと思っているんだろうな。
チッ、ヨウはまた一つ舌打ちをすると他の不良たちに目を向けた。
どっちも知り合い、つまり中学時代の仲間らしい。眉間によっている皺が深くなった。
「アキラに帆奈美(ほなみ)……たく、どいつもこいつも腹立つ面子だ」
焦げ茶の髪を持つ不良の名前は帆奈美さんっていうらしい。
不良にしてはワリと地味だけど、纏うオーラが大人を漂わせていた。耳に付いているピアスが一層それを引き立てる。
「酷いご挨拶」
帆奈美さんがふてぶてしくヨウに言葉を返した。
「噂は兼ね兼ね。貴方のその拳だけで何事も解決できる考え、ちっとも変わっていない。愚か」
「姑息な手を使うお前等もどうかと思うがな」
「貴方のような男と寝た自分が信じられない」
「それはまたご挨拶だな。俺もだ」
寝た? それってヨウと帆奈美さんがセックスしたってことかよ。ってことは付き合ってたってことか。それともセフレ? 肉体関係?
どっちにしたって嘘だろ……中学時代にナニしてんのあんた達。アダルティな世界に足を踏み込み過ぎだろ。イヤーンな世界に入り過ぎだろ。不良の世界は俺の想像を遥かに上回るって。
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