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06-04



一通り泊まりの話題が済むと、今度は日賀野達の話題になった。


間接的にだけど昼間日賀野達と関わった手前、あんまり奴等のことは耳に入れたくないんだけどそうも言ってられない。日賀野達の問題はヨウ達にとっても俺にとっても深刻になりつつあるから……俺がどんどんややこしい問題に足を突っ込んでいるのかもしれないけれど。


昼間の喧嘩の一件、俺達の学校の生徒会長のこと、俺やハジメのフルボッコの一件、俺が関わった限りの話題を三人は広げ始めた。日賀野達の動きを把握するために。

ヨウは残り少ないポテトを一気に口に入れて眉根を寄せる。

「俺んところの生徒会長がヤマトと関わってる可能性が出てきた」

シズもぎゅっと眉根を潜めた。「有り得なくはない話だな」

「向こうには……アキラがいる。あいつは顔が広い。関係を持っていてもおかしくはない」

「あいつ等の動きがちっとも読めねぇ。けど、俺達にちょっかいを出してきてることには違いねぇ」

「チッ、うぜぇ」

やり口が気に食わないと響子さんは銜えていたストローを齧った。

「ヨウ……黙ったままなんて……言わないよな?」

シズはヨウの意思を尋ねていた。
シズ自身も我慢がならないんだろう。ちょっかい出されっ放しの状況が。

当たり前だとヨウは苛立たしげに食い終わったハンバーガーの包装紙を丸め潰した。

「やられっ放しなんて冗談じゃねえ、あいつ等がその気ならこっちもやってやろうじゃねえか」

フンと鼻を鳴らし、異議はないなと俺達に意見を聞いてきた。

「誰も異議なんざねぇよ」

響子さんは口角をつり上げた。
こういう展開を待っていたとばかりに目尻を下げて笑う。

「いずれかは……ケリをつけるつもりだった」

スーッと目を細めるシズの瞳に静かな闘志が宿っていた。どれだけ向こうを敵視しているのか分かる目だった。

嗚呼、みんなやる気なんだな。
俺的には乗り気じゃねえけど、舎兄がやる気なら仕方ないよな。舎弟も全力で手を出そう。それが俺とヨウの約束だ。俺はシズや響子さんと同じ返事をした。

空になったポテトの容器に丸め潰した包装紙を突っ込みながらヨウは話を続ける。

「ただ真正面から突っ込んでも俺達が馬鹿を見るかもしんねぇ。負けは勿論、勝ったとしてもこっちが痛手を負う可能性は大だ。今まで偵察程度だったが、これからは本格的に向こうの様子を探ってみようと思う。これは後日、此処にいないメンバーにも伝えるつもりだ」

「ヨウ、熱でもあるか? お前らしくない……知的な考えだな」

「真正面から突っ込むしか脳がねぇのに、どうした?」

レモンを丸呑みしたような二人の顔に、ヨウは決まり悪そうに舌打ちをかました。


「……うるせぇなシズ、響子。わーってるよ、俺らしくねぇ考えっつーのは。これはケイの意見だ」


「……だろうな」

「おかしいと思ったぜ」

シズと響子さんはうんうんと頷く。

普段、ヨウがどれだけ本能で動いているか分かる態度だな。

普通に考えてまず準備なしに真正面から突っ込むっておかしすぎだろ! RPGでいえば、武器も防具もなしに敵へと突っ込むようなもんだろ。直球型なんだよな、ヨウって。

相手グループの頭は変化球型だから相性的には最悪だと思う。
少しはしたたかにいかないとな。ヨウの直球型な性格に知が入れば、きっと相手を上回ると思うんだけど。そりゃ難しいよな、ヨウの性格からして。

知があるなら、俺の舎弟の件だってややこしくならなかったしな!

これからどうするか。どうするべきか。ヨウなりに顔を顰めながら考えて意見を出す。

「弥生が情報通だからな。俺達の情報源っていってもいい。取り敢えず、あいつにヤマト達の情報を掻き集めてもらうか。けどそれじゃいつもと同じだな」

「それに……ひとりじゃ無理だろ」

今度はシズが意見した。

「弥生だけじゃ……限界がある。もっと人数を増やさないと」

「そりゃそうだが。じゃあ全員で情報を集めるか」

「だめだめ。そりゃやめた方がいいと思うぜ。全員で片っ端から情報を集めるとなると動きもそれだけ大きくなるだろ? 向こうはうち等の動きを結構察知しているみたいだから、動きは小さい方がいい。返り討ちにされかねない」

響子さんの意見に二人は同調した。俺も勿論そうだ。 

「なあケイはどう思う?」

ヨウが俺に話題を振ってきた。俺に振られても……そうだな。

日賀野達の動きを知ると同時にこっちの動きを知られないようにしないとな。
向こうには魚住昭という誰と繋がりを持っているか分からない人物もいるみたいだし。誰と繋がりを持っているか分からないって恐いよな。

――誰と繋がりを持っているか分からない?

ということは、だ。

いつ・どこで・誰が俺達を見張っているか、俺達の動きを探っているのか分からないってことだ。

もしかしたらハンバーガー店にも繋がりを持った奴がいるかもしれない。
まさかとは思うけど、でも可能性がないわけじゃない。俺達の会話を聞いているかもしれない。

ざわめつく店内に目を配った後、俺は三人にだけ聞こえるよう声を窄めて意見した。


「俺は喧嘩の経験も殆どないし、向こうのこともよく分からないから、どう戦法を組み立てたら勝てるか……なんて意見は出せないけど。日賀野達が誰と繋がっているか分からない以上、この話は別の場所でするべきだと思う。例えば誰かの家とかで。誰がこの会話を聞いてるか分からないしな」


ハンバーガー店には仕事中のリーマンや若いお姉さん達なんかがいたりするけど、俺達みたいな学生もチラホラいる。生徒会長の一件もそうだけど、日賀野達が誰と繋がっているか、ちゃんと重視しなきゃいけないと思う。

でなきゃ本当に俺達が馬鹿を見る。

用心深いかもしれないけど、相手が相手だ。こっちも慎重に行動を起こした方が利口だと思う。

シズはひとつ頷いた。
話は切り上げだと欠伸を一つ漏らし、冷めかけたチキンナゲットを口に放る。

「後日……誰かの家で集まって話し合おう。今はメンバーもいない上に、……ケイの言うとおり、用心はすべきだ」

「こういう場所こそ紛れやすいしな。ったく、アキラが顔広いのが悪いんだよな。あいつがいなけりゃ、まだ事がスムーズに進むっつーのに」

ガシガシと頭を掻いてヨウは天を仰いだ。やっぱり直球型は頭を使うことが不得意らしい。

「乗り込んだ方が手っ取り早いんじゃね?」

なんて恐ろしいことを口にしてきた。

ちょ、さっき真正面から突っ込んだら馬鹿を見るって、(俺の意見だけど)自分が言っていただろ!

「バッカじゃねえの」

響子さんはフロンズレッドの髪を弄りながら心底呆れていた。

「うーっせぇ」

反論するヨウの台詞に覇気がない。
馬鹿なこと言ったって自覚はしているみたいだ。自覚があるならもう少し、頭を使ってほしいぜ。兄貴。




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あきゅろす。
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