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06-03


ヨウ達は壁側の一番隅っこの四人席を陣取っていた。
みんな、先にハンバーガーとかポテトとかチキンナゲットとか買っていたみたいだから、一旦荷物を席に置いて俺もハンバーガーとポテトとアップルパイを買うと席に戻った。

響子さんの隣に腰掛けて、みんなが何を買ったのか何気なく目を通す。

ひとりだけ妙に量の多い人物がいるのですが。

顔を引き攣らせる俺の心情を察したのか、正面に座っているヨウが肩を竦めて教えてくれた。


「シズのモットーはよく食べて、よく寝る、だそうだ」


にしたって、ハンバーガー5個にポテトLサイズ2個にサラダ2個にチキンナゲットって。胸焼けしそうだぞ! それ以上に全部で幾ら掛かった?! それ! 毎日の食費、大丈夫かよ!

もそもそとハンバーガーを食べているシズは俺達のトレイを見て眉根を潜めた。

「皆、ダイエット中……か?」

「そういうシズ、反ダイエットか?」

思わず俺はツッコんじまった。こればっかはツッコまずにはいられねぇ! 俺達の量、普通だって思うのにダイエット中かって。おかしいだろ!

「反ダイエット。ちがいねぇな」

響子さんは笑声を漏らし、

「ケイ。お前そんな単語をよく瞬時に作れるな」

ヨウには感心された。
感心されてもあんま嬉しくないぞ。

ポテトを口に放りながら、響子さんはシズとヨウに今日は俺の家に泊まるのか? と二人に話題を振った。

不機嫌そうな顔を作るヨウは「家に帰りたくねぇ」、相変わらず眠そうな顔を作っているシズは「家には愛人がいるからな」びっくり仰天な台詞を吐いてきた。

「そうか」

響子さんは何も言わず相槌を打った。

シズの家、かなり複雑なんだな。何も話さないヨウもきっと複雑な家庭環境なんだろうな。
なるべく反応が顔に出ないようにコーラを飲んでいると、シズが本当に大丈夫なのかと俺に話を振ってくる。ああ、泊まりのことを気にしているのか。

「そういう面に関しちゃ親は何も言わないし、友達をよく泊めたりするから。一人や二人、増えたってどうってことないよ。最高で一週間、友達を泊めたこともあるし。まあ我が家は煩いと思うけど、そこは堪忍な」

「そうか……じゃあ、これからはケイの家を頼ればいいな」

「だな。これでも寝床をゲットするのに結構苦労するんだぜ。知人や先輩の家、付き合った女の家にも転がることもあったけど、大体どの家も気を遣うわ。面倒事になるわ。揉め事になるわ」

付き合っている女の家に転がったことがある、だと?

サラッと俺はモテてますアピールしたな!

それともそこに反応する俺って悪い子ですか?!
でもしょーがないじゃないですか。モテない男子なんですもの! 彼女いない歴16年ですもの! 青春真っ盛りの高校生ですもの! 僻みたくもなーる!

「ふぁ〜。やっぱり気の置けない……友達のところに泊まらせてもらうのが一番だ。ケイの家がOKで、ほんと良かった」

「ほんとだぜ。モトやワタルの家は結構厳しいからな。あんま邪魔もできねぇし。ハジメの家は論外だろ。弥生の家も泊まることになるとNGだろ。ココロは……なんか悪いしな。あいつ、じいちゃん、ばあちゃんと暮らしているし」

ココロには両親がいないらしい。
代わりにじいちゃんばあちゃんと暮らしているんだって。そっか、ココロの家も複雑なんだな。だけど良い子だよな、ココロって。


「んでもって響子の家は」

「だーれが野郎なんざ誰が泊めるか。事情には同情するが、よっぽどのことじゃない限り野郎は断固拒否! お断りだ!」


だ、そうだ。

つまり条件的にも居心地が良いのは俺の家。ベストハウスなのは我が家だってことだ。わぁお、喜ぶべきことか。これ。あんま喜ぶべきことじゃねえぞ。
だってある意味、俺の家が部屋が不良の巣窟になりかねないんだぞ!

でも俺は余計なことに、「いつでも来いよ」なんて馬鹿を言っちまった!  

「ああ、そーする」

「ありがとうな……ケイ」 

そしてこうやって面と向かって真摯に礼を言われたら、どんどん頼ってくれなんて思う調子こいた俺がいる!

イケメン不良の笑顔は勿論、普段は眠そうな顔を作っているシズでさえ、ニコッと俺に笑ってきたらなぁ。役に立ちたいとか思うよな? 調子こいちまうよな? な?

「良かったじゃねえか」

響子さんも笑声を上げていた。

こうやって会話をしていると、不良とか、地味とか、関係ないんじゃないかと思う。

どんなに外見を飾っても地味に身を潜めても、ヨウ達と俺は同級生。同い年なんだなぁ。色々抱えている問題は違うけどさ。



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あきゅろす。
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