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06-02



「収穫がなかったとしても、直接関わらなかったとしても教えろ。ヤマト達のことはテメェやワタルだけの問題じゃねえんだ。俺達にだって関わってくる。テメェは俺達と関わってるんだ。分かってんのか、あ゛ーん?」


「イデッ、いでっ! 肝に銘じておきますっ!」


ドスドスと俺の頭を小突いてくるヨウに手を止めてくれるよう懇願した。
これでも重傷者なんだ、丁重に扱ってくれー! んでもって睨まないでくれっ、不良の眼光の鋭さっ、すんげぇ恐い!


「テメェは俺達と関わっている、ねぇ。ヤマトのことさえ教えなかった馬鹿舎兄はどこの誰だか」


容赦ない響子さんの言葉にヨウはうるせぇ、と舌打ち。

「そんな過去のこと忘れた」

都合の良い言い訳を述べているヨウに、「なんて舎兄だ」響子さんは心底呆れていた。
俺もヨウにツッコミたいけど、勇者じゃねえもん! 地味な平凡男子だもん! 不良にツッコミなんて命知らずなことできねぇー!

シズ、お前、欠伸バッカしてないで俺を助けてくれよ。
それか響子さんのお小言を止めてくれ。ヨウの機嫌の温度がどんどん下がっているから! ……何も言えない俺が一番情けねぇ。


さて俺を助けてくれるように駅が見えてきた。良かった、この話に終止符が打てる。

ホッと安堵の息をついた俺は、皆に先に行ってもらうよう頼みチャリを近くの新古書店に置くことにした。
駅前の駐輪場に置くと金を取られるんだよな。新古書店前にはズラッとチャリがとめてあるし、ちょっと場所を失敬しても大丈夫だろ。


あ、夕飯代あったっけ。

病院の治療費、ヨウに出してもらうほど今の俺の財布は寒いんだよな。千円はあった筈だし、ま、どうにかなるだろ。

チャリに鍵を掛け、更に盗難防止用の鍵を掛けて、俺はその場から離れた。

向かうは駅中のハンバーガー店。
駅の大きな出入り口には上へと続く階段、それに下へと続く階段が存在する。上は電車乗り場や売店、それに俺が目指すハンバーガー店や喫茶店等がある。
下はスーパーやラーメン屋や中華店、居酒屋なんかもある。

駅の中には名店街があるんだ。
雑貨屋もあるし百円ショップなんかもあるし、文房具店や本屋、服屋なんかもある。ワリと大きな駅なんだ。

だからいつも駅付近は人の行き交いが激しい。夕方から夜にかけては特にそう。

これから電車に乗る奴、電車から降りてくる奴、仕事帰りに買い物客。近くにバス停もあるから視界には人ひとひと!
何処に目を向けても、必ずひとりは視界に飛び込んで来る。人酔いまではしないけど、毎度まいど駅に来る度に人の多さには目を剥く。

俺は階段を上った。学生やリーマンの人達と何度も擦れ違う。


「そいじゃ、また後での」


ん? 今、妙な台詞が俺の耳に飛び込んできたような。

歩きながら俺は周囲を見渡す。何処を見ても人ばっか。

きっと誰かの会話が耳に飛び込んできたんだろう。
気にすることもなく、俺は改札口横の自動扉を潜った。

地方の名産が置いてある店の前を進んだ先に、ハンバーガー店がある。

ここのハンバーガー店はちょっと変わっていて、店と駅の通路が一つになってるんだ。店の敷地が通行人の通路にもなっている。

だから此処でメシを食っていると、通行人の視線を感じる時がある。

まあ、食っている当人達は気にしてないし、通行人も景色の一部として視線を送ってるだけだろうけどさ。


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あきゅろす。
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