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駅中で、反撃会議


左肩が痛いのは不良との一戦のせい。

鉄パイプで殴られたんだぜ?
大切なことだから二度言うけど、凶器になりかねない鉄パイプで殴られたんだぜ! そりゃ痛いに決まっているだろ。青痣通り越して黒痣。なんて可哀想な俺の肩。

軽く胃が痛いのはやっぱり不良のせい。

何故か。
一度しか言わないけど、語れば非常に短くも済むんだけど俺の家に不良が泊まりに来るから。しかも二人も。

予定では舎兄のみ泊める筈だったのに、神さまは俺に試練をお与え下さったのか(なんて嫌味な試練!)、事の成り行きによって二人も泊める羽目に。

更に更に言うとな。
俺達、夕飯を食うために駅の中にあるハンバーガー店に向かっているんだけど、その行く面子がさ。俺だろ、泊まりに来るヨウとシズだろ、それに響子さん……これまた超気の強い不良が加わっちまったよ。

シズが響子さんを引き連れて公園に現れた時の、俺の、心境は「なんで貴方様までいらっしゃるのぉおお?!」大絶叫の嵐だった!

下手にヤーな顔もできない。
不良に向かってそんな顔ができるほど勇者じゃねえし、相手が響子さんなら尚更。

いや、べつに響子さんのことは苦手じゃないし、姉御肌で頼り甲斐のある先輩なんだけど、不良とは別の意味で恐いんだよ。

曲がったことが大嫌いだからさ、自分の癪に障る行動を起こした野郎は片っ端から鉄槌を下すんだ。俺もいつか鉄槌を下されそうで下されそうで……極力、相手の顔色を窺いながら行動しないと。

ちなみになんで響子さんがシズに引っ付いてきたかというと、公園手前でばったり会ったんだって。

シズが俺達に会いに行くことを知って、最初は俺達のツラを拝むだけに来たらしいんだけど、俺達が『夕飯はどうする? 外食で済ませるか?』と話をしていたら響子さんも同行したいと意見。めでたく、みーんなでハンバーガー店に行くことになったとさ。

昼はワタルさんと一緒に不良と喧嘩、夕方は不良仲間と夕飯、夜は不良が我が家へお泊り。
今日はなんてワンダフル不良デーなんでしょうか! いつも以上に不良まみれな一日に、俺、ベッコベコにヘッコみそうだぜイェーイ! テンション上げてないとやってらんねぇ!


「ケイ? お前、さっきから何、ブツクサ独り言いってるんだ?」


隣を歩いていたヨウが怪訝な顔で俺を見てきた。

どうやら田山圭太はショックのあまりマイワールドに浸るだけでなく、それらを口に出していたらしい。
幸いなことに独り言の内容までは耳に届いてなかったようだ。

「何言ってんだ?」

ヨウは俺に再度質問をぶつけてきた。
俺は誤魔化し笑いを浮かべて話を流す作戦に出た。

口が裂けても言えねぇだろう。不良まみれの一日に嘆いていました、なんて。俺、殺される!


「そういやケイ。あんたどうしたんだ、左腕。上がってねぇみてぇだけど」


チャリを押し進める俺の姿を指摘してきたのは響子さん。ハンドル握る手は右だけ、左はだらんと力なく垂れ下がっている。それに違和感を覚えたんだろう。

「あー……ちょっと」

俺が言うと同時にヨウが答える。「昼間、喧嘩してやられんだよ」

「さっき病院に連れてってたら、全治二、三週間だと。下手すりゃ一ヶ月は掛かるらしい」

「ヤマト達関連か?」

響子さん、鋭い!
そしてヨウが肯定しちゃうもんだから、俺の立場ないよ。

ワタルさんと収穫のない喧嘩は皆に報告する必要もないと話していたのに! ……まあ、舎兄を黙秘を続ける自信もなかったけどさ。あんなに怒られキレられて脅されたらなぁ。

欠伸を噛み締めながらぼんやりと歩くシズは、「大丈夫だったか?」俺の身を心配してきてくれた。ちょっと感激したよ、嘘、だいぶん感激した!

心配してくれるシズに俺は大丈夫だと左肩を触りながら笑ってみせた。


「ヨウが病院に連れてってくれたしな。二、三日はチャリに乗るのも困難だろうけど、どうにかなるよ」

「ふぁ〜……そうか……ならいい。けど、ヤマト達のことなら、後でちゃんと教えて欲しい」


教えて欲しいと言われても、収穫のない喧嘩だったんだけど。

日賀野達と直接関わったわけでもないんだけど。
それに半分以上はヨウに話しちまったしな。魚住のことだけはまだ言っていないけど、それは言わなくてもいいと思っている。ワタルさんだって望んでない。

これだけは口が裂けても言えないよな。ワタルさんの意思が無い限り。

殆どヨウに話した。
そうシズに伝える前に、これまた舎兄が先に口を開いた。



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あきゅろす。
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