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05-35




「俺はヨウみたいに喧嘩なんて強かないし、喧嘩しても押され押されのダメダメ。今日の喧嘩もどうにか根性で勝ったけど、代償がこの怪我。今のヨウの舎弟はこんなに弱い。ヨウ、どうする? 今なら舎弟、モトに変えられるけど」


「今さらだな。ダッセェだろ」


「ヨウなら、そう言うと思った。だから止めない。とことんヨウの足になるよ、俺は。喧嘩も多少はするけど期待はするなよ?」 


満足気にヨウは笑った。

「俺の足が怪我すんなって」

嫌味を飛ばしてきたけど、心配の代わりだってことくらい俺には分かった。

結局、半分以上はヨウにバレちまったけど魚住が関係していたことは最後の最後まで口にしなかった。“収穫の無い喧嘩”だったんだ。

魚住のことは報告しなくてもいいと思ったし、ワタルさんも望んでないと知っているからさ。


「にしてもアリエネェ。舎兄置いてサボりなんざ。俺はクソつまらねぇ授業受けてたっつーのに。ん?」


ネチネチ文句を言ってくるヨウの言葉が不意に途切れた。

メールなのか着信なのかは分からないけど、ヨウの携帯が振動したからだ(助かった! さっきから文句バッカだったんだよな!)。

携帯を開いたヨウはしかめっ面を作った。着信みたいで、耳に携帯を当ててたけど仕草が嫌々。

「何だよ」

開口一番に文句を吐き捨てる。
何だか聞いちゃいけない気がしたから、俺は携帯を取り出してインターネットを開いた。普段は見向きもしないニュース記事を適当に読み漁ってヨウの会話が終わるのを待つ。

「フッザケんな!」

突然の怒声にビビッて携帯を落としそうになった。ヨウは舌打ちをして、荒々しく頭を掻き毟った。


「あーあーあー、そーかよ。知るか。俺の知ったこっちゃねぇよ。じゃあな」


壊れるんじゃないかってくらい勢いよく携帯を閉じたヨウは、「イライラする」重々しい息と一緒に愚痴を零した。

なんだか分からないけど、イラつくことがあったんだな。こういうのって下手に聞いちゃダメだよな。

俺は携帯を閉じて、「時間ヤバイか?」さり気なく質問を投げ掛ける。日が暮れちまいそうだしな。病院に付き合わせたってのもあるし。

ヨウは大丈夫だとばかりに肩を竦めた。

「今日は帰らねぇしな」

この発言に俺、唖然。帰らないってお前、帰らなきゃヤバイだろ。

……ヨウは帰る気なんてサラサラないみたいだ。誰かの家に泊まらせてもらうか、一晩中、ファーストフードかどっかで時間潰すと言ってきた。こういうことはしょっちゅうで、本人曰く慣れているらしい。

もしかしてヨウのとこ、家庭環境に問題でもあるのかなぁ。人のことだから、そーゆーの聞いちゃダメと思うんだけどさ。

今、俺の中で葛藤があっている。

俺の考えに第二の俺が「やめとけ! 泣き見るぞ!」と言ってんだけど、ホラァ、一応さ。今日、世話掛けたってのもあるし、そんなこと聞いて「ふーん」で終わらすのは良心が痛むってかさ。


だけどやっぱ泣き見るのはヨウでもなく、俺、この俺、田山圭太ということで! 泣きは見たくない、見たくないけど平凡日陰男子の良心も痛む。

ウダウダ考えている頭とは対照的に、気付けば勝手に口が開いてた。

「ヨウが良けりゃ、ウチに泊まってくか?」

「ケイん家に?」


「そっ、俺ん家。俺ん家、泊まりに関しちゃ甘いんだ」 


俺の馬鹿野郎!

おまっ、自分可愛くないのかよ!
ただでさえ怪我している癖に、不良なんかを泊まらせたらゆっくり休めないじゃないか! 俺を死なせる気か!


第二の俺が罵声を浴びせてくる。


分かっているってそんなこと、けど仕方ないだろ! このままスルーできるほど、俺の器はそこまでちっちゃくねぇよ! スルーしたら悪い事したなぁ……後ろめたい気持ちになっちまうだろ! 後悔はしたくないぞ、俺!




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あきゅろす。
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