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今こそ以心伝心、言葉なんて不要なのら







七時限目が終わった頃合を見計らって、俺とワタルさんは学校に戻った。

本当はSHRが終わってから教室に戻ろうって思っていたんだけど、どうせ放課後戻っても結果は同じだ。

それに担任や生徒会からお呼び出しも喰らうに違いない。

だったら腹括って教室に戻ろう。ワタルさんと二人で出した結論だった。


教室に戻ったらSHRが始まっていた。

おかげでクラスメートから注目を浴びちまうハメになったよ、スッゲェ恥ずかしいそ居た堪れない。

担任の前橋に早く座るよう催促され俺はいそいそと自分の席に着く。

後ろから視線を感じる。

多分、ハジメや弥生、そんでもって利二の視線だと思う。みんなに返信をしていないもんな。

チラッと目を動かす。俺の見た席には透が座っていた。

ちゃんと授業を受けたかどうかは分からないけど、透が教室に戻って来てくれて良かった。自然と安堵の息が漏れる。

まだ心の準備ができていないせいか、SHR時間が延々と続けばいい。なんて思ったんだけど前橋は淡々と話を終わらせてしまった。


しかも例の事件のことで話があるのか、俺を含む不良メンバーは生徒会室に行くよう呼び出しを喰らってしまった。

予想はしてたんだけどさ、こうやって現実を目の当たりにするとヘコむよな。

どんな嫌味言われるんだろ、ヨウ達になんて言い訳しよう、色々とヘコむ。 


「起立」


学級委員・横野の号令に合わせて、俺は重い腰を上げた。鈍く左肩が痛む。

頭を下げた直後、みんなは鞄を持って教室から出て行く。俺は教卓に着いている前橋に呼ばれた。


「お前はいつから、仕事を増やす面倒な生徒になった。頼むから増やすな、俺の仕事を」


出席簿で何度も頭を叩かれながら、軽くお小言を貰った。

合間に問題があったなら職員室に来い、そう俺に言ってくる。

一応、教師らしい仕事はしてくれるんだな。

それとも俺を心配してくれてるのか? ま、どっちにしろ、あんま世話にはなりたくない。なったらそれこそ、面倒になるから!

担任から解放された俺は、疲労交じりの溜息をついて踵返す。そしてびっくり。そこには弥生がいたから。


むむっ。
眉間に縦皺を作っている弥生は、俺を睨み付けて「バカ!」開口一番に罵声を浴びせてきた。

「なんで返信しないの! 心配したんだよ! ワタルと何をしていたの!」

「え、あ、ご……ごめん。ちょっと、えーっと、ちょっとワタルさんと」

言い訳下手くそ!

しどろもどろ目を泳がせながら、頬を掻きながら、誤魔化していたらハジメが俺達に歩み寄って来る。

「何か、あった?」

俺の制服や頬を指してきた。

どう隠しても隠し切れない頬の擦り傷やカッターシャツの汚れを指摘され、俺は汗をたらたら流す。ハジメ、鋭い。


突然、背中を軽く叩かれた。

左肩に響いて思わず痛みで声を上げそうになったけど、グッと堪えて、ゆっくり振り返る。そこには利二がいた。

利二は俺の焦った顔に微笑して、「後でメール返せ」それだけ言って教室を出て行った。
呆然と地味友の背を見送っていたけど、俺は利二の気遣いを察した。心の中で後で絶対に返信しようって決めて、口パクで礼を言う。

あ、そういえば透。

俺は目だけ動かして透を探す。教室にはもういないようだ。どうしよう……スケッチブック、俺が持ったままなんだけど。明日よりも今日渡したいな。

「ケーイーッ、質問に答えてよ!」

「うわぁつ! や、弥生、近いッ、顔近い!」

至近距離に弥生の顔があるっ! 女の子の顔がある!

女の子とかにあんま接したことないから、こういう状況はスッゴク意識しちゃうんだって。

日陰男子なら気持ち、分かってくれると思うけどさ。大慌てで後ろに下がる俺に対して弥生は容赦ない。

「説明してよ!」

グイグイ寄って来る。

「逃げないで説明してよ、ケイ!」

「いやさ、そのさ」

「ハッキリ説明して! 此処で!」

うわぁああー……女の子ってしつこい。恐い。強い。俺は必死に逃げ道を探す。

「と、とにかく生徒会室に行こうぜ。呼ばれてるしさ」

「そのとおりだね。話が終わってからでも、ゆっくり聞けるし。ケイ、逃げられないと思っときなよ。ヨウも相当気にしてたみたいだから」

うわぁああー……ハジメさん、脅しはナシだぜ。マジで。

引き攣る顔を無理やり緩ませるように、愛想笑いを浮かべてみたけど、やっぱ引き攣り笑いにしかならなかった。



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