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05-19


……うわぁあ、いかにも悪そうな生徒がいる。いちゃっている。

髪チャラチャラ、装飾品ジャラジャラ、煙草スパスパしちゃってるよ。いかにも不良、てカンジ! 先輩かな?

うわっ、しかも携帯でお話している! 携帯は学校に持ってきちゃいけないんだぞ! ……まあ、俺も(不本意ながら)携帯持ってきているけど。


『ああ、倉庫裏だな。すぐ行く。ん? 確かに昼休みはマズったな。けど大丈夫だろ。あいつの大事そうにしてたコレがあるし、何かあれば呼びせばいい』


ドア越しに聞こえる会話。

中の様子を見ていた俺は「あ、」と声を上げた。
静かにしろとワタルさんに目で咎められたけど、俺は構わず不良の手に持っているスケッチブックを指差した。 

「あれ。透のスケッチブック。アイツがいつも大事そうに持っているヤツだ」

毎日まいにち、アイツ、スケッチブックに風景やデッサンを描いてるんだよな。本当はデザイン科のある高校に行きたかったらしいんだけど、親の目や将来のことを考えて行くに行けなかったと言っていた。

ほんとうに美術好きだから、あのスケッチブックに毎日絵を描いているんだ。透が描いた絵を大事にしてるのを俺は知っている。


「なんであの不良が持っているんだろ、って、ワタルさん?!」


隣にいたワタルさんが中に突撃していた。え、たった今まで静かにしろって目で訴えてきたのになんで乗り込んでいるんですか。

電話を終えた不良は突然の襲撃に目を剥いていた。

刹那、悲鳴が聞こえてくる。
俺は思いっきり顔を背けた。勇気を出してチラッと中を覗き込むんだけど、また顔を背けるハメになった……ワタルさんの攻撃、えぐい。

悲鳴が聞こえなくなると、俺はそっと視線を戻しておずおず中に進んだ。先輩不良は床に蹲っている。ワタルさんは準備室の棚を物色し始めた。

そして錐(きり)を数本取り出すと、先輩不良に見せ付けた。


「あっはーっ、センパーイ! この道具、穴開けるヤツなんですけど知ってますかぁー? 先輩が満足する代物だと思うでよんさま」

「お、お前は貫名渉……、あのチビッ、チクリやがったのか?」


「あれれれれん? チビ? なーんのことでしょーかー? 詳しく教えて下さいませんか? そーれとも僕ちゃーんが先輩のためにこれで綺麗に穴を開けてあげましょうか? 全身ピアスが飾れるように。それとも? お好みならば? 泣いて喜ばせる上に失禁させるような、快感を与えて差し上げます。きっと満足させてアゲマスヨ。付け加えて言わせてもらうと僕ちゃーん、人の泣きっ面見るの、大好きなんですよぉ。泣けば泣くほど、顔が引き攣れば引き攣るほど、僕ちゃーん興奮シマース。一度ドウデス? セ、ン、パ、イ」


目を細めて笑うワタルさんに先輩不良も俺も絶句した。

ワタルさん、生粋の鬼畜だ! ドドドドドドSだ! やっぱ不良は恐ぇええっ、っつーかワタルさん恐ぇええええ!

んでもってワタルさん味方で良かったぁあああ! 大事なことだからもう一回言わせてもらうけど、ワタルさん味方でほんっとに良かったぁあああ!


半泣きになっている俺を余所に、先輩不良は命乞いをするようにベラベラと喋り始めた――。




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