05-15
「まぁ、あいつの口から直接聞いたわけじゃねぇんだけどな。少なくとも仲は良かったんじゃないかと思う。俺にはそう見えた。小学校からの付き合いだったって聞くしな。ウザさもどっこいどっこいだった」
ヨウは軽く肩を竦めた。
ワタルさんと同じくらいに、ウザイ人がいるんだ。一度お目に掛かってみたい。あくまで遠くで見るだけがいいけどさ。
けど今の話が本当なら、ワタルさん。辛いだろうな。元親友と対立関係なんて。
俺だったら辛い。
たとえ“元”が付いていたとしても、昔、親友だったことには変わりないんだから。結構、ヨウ達の中学時代って複雑な人間模様だよな。
「今、話さなくても良かったんじゃないか」
ヨウが意見した。ハジメはどことなく可笑しそうに笑って、飲み終わったコーヒー牛乳のパックを潰し始める。
「ワタルは弱くないから大丈夫だよ。彼は強い――強いよ」
意味あり気に笑うハジメに違和感、というか“何か”を感じた。これが具体的に何かって言ったら分かんねぇだけど、何か、今のハジメは違う。
知り合って日の浅い俺がそう思うくらいだから、ヨウや弥生は尚更、違和感みたいなのを感じたと思う。
ハジメの言葉の真意を探るような眼差しを作っていた。
俺達の視線から逃げるようにハジメは「まあさ、」と明るい声を出した。
「ヤマトやアキラが絡んでるかどうかは置いといて、この1週間乗り切ろう。お授業をサボらずに、あの会長様を見返してあげましょう」
「だよねぇー。私たち何もしてないし。あ、そうだ。私、チョコレート買ってきたんだ。みんなで食べよ。新発売だって!」
話題を逸らす弥生の発言のおかげで、一気に空気が軽くなった。
チョコの箱を開けて机に散らばせる弥生に、「いっちばーん」ハジメがチョコを取っていく。
「ちょーっと」
弥生はハジメに文句言ってたけど、俺は二人のやり取りに思わず一笑。
ヨウと目がかち合ってまた一笑。
「まずは目の前の問題を片付けなきゃな、ヨウ」
「ああ。そうだな。ヤマトのことはまた今度だ。あー、なんっつーか辛気臭ぇ話は無理だ。疲れる。ダリィ。っつーかタコ沢、コーラはまだかよ」
携帯を取り出してタコ沢にメールし始めるヨウを眺めながら、俺は軽く息をついた。
だよなぁ。
やっぱ重い空気ばっかじゃ身が持たないよな。
ただでさえ須垣先輩のせいで面倒なことになっているんだ。
日賀野関連の話は暫く聞かなくてイイって感じ。一生聞きたくない。そしてアイツには二度とお会いしたくない。
でもでも、できればフルボッコのお返しとして一発顔面にパンチ……いや唾を吐きかける……いや悪態を付く程度はしたい……うん、やっぱ会わなくてイイ。
『また会おうぜ、ラッキープレインボーイ。次は良い返事を期待している』
ブルッ。
俺は身震いした。日賀野が別れ際に言った台詞を思い出しちまったよ。
ホント、あいつが今回の事件に絡んでいないことを願うよ。
懇願に近い気持ちを抱きながら、俺は冷えたエビフライを口に放り込んだ。
一週間、何事も無く事が済めばいいな。
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