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05-14



弥生は体育館裏で生徒会長に会った、と報告してきた。



どうやら生徒会長は本格的に俺達が犯人じゃないかって目星を付けているらしい。簡単に言えば、俺等は見張られているんだ。

信用無いよな、俺達。
監視したい気持ちは十二分に分かるけどさ、こっちからしたら気分の良いモンじゃない。

ヨウは盛大な舌打ちをした。


「とことん疑われているな。ざけやがって」

「しかたねぇってヨウ。取り敢えず、一週間耐えることにしよう。まだ一日目だぞ? この調子じゃ一週間持たないって」


こうやって不良に意見できるようになったんだな、俺。成長したよな。俺は俺を褒めたい。
ヨウは頬杖をして吐息をつく。


「ンなこたぁ分かってるんだよケイ。俺が気に食わねぇのは、あの野郎のやり方だ。チッ、なんっつーかやり口がどっか似ているんだよな。ヤマトと」


ヤマト。
その単語に俺は表情を強張らせた。しょーがないよな! そいつに俺、喧嘩、じゃない。一方的フルボッコされたんだし! 顔が引き攣るのは自然現象だ! と、思いたい。思わせてくれ。

ワタルさんはケラケラ笑った後、目を細めてニンマリ。


「ねちっこーいやり方はヤマトちゃーんにそっくりだよねぇ。もしかしてヤマトちゃーん、裏で糸を引いているかもねぇ。あの生徒会長と繋がりがあっちゃったりして」


背筋がゾクッとした。

思わず、持っていた箸を落としそうになる。どうにか箸を持ち直すと俺は「まさか、」とばかりに笑った。

「そ、そんな馬鹿な。だって今回の事件はこの学校内ですし。あの生徒会長が日賀野と繋がりを持つなんて」

「繋がりがあるかどうかは分からないけれど、あのヤマトなら裏で糸を引けてもおかしくないと思うよ。ケイ。向こうにはアキラがいるしね。繋がりがあっても不思議じゃないよ」 

「おい……ハジメ」

ヨウがハジメの言葉を止めた。
けどハジメはコーヒー牛乳で喉を潤しながら、「知っていた方がいいんじゃないかな」と返答。

「相手を知らなかった。そのせいでケイはヤマトにフルボッコされた。弥生だってヤマト達絡みの連中に襲われた。事が終わって相手を知る、それじゃあ遅いと思うよ。違うかい? ヨウ」

「そりゃそうだが、べつに今じゃなくてもイイじゃねえか。その話」

「僕ちゃーんもハジメちゃんの意見に一票。アキラのことは知っておいた方が良いと思いマース。遅かれ早かれ知るなら、今話しておこうよーよー」

二人に意見されたヨウは、「今じゃなきゃイケねぇのかよ」苦虫を噛み潰したような顔を作って後頭部を掻いている。


……誰? アキラって。


すっかり蚊帳の外に放り出された俺は隣に座っている弥生に視線を向ける。彼女は首を横に振った。弥生はアキラという人物を知らないらしい。

ということは、ヨウ達が中学時代につるんでいた不良仲間か(俺と弥生は高校でヨウ達と知り合ったから、ヨウ達がつるんでいた中学時代の不良仲間を知らない)。

アキラのことを知らない俺や弥生のために、顔を渋めていたヨウが簡単に説明してくれた。


「アキラっつーのは中学の時つるんでた奴のひとりで、名前は魚住 昭(うおずみ あきら)。奴はとにかく顔が広かった。性格に一癖も二癖もある……まあ、とにかく取っ付きにくい性格をしてた。グループが分かれた時、奴はヤマト側に付いたんだが、あいつは特に敵に回すと厄介なんだ。顔が広いっつーことは交流も広い。誰と繋がりを持っているか分からないんだ。グループが分裂したあの頃は、まさかここまで最悪の仲になるとは思っていなかったから危険視してなかったんだが」


「アキラと繋がりを持つ奴なんて、大体ろくな奴じゃないけどねんころり。僕ちゃん、おトイレに行ってきまーす」


ワタルさんが席を立った。これ以上話なんか聞きたくない、とでもいうような態度だ。

さっさと教室を出て行くワタルさんに違和感を覚えたのは、俺だけじゃないようだ。弥生が心配そうに「ワタル、その人と何かあるの?」とヨウに尋ねる。

「だから今言うのはヤだったんだ」

ヨウは顔を顰めて、頭の後ろで腕を組んだ。そして軽く溜息。


「あいつとアキラは親友だったんだ」 


親友だった。

それって危険視しているアキラって奴とワタルさんが? じゃあワタルさん、教室を出て行ったのは単に話を聞きたくないと思ったわけじゃなくて……。




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