05-13 「ざけやがって! 俺が教室出たらあいつがいやがって胸糞悪い笑いしながらへらへらへらへら『もうサボりかい?』だぁあ? ナメてやがるのかあ゛ーんの生徒会長! っつーか、タコ沢遅ぇ! なにチンタラしてやがるっ、コーラはまだかよ! もう三分経ってっぞ! 直ぐ買ってるってメール返してきたじゃねえか!」 まーだ三分しか経っていないだろ。 常に誰かを追い掛け回しているタコ沢だって、一階の中庭にある自販機まで三分は掛かると思う。 三分で戻ってきたらあいつのことを、俺は疾風のように現れて疾風のように去っていく『月光仮面のお兄さん』もしくは『月光仮面の不良さん』と呼ぶぞ。 パシられているタコ沢に同情しながら、俺は人様の席で弁当を広げていた(席の主には悪い気がするけど俺達、適当に机をくっ付けて昼食を取っているんだ)。 頭に血がのぼって、正しい日本語に成り立っていないヨウの話はこうだ。 いつものように授業が終わったヨウは、一足早く体育館裏に向かっていた。 だけどヨウが来ることを見計らっていたかのように廊下で須垣先輩と出くわし、「体育館裏でおサボリかい?」と言われたそうな。 負けん気の強いヨウは昼休み終わる五分前には教室に戻ると食いついたそうだけど、普通に教室で食べればいいじゃないかと須垣先輩に笑われたとか。 「普段もサボるために体育館裏でたまるんだろ? だったら一週間くらいは教室で食べた方がお利口さんだと思うけどなぁ」 なーんて、余計なことを言ってくれたらしい。そこで喧嘩を吹っかけなかったヨウは偉いと思う。 しかし、ヨウの機嫌は低空飛行中。 勘違いかもしれないけど、ヨウの不機嫌のせいで肌がピリピリする。 実は不機嫌という名の電磁波を醸し出しているだろう、ヨウ! 先生や生徒会に喧嘩売れるくらいだ、お前不良だから何でも出来そうな気がしてきた! ……にしても恐いなぁ、不機嫌なヨウ。 不良は置いておいて、ある程度、ヨウ達と親しくなったとしても、やっぱこういう時はビビッちまうよ。ワタルさんやハジメは付き合い長いから、まったく気にしてないっぽいけど。 冷凍コロッケを口に放り込みながら俺はヨウから目を放し、ハジメの顔を盗み見た。 ハジメはヨウの機嫌の悪さに呆れ笑っているけど、俺の脳裏にはさっきのシンドそうな顔が過ぎってしかたがない。 『不良として落ちこぼれる方がシンドイ』、あれはどういう意味だったんだ。 どういう気持ちでハジメは俺に吐露してきたんだ。 何か続きを言おうとしていたことは分かるんだけど、途中でワタルさんが来たから聞きそびれたんだよな。 でもハジメの様子を見ていると、さっきの話はもう良さそうだし、この話はそっとしておこう。 もしかしたらヨウ達に聞かれたくない話かもしれないしな。 ハジメから目を放して俺は白飯を口に運んだ。 “不良の落ちこぼれ”か、妙に胸に引っ掛かるな。この言葉。 べつに俺、不良じゃないけど、妙に引っ掛かる。どうしてだろ、ヨウの舎弟だからかな。 「もぉー、場所が変わったなら早くメールしてよね」 ビニール袋を手に提げている弥生が文句を垂れながら教室に入って来た。 適当に空いている席の椅子を掴んで俺の隣に座る弥生は、「いつもの場所まで行っちゃったじゃん」脹れていた。 わざわざ体育館裏まで行った弥生に、お疲れと声を掛けた。 そしたらケイが悪んだよ、とかワケが分からないことを言われた。背中叩かれた。八つ当たりだろ、絶対。当たられた俺、スッゲー可哀想っていうか惨め。いーよいーよ、俺みたいな男に当たりやすいもんな。 [*前へ][次へ#] [戻る] |