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05-12



「おっつー。ケイ!」



数A終了のチャイムが鳴ったと同時に弥生がやって来た。

授業中ずっと爆睡してエネルギーを温存していたせいか、かなりハイテンションだ。いいよな、寝れる度胸があってさ。

こっちは授業真面目に受けられなくてローテンションだって。

言っても弥生も不良だしな! テンションはある程度の合わせるぜ! 俺、自慢じゃないけど空気を読むのは得意(と思っている)。

「ケーイ、お昼だよ。おーひーる」

ニコニコしながら「お昼一緒食べよう」と言ってきた弥生は、俺に弁当かどうか聞いてきた。

「いつも弁当だよ」

弥生の問いに答えたら、「いいなー」俺の机の上に座った。弥生さん、一応、俺の机なんだけど。いや座ってもらってもイイケドさ。

「お昼代浮くよね。毎日お昼買ってたら馬鹿にならないもん。それにケイのお弁当って可愛らしいよね。タコさんウインナー毎日入ってるんでしょ? ケイって趣味可愛いよね」

「そうなんだ。昼代がバカにならないから、母さんが弁当を……って、ちょっと待ったァ! 弁当の中身は俺の趣味じゃないって! 母さんが勝手に」

「え、お母さんに頼んでるんじゃないの? ワタルが言ってたよ」

頼んでいるか!
俺はそんなメルヘンチック男子じゃないっつーの!

寧ろ、ちょっとばかし恥ずかしいんだぜ? 高校になってまでタコさんウインナーが入ってること……。

とにかく俺の趣味じゃない。

くっそう、ワタルさん、適当なこと言いやがって。

弥生と駄弁っていたらハジメが大きな欠伸を零しながらやって来た。

「ケイ、弥生、昼飯は?」

「私は売店で買って来るつもり。ケイはお弁当があるって。ハジメは?」

もう買っているとハジメはコンビニのビニール袋を俺達に見せ付けた。

ハジメはいつも昼休み前に学校を抜け出して、コンビニで昼飯を買うんだ。

けど今日から一週間、真面目に学校ライフを送らないといけないから登校中に買って来たそうな。

一週間は学校を抜け出すこともデキナイしなぁ。面倒だけど、そうするしかないよな。

「ホント厄介なことに巻き込まれたよ。まさか犯人扱いされるとはね。まあ、生徒会長サマの言い分も分からなくは無いけどさ」 

ダルそうにハジメが溜息をついた。心外だとばかりに弥生は脹れ面を作る。

「ヒッドイ話だって。十分な証拠も揃ってないくせにッ、あああああっ、ムカツクー! 思い出しただけでムカムカする!」

「弥生、ヒッドイ顔になっているよ」

「ハジメ酷い!」

弥生の脹れた顔が更に脹れる。

おどけてみせるハジメは笑声を漏らして、早めに売店で飯を買うことを勧めていた。早くしないと人気商品は無くなるから、そう言葉を付け足して。

脹れたまま弥生は俺に「酷いよね」話を振った。

いっやぁー、ここで俺に振られても困るんだけどなぁ。苦笑いを返す他なかった。

「なんかケイもひどーい」

脹れていた弥生はコロッと表情を変えて笑いを零すと、売店に言って来ると俺達に告げて教室を飛び出した。

だけどすぐに教室に戻って来た。

どうしたのかと思えば、弥生は財布を忘れて行ったみたいだ。
ヤラかしたと俺達にペロッと舌を出して、自分の通学鞄から財布を取り出すと教室を出て行った。

その際、俺達にヒトコト。


「先に行ってていいから。何かあったらメールしてね」


残された俺とハジメは視線を合わせた。

さあて、と、弥生がああ言ってきたからには体育館裏にボチボチ移動しないとな。今日も天気がいいから、あそこで弁当を食べたら美味いんだろうな。

弁当と水筒を持って俺はハジメと一緒に教室を出た。

最初の頃は弁当と水筒を持ってウロウロすることが恥ずかしかったんだけど、慣れたらそうでもなくなった。慣れって恐いよなぁ。


「ケイはどう思う? 今回の事件のこと。率直な意見が聞きたいな」 


ハジメが真面目な話を吹っ掛けてきた。俺は戸惑って間を置いてしまう。

率直と言われたからには、正直に答えるのが一番だよな。

「まあ……疑われても仕方がないとは思う。俺達、よくサボってるからさ。生徒会側の気持ち、分からないでもないけど」

こんなこと言ったら軽蔑されると思ったけど、意外にもハジメは俺と同じ意見だって告げてきた。

「僕もケイと同意見なんだ。須垣の疑う気持ちも分かる。こんなことヨウ達に言ったら怒られそうだけど、僕達のような生徒ってのは教師にとっても生徒会にとっても目の上のたんこぶなんだよ。

髪は染める、ピアスの穴はあける、服装違反上等な上に授業はよくサボる。教師にとって頭痛のしてくるような生徒達だろうね。学校の秩序を守っていると言ったら大袈裟かもしれないけど、秩序を守っている生徒会にだって僕等のような生徒は煙たがりたいものさ。

でも注意したところで僕等の態度が改まるわけじゃない。ますます悩みの種になってくる、けど、どうしようもない。

そんな時に今回の事件が起きた。そりゃ疑いたくもなるだろうね」

ハジメは吐息をついて、俺の方を見た。 


「学校側にとって僕等は落ちこぼれ。問題が起きたら真っ先に疑われても仕方ない。こちらの言い分を聞いてもらっても、日頃の行いを指摘されて信じてもらえない。容疑が晴れても疑いの眼は向けられままってこともザラ。
学校にはそういう教師が多いから、ヨウは極端に教師を嫌っている。決め付けられることが嫌いなんだ、ヨウって」


そういえばヨウが担任と接していた時の、あの態度。

ただ横着ぶっているってわけじゃなかったような……俺も教師が好きってわけじゃないけど、ヨウのように毛嫌いするほどではないな。

須垣先輩の時だって、俺達を犯人だって決め付けたわけじゃないけど、疑いを掛けられた時、かなりキレていたもんな。恐かったなぁ、泣きそうになったなぁ、逃げたくなったなぁ、あの時のヨウ……マジで恐かったぁ。

「須垣先輩に落ちこぼれって言われた時、ヨウ、マジギレしていたよな」

「ヨウは学校では落ちこぼれかもしれないけど、不良としてはピカイチな奴だよなぁ。校則違反上等で、でも仲間大切にして。僕とは大違いだ」

……ハジメ、どうしたんだよ急に。俺はハジメを食い入るように見つめた。


「僕は学校でも落ちこぼれだけど、不良としても落ちこぼれなんだよなぁ」

「不良としても落ちこぼれ?」


「喧嘩からっきしでね。中学の時からヨウ達の足を引っ張ってばっかりさ。ケイも知ってるだろ、僕が袋叩きにされたの……っていうか、ケイは僕を助けてくれたひとりだったね」


「あの時はありがとう」面と向かって礼を言われたら、なんてリアクションしていいか分からない。

一ヶ月も前のことだしな。取り敢えず「どういたしまして」言葉を返す。

瞬間、ハジメは何処となく辛そうな顔を作りながらも、苦笑を貼り付かせた。

「学校で落ちこぼれるより、不良として落ちこぼれる方がシンドイね」

「ハジメ?」

「ケイ、僕はさ……」


「もすもーすぅ、おふたりさぁあん! ア、ア、アテンションプリーズ!」


真面目な話をしている時に、後ろから腕を回された。

廊下に響き渡るうざったい口調を耳にした瞬間、誰が俺達を呼んだのか、誰が俺達の首に腕を回してきたのか、振り返らなくても分かる。

ハジメも同じだと思う。
足を止めて一緒に後ろを振り返る。

ニタニタと笑っているワタルさんが立っていた。

やっぱりワタルさんだよなぁ。あんなウザ口調を使う人、この人以外いないって。

「ヨウちゃーんの教室に行こうピョーン。今日はそこで食べることに決定だってよーん」

「え、なんで? 体育館裏は?」

俺の疑問にワタルさんは肩を竦めた。



「僕ちゃーんも事情は知らない。ただヨウちゃーんからメールでそう言われた」



何かあったのかなぁ?

俺達は顔を見合わせた。

もしかしてまたなんか問題でもあったのか。懸念したんだけど、これについての答えはすぐ分かることになる。



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あきゅろす。
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