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真面目に授業を受ける、それが学生の本業だ!



◇ ◇ ◇



やっぱダルくても授業はサボっちゃ駄目だよな。

今の時間、数Aなんだけど授業にやっとついていけているってカンジ。

ところどころ先生の言っている言葉に「何それ?」と思うし。

黒板と教科書とノートを睨めっこしながら俺はサボらなきゃ良かったと大後悔だ。

利二に教えてもらっていたから、辛うじて授業内容についていけるけど正直言ってきついよ。

ノートも全然取っていないから、後で利二に借りないとな。

ノート点検で減点食らうのはかなり痛いぜ。


数学が苦手な俺にとってノートや出席や提出物で点数を稼がないと、単位が仮に貰えたとしても評定が悲惨なことになる!

でも出席で点数を引かれると思うから、テストの時に平均以上取らないと結局悲惨な評定が。

じゃあ、ヨウ達の誘いを断って真面目に授業に出られるかと言ったら、それができないんだな。できたらとっくに俺は不良と縁を切っている。

あははっ、困っちまったぜ。田山圭太、(多分)留年はしないだろうけど、一年の評定が悲惨なことになっちまうぜ。


評定の悲惨な理由が「授業をサボりまくってこんな悲惨なモノになっちゃいました。てへ」なんて言ってみろ、確実に親に殺されるから!

その前に授業サボッていることを黙ってるから、バレたら確実に殺されるんだけどさ。

三者面談とかで言われそうだな、出席率のこと。前橋だったら親にチクりかねない。


(あ〜〜〜! 嫌だけど家に帰ったら勉強しよう。今度あるテストで全教科平均以上取らないと色々ヤバイッ!)


平均以上取っていたら、出席率を言われても「もうサボらないでね」注意くらいで済みそうな気がする。うん、気がするだけだけど。

大きく溜息をついてノートを取っていたら、引き出しに突っ込んでいる携帯のランプが点滅していることに気付いた。メールが来ているみたいだ。

授業中はサイレントモードにしているんだ。

じゃないとメールとか来た時、バイブ音鳴ったら最悪じゃん? 俺と前橋と学年主任の三者面談になっちゃうじゃん? そんな地獄は味わいたくねぇもんな。

だから嗚呼、メール、スルーしたいんけど。

俺は先生にバレないようこっそり携帯の画面を開いた。 


『From:荒川庸一 件名:無名
 暇…。英語、意味不明。何語だよ。これ』


勿論、英語だろ!

俺は思わず声に出してツッコミたくなった。どうにか堪えて返信を返す。

よし、授業に集ちゅ……もう返事が返ってきたし?!


『From:荒川庸一 件名:無題
 俺は日本人だ。英語イラネェ。てか、返信遅くね? 前の時間もなんか遅かったぜ? 寝てたのか?』


バッカヤロッ、お前と違って真面目に授業を受けているんだよ!

しかも俺に日本人主張するなよ、俺も日本人だっつーの。

お前と同じように英語なんかチンプンカンプン、英語イラネェと思っている日本男児だよ。

『授業中だから遅いんだって。先生に見つかったらヤバイだろ』

返信をしたら、また直ぐに返事が来た。


『From:荒川庸一 件名:無題
 バーカ。見つかったら睨め。舐められンぞ?』


お前が教師を舐めているよ! 真面目に授業受けてこーい!

携帯を握り締めてツッコミたい気持ちを抑えていたら、先生から愛想なく名前を呼ばれた。めちゃめちゃビビッて思わず身を強張らす。

ヤバイ、見つかったか?
冷汗を流しながら顔を上げたら、チョークで黒板を叩きながら「ここの解答は」質問をしてきた。

良かった、携帯弄くってるところを見つかったわけじゃないんだ。

俺は素早く引き出しに携帯を突っ込んで立ち上がる。

黒板に書いてあることは教科書の問題だよな。俺は教科書に目を落とした。


えーっと何々。A、A、B、B、B、Cの6文字を横一列に並べる。この時、二つのAが隣り合わな……合わない……はぁ?


これはこれでピンチッ、ワッカンネ! 何言っているんだよ、この教科書。俺に分かる言葉で説明しろって。

答えられなかったら恥ずかしい思いするし、適当に答えて間違っても恥ずかしい思いするし、正解をビシッと答えてさっさと座りたいんだけど答えが分からないし。

だから当てられたくないんだよチクショウ。

焦りに焦って教科書と睨めっこしていたら、先生が教卓の上を大袈裟に叩いてきた。心臓が飛び上がった俺を余所に先生が怒声を上げる。


「苑田! 起きんか苑田! ……土倉! お前もだ!」


答えられない俺に怒ったわけじゃなくて、先生は爆睡している弥生とハジメに怒ったみたいだ。

俺は後ろを振り返る。

俺のいる列の最後尾で爆睡しているのはハジメ。
その隣で同じく顔を伏せて寝ているのは弥生。二人とも授業受ける気ゼロみたいだ。

「まったく」

先生は愚痴を漏らすと、俺に座るよう言って二人を起こしに向かう。

助かった……俺は腰を落として大きく溜息をついた。

まだ須垣先輩が条件を出してきて一日目なんだけどさ。

不良さま達が真面目に授業に出席してらっしゃるせいで(真面目に出席してるって言っていいのか?)、真面目に授業……受けられないんだけど。

前の時間にヨウは勿論、ワタルさんからもメールがあったし。不運だ、俺。

二度深く溜息をついて俺は引き出しに突っ込んだ携帯を確認する。

返信していないのにまた一通、ヨウからメールがきていた。 


『From:荒川庸一 件名:無題
 返信がねぇ。まさかケイ。先公に見つかったか? やっちまったか(笑)』


誰のせいで俺がこんな思いをっ……。

頼むから、静かに平和に平穏に授業を受けさせてくれよッ。

頼むから、真面目に授業を受けなくてもいいから、真面目に授業を受けている俺の邪魔をするなよッ。

(まだ余裕だけど)出席状況が危ない今、必死で授業内容を理解しないと評定が。

最悪、進級が……なんで俺、こんなに悩まされるんだろう。

不良さまと頭痛のする毎日を過ごしている上に、勉強のことで悩む日が来るなんて。

……泣くな、圭太。こんなのいつものことだろ。ファイトだ、圭太。


俺は心の中で涙を呑んだ。



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