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05-08




「みんな座ってもらえるかな。これが終わったら廊下で好きに暴れてもらっていいから」



ニコッと笑ってくる須垣先輩。

あくまでも爽やかに笑ってくる須垣先輩になんかまたひとつ、ヤーなカンジを覚えた。

須垣先輩の指示で俺達は着席する(良かった、タコ沢の手から逃げられたヨ!)。

改めて生徒会室を見渡せば、俺達に目の前には須垣先輩や生徒会役委員数名。後は俺達以外誰もいない。


なんか居心地悪いな。
生徒会役委員が俺達を怯えるように見てくるから、これまた居心地が悪い。まあ俺じゃなくて不良のヨウ達に怯えてるんだろうケドさ。


「さてと」


ニッコリ微笑んでくる須垣先輩が話を切り出してきた。  


「全員揃ったところだし話を始めようか。あ、申し遅れたね。僕は須垣 誠吾(すがき せいご)。一応、生徒会長をしている」


ヨウに喧嘩を売るような発言をしてきた先輩は生徒会長だったのか。まあ、雰囲気はそれっぽいから言われても驚きはしない。寧ろ納得。

軽い自己紹介をしてきた須垣先輩に、俺の隣に座っているヨウが不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「前置きはいいんだよ。さっさと始めやがれ。俺達に何の用だ。クッダラネェことで呼び出したんじゃねえだろうな」

「せっかちな後輩だな。まあ、いいだろう。実はね、困ったことが起きたんだよ」 

困ったこと?

俺達はキョトンと須垣先輩を見つめた。


事の始まりは今日の昼休み始まり五分後のこと。 

須垣先輩を含む生徒会役委員達は近々行われる総会について話し合いをするため、いつもどおり生徒会室にやって来た。

生徒会室は何事もなく静かに先輩達を迎えてくれた、ようにみえた。


だけど換気のために窓を開けようとした時、先輩達の目にヒビが入った窓ガラスが飛び込んできた。ヒビの入った窓ガラスは一枚だけ。

でも明らかに誰かが故意的にヒビを入れたような痕跡がある。

しかも生徒会室は一階にある。

今朝この教室を使った時はヒビなんて入ってなかったことを知っている先輩達は、この学校の生徒の誰かがやったのだと推測した。


「犯行は一時限目から四時限目の間。ヒビ入っていた窓ガラスのすぐ側に溝があるんだけど、そこの溝に煙草の吸殻が捨てられていたんだ。まだ真新しい吸殻がね。多分、犯行の時に吸って溝に捨てたんだろうね。困ったものだよ」


浅い溜息をつく須垣先輩の説明に、俺は頭の中で整理する。

生徒会室の窓ガラスにヒビが入っていた。

犯行は今日の一時限目から四時限目の間。
窓ガラスのすぐ側には溝があって、そこに吸殻が捨てられてあった。吸殻はまだ真新しい。そして俺達は呼び出された。

つまり俺達、う、疑われてるってことか。

確かに俺達、午前中の授業サボったけど、午前中はずっと体育館裏でたむろってただけぞ! 悪いことしてたっちゃしていたけど、生徒会室付近には一切近寄ってねぇーよ!

須垣先輩の話にワタルさんが困ったように、でもいつものようにニヤニヤとニヤついていた。

「僕ちゃーんたち、容疑者に選ばれちゃったってことかぁー。ビックリマンボー」

「ハァア? フッザけるな! 俺達じゃねえよ!」

ヨウが思い切り机を蹴って須垣先輩達にガンを飛ばす。

生徒会役委員の皆様たちは、すっかり小さくなっている。

殆どの方が俺達の先輩なのに……ゴメンナサイ、気持ちは分かります。不良恐いですよね。俺も恐いですもん。

教師も涙ちょちょぎれになるヨウの怒声にも動じない須垣先輩は、ニッコリと微笑んで机上でに肘をついて手を組んだ。

「決め付けるわけじゃないけれど、君達が一番疑わしい。午前中の授業をサボってたそうじゃないか」

「サボッてはいたけど、私達、生徒会室に近寄っても無いし場所も今の今まで知らなかったし」

反論する弥生に「やってないって証拠は無いよ」バッサリ須垣先輩が言い捨てる。その言葉に俺は喰らい付いた。

「それじゃあ逆にお尋ねしますけど、俺達がしたって決定的な証拠はあるんですか」

「ケイの言うとおりだよ。僕達がしたって証拠は?」

「っつーか、俺はこいつ等と無関係だゴラァアア! なんで俺まで呼び出される!」

吼えるタコ沢を無視して、俺とハジメは須垣先輩に証拠はあるのかと尋ねた。

「君達はよく授業をサボるそうじゃないか」

生徒会長は笑顔を崩さず答えた。


「君達の身形とイイ、授業をサボることとイイ、度々耳にするヨロシクナイ噂とイイ、疑われても仕方がない要素は沢山ある。実際、僕等生徒会以外にも事情を知っている先生方は君達がしたんじゃないかって疑っている。まあ日頃の行いが災いしたってことだよ。価値のない落ちこぼれくんたち」 


須垣先輩の仰ることはご尤もだと思う。

堂々髪を染めて服装違反はする。授業はよくサボる。学校を抜け出す。度々ヨロシクナイ噂を耳にしては頭痛を起こさせる。

日頃から教師の反感を買うような行いをしていたら、そりゃ疑われても仕方がないと思う。

だけど上辺だけを見て“価値のない落ちこぼれ”って言い方はないんじゃないかな。 

ホラ、“落ちこぼれ”って聞いて隣に座っているヨウとか立ち上が……ちょちょちょ! ヨウッ、なんで立ち上がっているんですか。今にも掴みかかりに行きそうだし!



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あきゅろす。
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