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04-17



「あの時、残るべきだったんじゃないか? 逃げるべきではなかったんじゃないか? 荒川に助けを求めに行ったはいいものの、ずっと悔いていた。荒川と一緒に戻ってきたお前のヤラれように、後悔は増すばかりだった。自己嫌悪するほどに。そしてお前に腹を立てた。一種の八つ当たりだな、あの時、お前に喧嘩を吹っ掛けたのは」


「利二……」


「それでまた自己嫌悪だ。自分は何やっているんだ……って、な」


微苦笑する利二が飲み終わった紙パックのカフェオレを潰し始める。俺は黙って話に耳を傾けていた。


「自己嫌悪ばかりしていた時、帰り際、お前が追い駆けて来た。お前は間違いじゃなかったと言ってくれた。そのヒトコトが悔いていた気持ちを断ち切らせてくれた」


潰していた手を止めて、利二が俺に視線を送る。



「カッコばかりつけるお前が、また馬鹿なことをしようとしたら勝手に止めに入る。それくらいのカッコをつけても良いだろ?」



遠くから聞こえてくる体育をしている生徒達の声、教師の太い声。吹き抜ける風の気持ち良さ。そして利二の言葉のくすぐったさ。

「カッコつけ」

俺は思わず利二に悪態をついて照れ隠し。

「また……あんな目に遭っちまうかもしれねぇんだぞ。どっちがカッコつけだよ」

「お前よりはマシだと思っているがな。別に昨日のことをとやかく言うつもりもないしな」

「俺、これからもヨウの舎弟なんだぞ。マジで不良になっちまうかもしれないぜ?」

「言っただろ。お前が不良になっても変わらず接してやるって」

軽く笑声を漏らす利二に、なんか悔しかったり照れたり嬉しかったり。

やっぱお前、俺と気の合う地味友だよ。

どんなことがあってもお前となら友達でいられるような気がする。なーんか照れくさいし、妙に悔しいから、絶対口に出して言ってやらないけど、俺、感謝しているんだ。全力で止めてくれたお前にスッゲェ感謝している。


俺は利二の顔を盗み見る。

利二の右頬には絆創膏が貼ってある。傷に罪悪感を抱かないわけじゃないけど、それ以上に俺は利二に感謝したくなった。

だってその傷は、俺を止めてくれた時に作ったものだから。

ごめんとか申し訳ないって思っても、利二はそんな俺の気持ち望んでないだろうしさ。


利二。
もしもまた迷って馬鹿なことしようとしたら、止めてくれな。俺も同じように止めてやるから。

「田山、今週の土曜日。予定入っているか?」

「ンー? なんもねぇよ。泊まりに来るか? ウチに」

「そのつもりで聞いたんだが」

「じゃー、もうひとつ。三時間目の体育はサボるだろ。四時間目の英語はどうする? 俺、予習も宿題してきてねぇんだ。お前は」

「してきている筈ないだろ。帰って直ぐ寝たんだからな。田山はどうするんだ」

「ダルいしな。利二は?」

「そうだな、ダルいからな」

その時間、俺達は初めて自分からサボった。これからの時間もサボる予定。理由はダルいってだけ。ただそんだけの大したこともない理由。


終わりのチャイムが聞こえてきた。

後数分も経たないうちにきっと、ヨウが来るんだろうな。



to be continued...



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あきゅろす。
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