04-11
「考えがいつも正反対だったんだ。俺とヤマトは。俺が白って言えば、あいつが黒。あいつが下って言えば、俺は上って答えるみてぇに、いっつも考えが正反対だった。ヤマトと口論する度に『クソ、何だよコイツ、舐めているのか。ウゼェっつーんだ。いっぺん地獄に叩き落してやろうか?』って思っていた」
日賀野も随分ヨウを嫌っていたけど、ヨウも大層日賀野を嫌っているんだな。
盛大な舌打ちをするヨウに思わず目を背けてしまう。不良のご立腹姿ってやっぱり恐いっつーんだ。チクショウ。
「それでもグループは秩序を保っていた。当然だよな、俺とヤマトの仲に問題があるだけでグループ全体には関係ないことだから。ンだけど、ある日、二つのグループに分かれちまう出来事が起きた」
「出来事?」
「当時俺達は、地元で一番有名な不良グループを伸した。高校の不良グループを俺達中学の不良グループが解散にまで追い詰めたんだ。高校の不良グループに仲間の何人かがヤラれてさ、敵討ちをしたんだ。けどなその追い詰めたやり方があまりにも狡かった。喧嘩っつーより騙まし討ちだな。ありゃ」
もっと別のやり方があったんじゃないか、真正面から勝負を挑んでも伸せないことはなかった。
追い詰めた狡いやり方にヨウは反感の念を抱いた。ヨウを中心に、ワタルさんやシズ達も反感を抱いた。
だけど日賀野を含む複数の不良は勝ったモン勝ちだと、自分達もこの手に乗ったクセに何を偽善ぶっているんだとヨウ達の意見に反感を抱いた。
つまり、ヨウ達は卑怯な手を使ってまで勝ちたくなかった。真っ向勝負を挑みたかった。これではヤラれた仲間達だって自分達だって納得しない、と主張。
一方、日賀野達の言い分はこうだ。目的は敵討ちじゃないか。
もともと高校の不良グループと真っ向勝負するなんて分が悪いに決まっている。これ以上仲間を怪我させるにはいかなかったではないか、と主張。
どっちが悪いってわけじゃない。
どっちも道理に合った意見を述べているからお互いに対立、何度も諍いが起きて亀裂が生じ、ついには二つのグループに分かれたんだ。
二つのグループに分かれた両者はその後、顔を合わす度に火花を散らした。中学卒業して別々の高校に進学しても、それは変わらず今現在に至る。
ヨウはそう俺に話してくれた。
かなり面倒なことになっているんだな。ヨウ達と日賀野達の仲って。
そういう経緯なら尚更、日賀野が俺を狙ってきた理由も分かる気がする。舎弟の俺を狙ってくる理由がさ。
黙って聞いていた俺は頬を掻きながら、自分なりに話を整理していたけど、小さく口を開いて俺は聞いた。
「じゃあ、先日のハジメって奴がヤラれていた喧嘩騒動は日賀野達のグループが関わっているのか?」
「ああ……あいつはあんま喧嘩デキねぇからな。狙いやすかったんだろ」
「なんで、狙ったんだ?」
「俺達グループを潰してぇんだろうな。正直、向こうの狙いなんざ俺もよく読めねぇよ」
苦虫を噛み潰したような顔を作るヨウの気持ちは分からないけど、多分悔しいんだと思う。
俺は前に視線を向けた。
伸びている俺達の影が視界に入ってしょうがない。暫く俺達の間に沈黙が流れたけど、不意をつくように俺は口を開いた。
「なあヨウ、モトを舎弟にした方が良いんじゃないか? あいつなら俺より、喧嘩できるだろ」
率直な俺の意見にヨウは返事を返してこない。俺は前を見つめながら話を続けた。
「喧嘩できるとできねぇじゃ大きい違いだろ? 仮にモトが舎弟だったら、お前の負担も減ると思うぜ。俺じゃお荷物だろ」
「別に素直に言っていいんだぜ。今日の騒動は俺のせいだって。俺が舎弟にしたからこんな目に遭ったって」
「へ? なんで」
「あ? テメェこそなんでだよ」
俺とヨウは間の抜けた声を上げあった。ヨウは俺につられて声を上げたんだと思うけど。
だってまさかヨウがそんなこと言うと思わなかったしさ。
驚く俺にヨウが決まり悪そうに頭を掻いて目を逸らした。
「そういう意味で言ったんじゃねえのか?」
「ヨウさ、俺の話聞いていたか? 俺じゃ弱いしお荷物になるからモトにしたら、そう言ってるんだけど」
「ウッセェな。そういう意味で捉えちまうだろ、フツー」
捉えないだろ、フツー……ああ、そうか。
俺は数秒間を置いてヨウの気持ちを察した。響子さんの言うとおり、ヨウは責任を感じているんだ。自分のせいでこうなったって。
そういえば自分のこと『ダサイ』って言っていたあの台詞、アレももしかして責任を感じて言っていたのかもしれない。
けど俺だってお前に背を向けようとしたんだぜ。日賀野の脅しに屈しようとしたんだぜ。
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