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04-10




目を細めながら俺はボンヤリと思考を回す。答えは出てこない。

肩を竦めて地面に目を落とす。歩く度に動く俺の影は長く伸びている。影を踏み付けるように速足で追うけど、影も動くから踏み付けられない。

そうやって追って影を踏み付けるように速足で歩いていたら、長い影がもうひとつ伸びてきた。

見る限り、影は走ってきている。

俺は歩調を落として後ろを振り向く。そして足を止めた。

「やっと追いついた」

俺の前で足を止めて、膝に手を置きながらあがった息を整えている追い駆けてきた影。


「ケイ、おまえ……歩くの……速ぇって……さすが、チャリ漕ぐの……速いだけあるっつーか。そのカラダでよく、速く歩けるっつーか」


見事に染まっている金髪に赤メッシュ。

大きく息を吐いて軽く折った体を起こすヨウに、俺は目を削いでしまう。

まさか舎兄が俺の後を追って来るなんて、微塵も予想もしないじゃないか。


「なんで……ワタルさん達と一緒に行かなかったのか?」

「俺はっ、パスしてきた。っはああぁぁー……シンドかった」


素で驚いている俺にヨウは「途中までいいか?」と聞いてきた。

追って来てくれたのにダメなんて言えないだろ。不良にそんなこと言えるほど、俺、気が強くないしさ。

寧ろそんなこと言うなんて恐いしさ。言葉の代わりに首を縦に振って返事をした。


伸びた俺達の影が本体に合わせて、ゆっくりと動く。陽のあたたかさを背中で感じながら、俺達は影の後を追っていた。

上着のポケットに手を突っ込んで俺の隣に並ぶヨウが、不意に「変な感じだな」と話題を切り出してくる。

「お前っていつもチャリに乗っているのに。今日は歩き。妙な気分」

「俺だって歩きの時くらいあるぜ、ヨウ」

「俺の中じゃ常にチャリ乗って爆走しているイメージがあンだよ。めっちゃ狭ぇ裏道とか難なく抜けられるし、ぶつかりそうになってもギリギリでかわすし。お前のチャリの腕、スゲェし」

「そっかなぁ。慣れれば誰でもこなせるもんだぜ、チャリって。それにチャリ……あ、そういえば俺のチャリ」

忘れていた。
俺、日賀野から逃げるよう利二に言ってチャリを貸したんだっけ。

多分、ゲーセン前に放置されていると思うんだけど。さっき利二にチャリのこと聞けば良かったな。利二が俺のチャリの鍵を持っていると思うし。

「なんかあるのか?」

話を中断した俺を不思議そうにヨウが見てくる。何でもないとばかりに俺は肩を竦めてみせた。

「変なヤツだな」

怪訝な顔をして俺から目を放すヨウは、道に転がっている小石を見つけて爪先で軽く小突いていた。小石は電柱に当たる。



「ヤマトとは中学からの付き合いだった」



突然始まった昔話に俺はヨウを凝視する。気にすることもなくヨウは話を続けた。

「中学の時、学校がダリィ。教師ウゼェ思っているメンバーが集まってデッケェ寄せ集めグループができた。そん中にヤマトがいたんだ。今ツルんでる面子も、その時のグループに属していた。ココロと弥生はいなかったんだけどな……」

ということはワタルさんやシズやモト、響子さんに先日病院に送られていたハジメっていう不良はみんな、中学時代にツルんでいたってことか。

俺は敢えてヨウに何も聞かず、心の中で話を自分なり解釈する。



「ツルんでた奴等と一緒に喧嘩に明け暮れて、学校サボッてはハシャいで……そんな調子のいいグループだった。似たり寄ったりの理由で集まった奴等だ。ワリと気が合う奴等ばっかだったけど、俺はヤマトといっつもソリが合わねぇでいた。まあ、中にはそういう奴もいるだろって分かっていたつもりだった。ンだけど、気が付けばいつもあいつと口論になっていた」



最初から日賀野とヨウは仲が悪かったってことか。


そういう奴いるよな。
出逢ったその瞬間、外見とオーラだけで「こいつと俺じゃ無理そうだ」って感じる奴。俺もそういう奴に何人も会ってきた。


極力そういう奴とは関わらないようにしてきたけど、ヨウの場合はそうもいかないよな。同じグループに属していたんだしさ。



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あきゅろす。
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