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03-03



俺が噂のような人物なら、日賀野って不良も恐くないんだろうケド、生憎俺はチャリだけが取り得の凡人日陰少年だぜ! ちなみに習字も得意だ! 習字とチャリなら任せとけ! ……そんなこと呑気に思っている場合じゃねえし。

ヨウってそんなに厄介な不良だったのかよ。

有名だってのは知っていたぜ? だけどそれは学校内での噂だけだし。


そういえば、先日の騒動で“あいつ等”って皆揃いも揃って顔を顰めていたよな。


ハジメって不良がヤラれていたのは、日賀野率いる不良グループのせいなのかなぁ。でも日賀野はあの騒動に直接は関わってなかったし。

わっかんね、頭が混乱に混乱している。

タコ沢の言うとおり、あいつと関わったことでメチャクチャ厄介なことに巻き込まれそう。

もう巻き込まれている一歩手前、いや手遅れかもしんねぇけど。

頭を抱える俺の余所で、

「まさかもう接触があるとはな……」

利二が吐息をつく。

「そいつが日賀野じゃないという可能性も無いことも無いが……可能性は限りなく低いだろうな。何よりお前は荒川の舎弟。日賀野が目を付ける条件は揃っている。田山、日賀野との接触のこと荒川は知っているのか?」

「……いや知らねぇ。言ってねぇから」

「知らせた方がお前の為じゃないか?」

俺のため、か。
そりゃそうだけど日賀野と軽い接触をしただけだもんな。それにこういうことをヨウに言ってイイのか、正直迷う。

仮に日賀野と接触があって何か災難が降りかかっても、それは俺と日賀野の問題。ヨウには関係のないこと。

原因がヨウの舎弟であったとしても、結局は日賀野と接触した俺の問題じゃないかと思う。

「確かに今はヨウの舎弟だぜ。だけどさ本当に舎弟って言えるような関係じゃねぇんだ。成り行きで『舎弟にしてやる』言われただけ。俺は成り行きに任せて今日まで舎弟の座に座っているんだけど、それも何時まで続くやら? だし」

「それはそうだが……」

「接触があったとしても、まだ話し掛けられた程度だしな。こういう時だけヨウにヘコヘコと頼るってなーんかイヤじゃん?」

利二が微苦笑して、ボックスからナゲットを取って自分の口に放り込む。

「頼ることが恐い、の間違いだろ?」

「それもある。やっぱ恐いって。不良さまはさ……利二!俺、カッコは付けてみたけどやっぱ恐ぇ!どーしよう!」


「言われてもな……こうやって話を聞いてやることくらいしか出来ない。心配はしているんだぞ。長谷や小崎もそうだ。お前の前ではフザけているが、お前がいないところでは心配している。何も出来ないことは実は歯痒かったりするんだ。今日だって部活で来られなかった二人が『自分達の分まで励ましてやれ』……って、おい?田山?」


俺、スッゲー感動した。
薄情者だと思っていた奴等が、そんなにも俺のことを心配してくれていたなんて!

グッゾーッ、卑怯だぞ。
こういう時にそんな友情いう名の優しさを俺にしてきてくれるなんて。俺にこんなことしても涙しか出ないんだからなバッカヤロー! 嬉しいぞチックショウ!

感動のあまりに出た洟水をポケットティッシュでかむ俺に、利二は「苦労しているな」と同情してきた。


苦労どころか、現状に胃と心臓が毎度の如く痛いっつーの。肝が鍛えられるぜ。マジで。

「しっかし利二……お前、あの二人よりも親身になって俺の話を聞いてくれるよな」

「性格上というのもあるが、お前だからというのもある。世話にもなってるしな。また泊めてもらっても良いか?」

「いつでも来いよーっ、一日中俺の舎弟不幸話聞かせてやるから」

利二が笑ってくる。

利二はよく俺の家に泊まりに来るんだ。本人曰く家が堅苦しいらしい。家族と上手くいっていないとかじゃなくて、何となく家が窮屈に感じるらしい。

家に対する反抗期かもな、と言っていた。

透や光喜のところに泊まりに行くこともあるみたいだけど、二人とも電車通だけ家が遠い。

同じ地域に住んでいる俺の家の方が運賃掛からないし、気軽に泊まりに来られる。

「あのアルバム買ったんだ。今度持って来てやる」

「マジで? ぜってぇ聴く!」

「言うと思った」

「良かったか?」


「お前の家で聴こうと思って、まだ聴いてない」


俺は利二と笑い合った。それは俺にとって心落ち着く時間だった。




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