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02-08


フロンズレッドの女不良は俺を満遍なく見てきた後、軽く息を吐いて俺の頭に手を置いてきた。


突然の動作に俺は当惑。

対照的に彼女はふんわりと微笑んできた。


「怪我はねぇか? あったら遠慮なく言えよ」

「べ、べつに怪我ないデスケド」


「そっか。なら良かった。驚かせて悪かったな。テメェ、喧嘩慣れしてねぇってヨウから聞いていたから」


グシャグシャに髪を撫でて俺の肩に手を置くと、後ろにガンを飛ばしていた。

つられて俺も後ろを振り向けば、ムスッと脹れている金髪不良が額を擦っていた。


「おいコラ、モト。テメェ、何腐ったやり方で挨拶してんだ?」

「だぁああああああって! ヨウさんが舎弟作ったって言うからぁああああ! どんな奴かカラダに聞いてみようって思ってッ」


フロンズレッドの女不良さまは、金髪不良の、男だったら1番突かれたくない急所を蹴り上げた。

痛さに悶えてその場にしゃがみ込む金髪不良に、俺はかなり同情した。


アレは痛い。絶対痛い。

呼吸が出来なくなるくらい痛いに決まっている!


「何がカラダに聞いてみるだ。そこで反省してろ馬鹿が。ホント悪かったな、向こうに行こう」

「え……けど、この人」


「放っとけ放っとけ。当然の報いだ」


ぞんざいに言い放つフロンズレッドの女不良さまは、俺の背中を叩いて笑いかける。

フロンズレッドの女不良さまって口調は荒々しいけど、曲がったことは嫌いなようだ。
俺のような奴を気にかけてくれる。姉御肌という単語がぴったりだ。


でもさっきの蹴りを見ていたら女番長って感じがするんだけど。普通に煙草を吸っているし。

フロンズレッドの女不良さまに流されるまま、俺はヨウやそのダチのいるところへ向かった。

ヨウは呆れたように金髪不良に目を向けている。


「モトの奴、何しているんだ? ったく。ケイ、お前、よくモトのパンチかわせたな。喧嘩慣れしてねぇだろ?」

「してるわけねぇーよ! っ、恐かったッ…マジ恐かったーっ」

「悪い。モトには後で言っとく。モトの紹介は後回しで、まずこいつ等から紹介するぜ」


俺の肩に腕を乗せて、親指で前方を指してくる。

前方にはフロンズレッドの女不良さまを合わせて三人の不良が立っていた。

改めて不良を目の前にすると足元の感覚がなくなるほど恐怖心が湧いてくる。


取り敢えず、社交挨拶だと心に言い聞かせ愛想笑いで「どーも」と挨拶をすれば、フロンズレッドの女不良さまが自己紹介をしてきた。


「さっきは本当に悪かったな。うちは三ヶ森 響子(みかもり きょうこ)。高二。制服見れば分かるように、あんたとは別の高校に通っている。響子でいいよ」


響子さんは俺の一つ上なのか。

俺の先輩だからかもしれないけど、ホントお姉さんって感じがする。

微笑まれると妙に緊張してしまうんだから困った。こういったタイプの女の子と接点が無かった。


けれども肝に銘じておかなければならない。

響子さんの前では曲がったことはするな。


じゃないと俺、あの蹴り喰らったその日から男じゃなくなっちまうかもしれねぇもん! あの蹴り、強烈だろうな。男として何かが再起不能になるって。


次に自己紹介してきてくれたのは、何処かボンヤリとしている男不良。

お前は何処を見ている? と思うくらい遠目でどこかを見ている。妖精さんと戯れているお顔だ。


「相牟田 静馬(あいむた しずま)。ヨウとタメだ。ふぁー……シズと呼ばれている」


大きな欠伸を漏らしているシズは「眠い」と独り言を零した。

何で眠いのか、何で髪を水色に染めているのか、何処を見ているのか、色々ツッコミたいところはあるけど何も言わないことにした。

こっそりとヨウが彼の趣味は睡眠と食欲だということを教えてくれる。


ああ、だから眠いのね。

遠目を作っているのは眠いからボンヤリしているんだな。なるほど納得。

シズも俺達とは別の高校に通っているらしい。響子さんと一緒の高校なんだって。


最後に自己紹介してきてくれたのは、今までの中で一番大人しそうな女の子。


「わ、若松(わかまつ) こころと言います。ココロで宜しく、お願いします」


しどろもどろになりながらご丁寧に頭を下げてきてくれる。俺も思わず頭を下げた。

この子だけは不良というより、俺と同じ地味日陰の類に入ると思う。

不良の中にいたから、この子も当然不良って思っていたんだけど、改めて見ると凄く大人しそうで不良とは程遠い。

髪染めていないし、装飾品も付けていないし、化粧もしていない。


なんか1番親近感を抱いた。


ちなみにココロも響子さんやシズと一緒の高校に通っているらしい。ということは、三人は俺とは別の高校に通っているってことか。


自己紹介をしてきてくれた三人に「宜しく」って挨拶して、俺も自己紹介をすることにした。


「田山圭太。一応、いちおうヨウの舎弟で、ケイって呼ばれていて……そんでー」

「オレは認めねぇええええからな!」


俺の自己紹介タイムを見事に引き裂いてくれたのは、先程の金髪不良。

あの痛烈な痛みは過ぎ去ったのか、完全復活して此方にズカズカ歩み寄ってくる。俺は逃げ腰になった。


だってこいつの目、据わっているもん!


鼻を鳴らしながら俺の前に立った金髪不良は、頭の天辺から爪先まで目を配って睨んできた。




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あきゅろす。
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