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02-06




◇ 



当然の如く後ろに乗ってくるヨウと共に、俺はチャリをかっ飛ばしていた。

向かうは地獄……じゃなかった、駅近くにあるゲーセン。そこでよく溜まるらしい。

ゲーセンって煩くないか? BGMガンガンだぜ? あそこで駄弁れるものなのか?


疑問を浮かべながら俺は心の中で溜息をついた。

本気で気が重い。

不良のダチと会うことが。マジ胃がキリキリしてきた。俺、胃炎にでもなりそう。


しかも俺の心臓、今の時点でバックバク高鳴ってやがる。

クッソー、こんなことなら光喜でも引っ張り連れて来れば良かったぜ。


この恐怖をアイツにも味あわせてやりたい。

俺に合掌してきやがってチクショウめ! 心配してきてくれたのは嬉しかったけどさ。

ふと俺の肩に置いていたヨウの右手が離れた。

後ろを一瞥すれば、片手で携帯を弄くってやんの。おいおいおい、大丈夫かよ。

「しっかり掴まってないと落ちるぜ? ヨウ」

「俺がそんなヘマするかよ。ワタルからメールが来ていんだ。あいつ、もうゲーセンで二万と五千ほどスッたそうだ」

「二万? そんな大金スッったのか」

「あれだな。何か腹立つことでもあったんだろ。あいつ、ムカつくことがあると何かと金使うからな」

「いいよな。そういう金があるって」

うっわぁ、ワタルさんもいるのか。

自然と口元が引き攣っていく。

そりゃヨウのダチだからツルむことが多いだろうけど、何もさ、今日までツルまなくても良いじゃないか!

俺、ワタルさん苦手なんだよなぁ。

嫌いってわけじゃないんだけど、恐怖心と苦手意識が同時に襲ってくる。


ヨウ曰く、ワタルさんは午前中からゲーセンにいるそうな。


そういえば学校では会わなかったな。会いたくないけど……。


ゲーセン目前でチャリを止めヨウを降ろす。

「やっと着いた」

なんてヨウは言っているけど、俺の胃は痛み絶頂で絶好調。


俺の胃が訴えている、「お家に帰りたい」と。

心臓が嘆いている、「殺される」と。


嗚呼、諦めてくれ俺のカラダ。

お前等がどんなに不調を訴えても、俺は行かなきゃならないんだよ。不良の巣窟に。

出来れば俺だって帰りたいし逃げたいけど、逃げるなんてそんな不可能だろ。

チャリをゲーセン前に置き鍵を掛けながら、俺は俺自身のカラダと対話していた。

口に出せば怪しい奴だけど、心の中だったら誰にも文句言われないしな。


こんなことでもしてないとヤッてらんないって。


俺は威圧感を漂わせているゲーセンに目を向ける。

此処は俺の地元の中で、上位三番以内に入る大きなゲームセンター。

3階建てでスッゲーデカイ。学生は勿論社会人なんかがよく出入りしているんだ。


俺も何度か入ったことある。

けど俺が踏み入ったことがあるのは2階まで。3階には行ったことがない。

理由は、ヨウみたいな不良の奴等の溜まり場になっていることを知っているから。


ゲーセン側も諦めているのか、不良達に対して溜まるなって注意はしてないらしい。


過去に何度か注意はしていたらしいけどキリが無いんだろうな。


馬鹿みたいにゲーセンを見上げていたら、ヨウに「まだかよ」と文句を言われた。

急いで鍵を掛けると、俺は「ワルイワルイ」愛想笑いを浮かべながらヨウの元に駆け寄る。


「チンタラしてんじゃねーよ」


悪態ついてくるヨウに、俺は何度も明るく詫びながら内心メチャビビッていた。

だって機嫌を損ねたらグーパンチが飛んできそう。

ビビらねぇって方が無理。

話題を逸らす為に、俺はヨウに質問をしてみることにした。

「なあ、ワタルさんやヨウのダチってゲーセンの何処にいるんだ?」

「んー。そうだな。格ゲーしているんだったら二階が多いけど、やっぱ三階だろうな」


「へ、へぇー……三階」


やっぱ三階きたか。不良の溜まり場説の流れている、三階きちゃったか。



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あきゅろす。
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