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18-14



「テメェは負けず嫌いだしな。簡単に向こうに屈するとは到底思えねぇ」


「俺は未遂でも、日賀野の舎弟になろうとした男だぞ。ははっ、今度は利二のようなストッパーもいない。あの時は利二が止めてくれたから、どうにか踏み止まれたけど、今回はだあれもいない――それでもお前は俺を信じるって?」


振り返って冷笑にも似た笑みを浮かべれば、視線をかち合わせてくる舎兄が毒気を払ってしまうような微笑で返答。


「ああ、俺はテメェを信じているよ。ケイ」


当たり前のように俺を信じてきてくれる舎兄の言葉に嘘偽りはなかった。こっちが面を食らっちまう。

「なんでっ」クシャッと顔を歪めて、「俺を信じちまうんだよ」上擦った声で詰問。


「もしも俺が簡単に屈する奴だったらどうするんだよ。お前、失望しちまうだろーよ。高望みを持つと後々のガッカリ度もパないぞ。ガッカリされても……困るのは俺なんだからな……」

「高望み? ちげぇよ。俺は事実を言っているだけだろ? テメェは弱い男じゃねえ。テメェこそ、なんで自分を卑下しちまうんだ? 言ったじゃねえか、もう少し自分に自信を持てって」


辛酸を味わって佇んでいるとヨウが静かに移動し始めた。
彼はやがて俺の右隣で止まり、「ケイ」名前と一緒に肩に手を置いてくる。


「本当は向こうの誘いを蹴っちまったんだろ? テメェってそういう奴だよ」


ぎこちなく顔を上げる俺を強く見つめてくるイケメン不良がやけに憎くて憎くて、だけど信じてくれる事が嬉しくて、俺は相手の腕を掴む。顔を歪めたまま苦言。

「こんなのばっかだ……弱いから地味だから舎弟だから利用される。ココロを……守るって約束したのに守れなくって」

「ケイ……」


「好きなのに。大事だと言っているのに。傷付けたくないと思っているのに……」


じゃあどうすればいいんだって話だけど、そりゃ向こうの条件を呑むしかない。

俺が古渡の彼氏になってココロが解放されれば問題解決。まーるく事は収まる。

だけどな、ヨウ。
俺は馬鹿だから向こうの言いなりになんてなりたくなかった。 悔しかった。俺もココロも利用されるなんて真っ平ごめんだったんだ。地味だってプライドがあるから。


「断っちまった。古渡の出した条件を断っちまったんだよ。ヨウ。ごめん、ココロを解放できるチャンスが……ほんっと俺、馬鹿だから……断っちまった。ココロもチームも大事だから」


「馬鹿。なんで謝るんだ。よく断った。ケイ……よく断った」


小刻みに震える俺の頭を軽く片腕で絞め、クシャッと手を置いて「よく断った」舎兄は情けないチームメートを優しく励ましてくれる。


「俺はちっとも……変わっていないな」


声音の芯から震える俺は自分の不甲斐なさを呪った。

どうして俺ってこうなんだろう。ヨウの地味くん舎弟だからって狙われて、目ぇ付けられやすくて、利用されそうになってバッカで。

利二の時といい、ココロの時といい、誰かに頼らないと事も解決できない。

利二の時も、俺が強かったら日賀野を打ち負かして(もしくは唆して)友達を怪我させられずに済んだかもしれない。ヨウ達が出動せずに済んだのに。

今回だって俺が強かったら、ココロを今すぐにでも……嗚呼、彼女一人取り返すことができないなんて。

自己嫌悪に陥る俺だったけど、まだ話は終わっていないから舎兄に洗い浚い白状することにした。


「勝手に古渡の出したゲームに乗っちまった。人質を懸けたゲームに乗っちまった。ごめん、ヨウ。ほんとごめん。勝手なことをしたのは分かっている。

でも、これしか方法なくって。俺とココロは大人しいから……狙われやすくてさ。チームにこんなにも迷惑を掛けてしまう。古渡はココロを弄くりたいんだ。苛め倒したいんだ。だから俺にあんな条件を出した。地味凡人の俺を寝取って何が楽しんだろうな。誰彼セックスしたいのかよ。俺はヨウみたいにイケメンじゃないのに、童貞くんなのに!

きっとココロは傷付く。俺の独断じゃきっとっ……どっちを選んでも傷付くことには変わらないんだけどさ。ココロは弱い女の子じゃないから、悪いけどこの選択肢を取らせてもらったんだ。ヨウ、手を貸してくれ」



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あきゅろす。
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