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13-20




差出人はハジメの名前になっているけど、添付されている画像もハジメ本人。



嘘だろ、何だよこれ。


悪質な悪戯にしては悪質すぎる。変な方向に腕が曲がっている、ハジメのズタボロ、ボロ雑巾姿が俺達メンバーの携帯に一斉送信されてやがるなんて。一斉送信されてやがるなんて。


喪心しているであろうハジメの痛々しい寝顔に俺は奥歯を噛み締めた。


最低悪質メールだ、こんなのっ! 俺等を挑発しているにしか思えねぇ! ……くそっ、くそったれっ、ハジメがナニをしたってんだ! 弥生にまでこんなメール送りつけやがって、あいつが、どんな思いでメールを見ていると思っているんだ!

「ケイ……出せ。行くぞ」

「……おう」

怒りに震える俺、そしてヨウは必要最低限の言葉以外何も交わさず、携帯を仕舞ってチャリを出す。

ハジメ、間に合わなくてごめん。

だけど俺等は諦めずにお前を捜す。
迎えに行くから、もう少しだけ辛抱してくれよ……ハジメ、もう少しだけ、な? お前は俺等の仲間、誇れる仲間だから……必ず迎えに行くからな!


降り頻る雨、暮れた空の下で俺とヨウはハジメを捜し続ける。  
そろそろチャリを漕いでいる足の悲鳴を上げ始めるけど、俺は総無視していた。

チャリのヘッドライトを点けて、ずっしりと重たくなる制服を感じつつ、懸命に足を動かす。一分一秒を無駄にしたくなかったんだ。
ハジメを助け出したい一心で、俺は重くなる制服を振り払うように足を動かしていた。

相変わらず、情報の一切が手に入らないけど諦めたくない。ハジメを襲ったそいつ等に負けを認める気がして。  

五里霧中でチャリを走りまわしていると、ヨウの携帯から着信音。電話のようだ。

ヨウは相手を確認、


「ハジメから……だと?」


唸り声を上げながら電話に出る。

送り付けられた画像を見る限り、ハジメが電話に出れる筈がない。
ということはハジメの携帯を使って誰かが、それこそ主犯がヨウに電話を掛けて来たに違いない。

ヨウは自分の携帯をスピーカーフォン設定のままにしているのか、向こうの声が俺の耳にまで届く。
相手は女、ハジメを甘ったるく呼んでいた女の声だった。


『ハロー。お元気? 私はお元気。ハジメちゃんどえす』


こいつ、ふざけるなよ。

俺、初めて女に対してこんなにも殺意を抱いたんだけど!
今の俺ならその女に張り手を食らせそう。
男が女に手を上げるサイテー! とかカンケーねぇ! こういう場合、男女平等だろドチクショウ。

思わずハンドルを握る手に力が篭った。

「誰だテメェ」

ヨウは挑発に対しても冷静に返答。
ただ俺の肩を握る手に力は篭っていた。気持ちは分かるんだけど……ちょい痛い……ヨウ。大変遺憾なことに俺の肩にも痛覚があるから……あんま強く握られると痛みを感じるんだよ。もうちょいソフトに。ソフトにな?

『つまんないな』

怒ってくれないと楽しくない、ムカつくことを言ってくる女はハジメは解放するからと単刀直入に用件を告げてくる。

ハジメを解放? どういうことだ? 眉根を寄せる俺とヨウに対し、電話向こうの女は淡々と説明。


『つまりフルボッコから解放するってこと。まあ、どっかで野ざらしになるのがオチだと思うけど。ああ大丈夫、多分、死んじゃないと思うから。あの男、弱いくせに見栄だけ張っちゃって。あーあ、利用されてくれない男って大嫌い』


「こンの、クソアマッ。ハジメに何しやがった!」


『わぁお、怖い怖い。怒った声もイケメンくんね、ヨウサンって。何をしたか? 画像送り付けたとおりのこと。詳細は想像にお・ま・か・せ。これもゲームなんだから、一人くらい不能になったくらい大丈夫でしょ? じゃあね、ばっはは〜い』 


言いたいことだけ言って電話を切る女。

なんだよ……ゲームって。
こうやって仲間を甚振ってくれるのが、お楽しいゲームってか? なあ。

結局ハジメの居場所は教えてくれもくれなかった。
自分達で捜し出せってことかよ。解放したとか何とか言って……これもゲーム感覚で楽しんでいるってか? なあ!

俺はハンドルを切って方向転換をしつつ、怒りに身を震わせていた。
後ろに乗っているヨウは携帯を片手に、ただ黙然と俺の肩を掴んでいた。痛いくらい俺の肩を掴んでいた。


ザァザァ。ザァザァ。

雨音が勢いを増して一層地上に音を奏でている。
捜しても捜してもハジメが見つからないことに焦れたヨウは、一旦仲間を集結させることにした。埒が明かないと思ったんだろう。

それに……大変申し訳ない話なんだけど、チームの“足”と自負している俺の体力も限界にきていた。

流石に降り頻る雨の中、延々と二人分の体重を乗せたチャリを漕ぎ続けるのにも体力がいる、もう限界だ。


まだ漕げるっちゃ漕げるけど、運転する手には力が入らない。
俺の体力も見越してヨウは仲間達を集結させようと踏み切ったんだろう。


仲間達にメールをしたヨウは俺にたむろ場に向かってくれるよう頼んでくる。

交替しようか、なんて言葉は聞きたくなかったから、俺はペダルを強く踏んで最後の力を振り絞った。

どうしてもチームの“足”としてその任務を真っ当したかったんだ。ほんっと……負けず嫌いになったよな、俺も。

だけど随分遠出していたもんだから、俺等のたむろ場に戻るまでチャリでも20分時間を掛けちまった。

「悪い」

俺は倉庫前でチャリをとめて、パンパンに張っているふくらはぎを叩きながらヨウに詫びる。


時間を掛けちまった。普通だったら10分で帰れた距離なのに、俺の思っていた以上に足は限界の限界まで達してたらしい。



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あきゅろす。
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