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「ははん。さてはお前等、『エリア戦争』に関わっているな。此処の裏道を使えば、五分足らずで商店街南門まで出られる。そうだろ、圭太。土地勘の優れているお前がこんなところで駄弁っているってことは、何かしら一噛みしているんだろう?」


健太……お前。
馬鹿正直に顔を歪める俺をせせら笑い、健太はビンゴだと笑みを深める。

まるで俺等の中学時代の関係を一切合財なかったことにして接してくるそいつは、友人という顔じゃなく、一端の敵チームとして接してくる。

クソッ、お前は割り切っちまったのかよ。俺等の関係をあの日の絶交宣言で、全部割り切っちまったのかよ。

だったら残念、俺はそう簡単に割り切れないんだよ。
なんでならさ、俺はお前を大事なダチだって思っているから……もう焦って答え出すのもやめたんだ。お前と俺の関係に、焦って答えだすことはもう。


「ケイ。大丈夫かい?」


手の色が無くなるまでハンドルを握り締める俺に、ハジメがそっと声を掛けてくる。

ぶっちゃけるとちっとも大丈夫じゃないさ。こうして向かい合うだけでも、失友した胸が痛む。

でもな、今は大丈夫だって気丈に振舞ってやるさ。

「ハジメ、副頭の実力分かるか?」

ハジメの心配を聞き流して、向こうチームの実力を尋ねる。
健太の実力はある程度把握している。あいつも元々はジミニャーノ。俺と実力は変わらない筈……中学時代までのデータだからなんとも言えないけど。


「ホシは分かるんだけど。副頭までは……ヤマトが高校に進学して仲間にした男だろうね。雰囲気的には冷静沈着で、分析力にはとても長けていそうだ。なにより向こうの副頭をしている腕前なんだしね。油断はならないよ」


ご尤もな意見に頷き、俺はどうやってこの修羅場を切り抜けようか思案を巡らせる。

ヤーんだぜ、副頭にフルボッコされるなんて。
ぜってぇヤダかんな! 日賀野大和で十分、俺は堪能したんだからな!


「フーン、『エリア戦争』にヨウが向こうに関わっているんだ。じゃあー、ヤマトに連絡してやろうっと」


ホシの行動に俺とハジメは以心伝心。

しっかりとハジメが俺の肩に掴まり、俺は思いっ切りペダルを踏んでチャリをかっ飛ばした。

不意打ちともいえる俺等の突然の行動に向こうは怯みを見せるけど、気にするととなく俺は三人の脇をすり抜けた。

同時にハジメがホシの取り出した携帯を引ったくる。
ある意味、犯罪染みた行動を犯す俺等は見事にホシの携帯をゲットして後ろに下がった。

「ちょーっと返してくれる?」

ぷぅっと可愛く膨れる(ちっとも可愛くねぇよ!)ホシが俺達に携帯を返すよう命令。

冗談じゃない。
あいつに連絡をされちまったら、こっちの計画が狂っちまう! 日賀野に連絡させることだけはさせねぇよ。


「連絡されたら困る、というところか」


スーッと目を細めて俺等を捉える斎藤が一歩、足を踏み出した。

やっべぇ。こりゃ来るな。
俺はハジメにもう一度肩を掴んでおくよう指示。

瞬間、チャリを漕いで大きく旋回させた。

あくまで俺の力は人の“足”になる移動とスピードに乗らせる手段でしかない。

喧嘩できる相手を乗せて初めて、爆裂的な攻撃力を生み出すことができる。今の面子じゃちょい無理があるわけだ。


「ケイ、頭低くして!」


ハジメの言葉に俺はちょいと頭を低く下げる。ハジメは落ちる覚悟で俺の肩から両手を放して、持っていたホシの携帯に回転を掛けながら投げた。

「アアアアア! 何てことするの!」


悲鳴を上げるホシを余所に、携帯は斎藤の頬横を通り過ぎて、健太の手に命中。
正確には手に持っていた携帯に命中。弾かれたように二つの携帯は宙を舞い上がって、向こうへと飛んでいった。

どーやら副頭に相手させておいて、健太は頭に連絡を入れようとしていたようだ。

まったくもって狡いぜ! ジミニャーノ不良! って、うわっつっ、どっわぁああ?!

副頭が前車輪目掛けて横蹴りを入れる。
それによって俺等はバランスを崩して転倒。俺はハジメと仲良くアスファルトに叩きつけられた。

アイッテーっ、自転車ってのは前からの攻撃には強くても、横から攻撃されると、こんな目に遭う。

横は弱点だぜ、弱点!

打ち付けた肩を擦りながら、「大丈夫か?」俺はハジメに声を掛ける。「なんとか」でも背中打ち付けたと苦言を漏らす。

だよなぁ、スピードあっての転倒だから、俺も擦り剥いちまって擦り剥いちまって、あーいってぇ。擦り剥いて指から血が出てらぁ。青たんができてもおかしくないよなぁ!



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