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11-19



訛りに訛った挨拶の後、気合の入った涼の号令と共にバイクとチャリで一斉に猪突猛進。


「アブネ!」


向こうの悲鳴やら怒声やら罵声やらを浴びながら、軽く相手を挑発する意味で集っている都丸チームを引っ掻き回した。

勿論そんなことすれば相手がどういう反応を見せるか、予測するまでもなく。

バイクはともかく、チャリに乗っている不良はハッ倒してしまおうと敵意を見せてくる。

チャリに跨っているモトやタコ沢、その他の不良達はハンドルを切って器用に敵の拳から逃れ、襲ってくる輩に突進。

派手に尻餅つく不良を鼻で笑い、チャリの車輪で相手の爪先を踏んでその場を通過した。


怒りを煽れば煽るほど、相手はこっちの策に溺れてくれる。

挑発染みた言動に完全に向こうの頭は煮えてしまったようだ。


「ブッコロス!」「焼き入れる!」「テメェ等っ、浅倉チームだな!」


物騒な台詞や今更の台詞を飛ばし、北門に攻め込む動きを見せた。

浅倉チームは榊原に戦力を奪われた弱小チームだと思われている故に、策なく潰してしまおうと考えに行き着いたのだろう。


そうなればこっちのものだ。
一旦引き上げだとグループを仕切る涼がバイクを飛ばして先頭へ。後を追うように次々バイクやチャリが彼の走った道を辿る。 

北から南へと繋がっている商店街イチ大きな通りに出た涼と一行は追い駆けて来るであろう都丸チームを待ち構えつつ、西門に発破を掛けに行った仲間達の姿を探す。

まだ仲間達の姿は見えない。
早くしないと向こうチームが追いついて来る。

例え、追いつかれても乗り物で応戦し、向こうの攻撃を避けていれば良い話なのだが……なるべく労力は榊原チームに回したい。

無駄な労費をしたくないため、仲間達が早く来てくれることを願う。

タイミングよく両チームが鉢合わせになれば、労費は少なく済むのだから。

そう思っている間にも、東から都丸チームらしき不良軍が見えてきた。

「チッ。間に合わないか」

涼は舌を鳴らし、仲間内に応戦する指示を出す。
同時にモトが仲間内全体に聞こえる声音で叫んだ。


「響子さんが来た! 刈谷チームがやって来るぞ!」


言うとおり、西門に続く道向こうから仲間の姿が。

バイクやチャリに跨っている向こうの一手と合流した両グループは、少し距離を置いて都丸チームと刈谷チームを鉢合わせにする。


するとどうだろう。

此方が挑発して怒りを煽っていたおかげか、二チームが顔を合わせると邪魔だとばかりに喊声(かんせい)を挙げながら衝突。


殴り合い合戦が始まったのだ。


作戦成功、なんて意気揚々としている場合ではない。

うかうかしていると此方に敵意が向けられ、攻撃の手がやって来る。

東西に別れていたグループが一つと化した浅倉チームだが蟻の子のように四方八方へと散らばり、「バイク組鳴らせ!」涼が命令。

バイクのホーンが一斉に甲高く空へと舞い上がった。

斬り込み部隊は本隊に聞こえるように、いつまでもバイクのホーンを鳴らし続ける。


ホーンという音が音を上塗り。それは繰り返され、一つの音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音音、音。


それは本幕が上がるという、絶叫に近い合図――。





「――きたな。荒川」

「ああ。成功してくれたな」


北門出入り口で待機していた本隊に合図が届く。 

作戦は成功したという喜びの合図、同時に本番だという緊張の合図。

両方の意味合いを持つ合図を耳にした浅倉とヨウは、各々チームメートに行くぞと声音を張って号令。

バイクのエンジンがけたたましく唸り声を上げ、回るモーター音が周辺に響く。


次の瞬間、静寂を裂くように一斉にバイクが走り出した。
宙を切って風を生み出すバイクはスピードを上げるかわりに、絶え間なく排気ガスを吐き出して空気を汚している。

すっかり錆びれた商店街の周辺には息を潜めるように住宅街が建っているが、『廃墟の住処』が広範囲に渡って土地を取っている。

それが余計騒音の苦情を警察や役所に届けられそうだが、正直通報など余計な事を考えている暇などないのだ。


「シズ。鳴らせ」


向こうに本隊が動き出したことを知らせる。
ヨウの指示に運転しているシズはバイクのホーンを鳴らす。

すると仲間内でバイクのホーンがこだまのように次々に鳴り響き、音に音が上塗り。重ね塗り。分散している音音音、音は一つの合図音と化した。

加速するバイクたちは直ぐに現場目前まで辿り着き、作戦開始。

シンプルすぎるその作戦は、合戦している両チームの間に割って入るように強行突破するというもの。




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あきゅろす。
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