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11-08



「それは相手が大人数だからだよ。俺とヨウの二人しかいないのに、向こうは大勢で向かってくるから、仕方がなしにチャリで逃げるしかないと思って強行突破するんだ」

「それだよそれ! だからさ。東西にいる都丸チームと刈谷チームを無視したいなら、びゅーんっと突破すればいいじゃん! 打倒榊原なら、びゅーんっと強行突破! どう? 名案じゃない?」


「ばってん、そいはちかっぱこまめちゃんやり戦法じゃなか(それは超無理やり戦法じゃないか)?」


ああもう、だから涼さん、方言が、方言が! ツッコむのもメンドイぞ、あくまで心の中だけだけど!

ご尤もな意見を述べる涼さんだけど、弥生の意見がハジメの閃きを導き出したようだ。
「そうか!」

その手があったと、ハジメはノートの切れっ端に殴り書き。
俺等がその殴り書きを読んでも、何を書いているのか些少しか分からない。まるで英語の筆記体みたいな字だ。

首を傾げる俺等に対して、内容を書き終えたハジメは言う。強行突破プラス、スピード勝負でいこうと。

スピードを上手く使えば、都丸チームと刈谷チームを潰し合わせることもできる。

無駄な労力を使わず、最終目的に辿り着ける。
ハジメは強くつよく訴えて弥生に大手柄だと褒めを口にする。

そしたら弥生が俺の背中を思いっ切り叩いて(痛ぇ!)、満面の笑顔を向けてきた。

「それもこれも、ケイがオモシロ話を私にしてくれてくれたからだよ!」

オモシロ……俺は自分の不幸話をしているんだけど。

いやいやいや、いいんだよ。
人の不幸は何とやら、不幸話の方が笑えるしネタになるもんな! くっそう、そのネタにされている俺、ドンマイ!

「早速これをリーダ達に報告してくる」

一頻り話し合いを終えたハジメは殴り書きした紙切れを片手に行動を移す。
涼さんも彼について行くらしく、肩を並べてリーダー達の下へ向かった。残された俺達は少しばかり休憩だと羽を伸ばすことにする。


だけど弥生はこれから出掛けて来ると俺達に伝え、腰を上げて制服についた砂埃を払った。

彼女曰く、少しばかり情報を収集してくると言う。
少しでも三チームの現状の動きを知っておいて損はないと考えたみたいだ。

そんな弥生に対して、「一人じゃ危ないって」俺も行こうかと言葉を掛ける。

今の事態が事態だ。
一人で行動するにはちょっち危ない。俺自身は喧嘩すらできないけど、チャリで一緒に逃げることくらいならできる。

率先して同行しようか、と提案する俺に、「心配サンクス!」でも大丈夫だと弥生は胸を叩いた。

「たった今、響子にメールを送ったから大丈夫だよ。響子が一緒なら千人力だから。あ、その前に……ハジメ、ちょっとハジメー!」

思い出したように弥生がハジメの下に駆け出す。見事に染まった、長いながい茶髪を靡かせながら。

俺はついつい微苦笑を零してしまった。

本当にハジメが好きなんだな、弥生の奴。
無意識だと思うけれど、ハジメの名前ばかり呼んでいるぞ。学校でも、たむろ場でも、日常会話でも。

弥生は気付いていないだろうけどさ、日常会話でよくハジメの名前が出るんだ。

「それでハジメがね」

だなんて、まるで彼氏の名前を紡ぐように、意識しているであろう相手の名前を口にしてる。

実はハジメも、弥生の名前を口にすることが多い。

所謂これが相思相愛ってヤツだよな。
お互いに思い合えるのだから、本当に好きなんだろうな。弥生も、ハジメも。

はぁ……なんだろう。この切なくなる気持ち。

向こうの相思相愛状況を羨んでいる俺がいるよ。
いいよねぇ、告白の結果が見えている、互いに片想いをしている方達は。妬み? おうよ、俺だって人間だ。妬みくらいするぜ!

「はぁーあ、切ない」

思わず口に出して気持ちを吐露。
侘しい気持ちになる、これも青春か? だったら俺の青春ってほろ苦いんだけど!


「げ、元気を出して下さい! ……なんて、安易に言っちゃいけないと思いますけど」


ドキリ。
馬鹿みたいに心臓が高鳴った。

チラッと流し目で右隣を見やれば、モジモジと手遊びをしながら人の隣に腰を下ろしているココロの姿が。

い、いつの間に?!
あ……そっか、ココロは弥生の隣に座っていたから、あいつがいなくなった分、ココロが詰めて座ってきたんだな。



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