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11-07



目を点々にする俺等に、向こうの仲間内が「完全に訛っています」俺等に一切合財伝わっていないと指摘。

「あ、うっかりした」

涼さんは誤魔化し笑いを浮かべる。

「悪い悪い」

片手を出して謝る涼さんは、一つのことに夢中になると完全に方言になってしまうらしい。
なるべくは標準語で喋るからと、さっきの台詞を言いなおしてくれた。


「だけど、どげんしても二チームを無視することは出来ないと思う。榊原のところに行くには二チームの目は避けられなかし……じゃない、目は避けられないし、見つからなかようにする不可能やし。北を陣取っているから、どうしても東西には見つかるって」


なるほど、そう言ってくれたのね。

まだ方言がまじっているけど、さっきよりは断然分かりやすくなったよ。

同じ日本人なのに、異文化の壁さえ感じたよ。
方言って結構不便だなぁ。日本人同士で異文化を作り上げちまうんだから。


さてと話は戻して、分析組は早くも詰み状態に陥っていた。

分析結果、榊原チームをどうにか倒しちゃえば二チームも白旗挙げてくれるだろうと推測はできた。

だけど、どうやって二チームに見つからず、北から南まで移動して喧嘩を売りに行くか、そこが問題ポイントだ。

なんと言っても榊原チームは、浅倉さんチームと真逆の方角にいる。
商店街の地形を考えても東西にチームを置いている双方に見つからないような複雑な道は存在しない。

かと言って商店街を大回りにぐるっと回り、例の大通りから南門付近に繋がる裏道を使って攻め込むというのも危険な賭けだ。

確かに裏道を使って攻め込めば、榊原チームと直接対決に持ち込むことができる。


けれど裏道は一本道。
榊原チームが協定を結んだチームを呼んでしまったら、俺達は挟み撃ちに遭って逃げ場を失ってしまう。

そりゃあ不味いだろ、幾らなんでも。
裏道もそんなに広いもんじゃないから、大勢で攻め込むにはちと窮屈だ。

弱ったなぁ……こういう喧嘩の戦法を立てるのは苦手だ。

ゲームならまだしも、リアルの世界だと自分や仲間が率先して動かないといけないし、体力のことも考えなきゃいけない。

俺達が超人なら別だけど、生憎俺達はZ戦士じゃない。やれることにも限りがある。無理は出来ない。


「私、こういう問題ってよく分からないけれど、ごり押しは無理なの? 強行突破って言えばいいのかな。そういうのはできない?」


首を傾げながら弥生が素朴な疑問を口にしてくる。

おいおいおい、弥生さん。ごり押しなんぞできるわけないだろう?

たった今、ハジメが人数の問題を指摘したばっかりだぞ。
しかも強行突破だなんて、どうやってするつもりだ? チーム一丸になって肉弾になるってか? そらぁ無謀だろう。


「具体的に強行突破するってどげんゆうこつだ?」


涼さんが方言まじりに質問を飛ばす。

意味はなんとなく伝わってきた。強行突破をするってどういうことだ? って聞きたいんだよな。

俺もそれは思った。
弥生はどんなイメージでごり押すつもりなんだろう?

すると弥生が満面の笑顔で俺を指差してくる。

「ケイみたいな感じ」

空気がものの見事に凍てつく。否、凍てついたのは俺、田山圭太である。

ケイみたいな感じぃ? つまり俺みたいな感じぃ?

……へいお嬢ちゃん、俺を名指しするってどういうことだい?!

なんでここで俺が出てくるんだよ!

『強行突破=田山圭太』の方程式は生憎俺自身も持っていない。
田山圭太は強行突破なんて物騒な単語なんぞとご縁がございませんよ!


「はあ……荒川の舎弟みたいな感じねぇ。つまり、どげんこと?」


うっわぁ、その溜息と質問の間!

白けた眼で見てくる涼さんが、まるで俺に対して白けた空気を作るなと言わんばかりの態度を取ってくる。俺は何もしていないのに!
空気は読む子だと自負しているからこそ、この空気は居た堪れない! 白け空気の冤罪疑いを掛けられた俺乙、田山圭太乙!

空気を打破するために、俺自身も弥生にもっと分かりやすく説明してくれるよう頼む。
じゃないとこの白けた空気はどうにもこうにも俺のせいになりかねない。
露骨に焦りを見せる俺に対し、「まんまだよ」弥生は笑顔を浮かべたまま説明を始めた。


「ケイさ、いつも話してくれるじゃん。ヨウをチャリに乗せて強行突破したって」


んーっと、それはあれか。

ヨウが無闇に喧嘩を売買したものだから、相手の逆恨みを買っちまって、最悪集団に追い駆けられてしまうっていうあれか? 



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あきゅろす。
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