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彼等は別の未来の“俺達”









――オワタんだぜ。真っ白な灰になった。燃え尽きた。




ちなみにこれは、俺自身が終わったわけじゃなくて、話し合いが終わったって意味だ。
ようやく話し合いに一区切りついて、今、多大な安堵が胸を占めている。

いやぁ、がむばったよ俺。
テンパりにテンパりながら不良さん方に商店街の細かい道を説明。

ノートを破り取ったページの切れっ端に軽く図を書いて、たどたどしいながらも説明をしたんだから。不慣れな説明の後は合同で戦法を出しあった。

戦法を立てるのは喧嘩慣れしてない俺にとって苦戦そのものを強いられたようなものだけど、そこは桔平さんが手伝ってくれたから上手く話し合いが進んだ。

ガチ話。
不良相手に頑張ってよく司会進行を務めたよ、俺。表向きはぎこちなくて、内心緊張のガッチガチ。

口腔の水分は見事に飛んで唾さえ出ないほど乾き切っていたけど、どうにか終わった。疲労通り越して疲弊したんだぜ。

皆で出し合った戦法と話し合い内容を舎兄に報告した後、俺は休憩とばかりに倉庫の外に出た。


すっかり空は夜模様。
残念なことに俺の住む町は都会だからそんなにホシは見えないけど、月の顔はちゃんと窺える。

今日は半月のようだ。
半分に割れたお月さんがぽっかりと地上を見下ろしている。

まるで人工の明かりよりも自分の方がナチュラルに優しい色をしているんだぞ、と人間に訴えながら地上を照らしてくれているようだ。あたたかい光を放っていた。

反面、お日さんが顔を隠してしまったから、夜風は冷たい。
骨の髄を凍らせるような寒冷は纏っていないけど、肌の熱は徐々に奪われていく。二の腕を擦れば、軽く冷えていた。


「こんなところで何しているんだ、荒川の舎弟。えっと名前は……」


背後から飛んでくる声。

振り返れば、ヨウとは正反対の髪の色、赤髪に黄のメッシュを入れている桔平さんが歩んで来た。

「おっつー」

俺の右肩に手を置いてくる桔平さんは、改めて俺の名前を聞いてくる。

田山圭太、名乗った後、舎兄に付けてもらったあだ名を口にして後者で呼んで欲しいと微笑を向けた。

肯定の返答を返す桔平さんは、

「さっきはテンパっていたな。ケイ」

可笑しそうに笑声を漏らしてくる。

「必死だったつーの? 超笑えたんだけど。慣れていないだろ?」

そりゃあ、生徒会長並みの仕事を押し付けられたんだ。テンパらないわけないだろ! 慣れていない? ああ、勿論慣れていないさ。

目立つ仕事は全部日向男子に任せてきたんだからな!

……情けない? どうとでも言うがよい。それが俺なりの生き方でい!

心中で反論、表向きで誤魔化し笑いを浮かべる俺に、

「だけど頑張ってたじゃん」

お褒めの言葉を向けてくれる。


「不慣れっつーのは見ていて分かった。それでも自分のやるべきことしようとしていた。お前の熱意は伝わってきたぜ。ケイ」


片頬を崩してくる不良に目尻を下げる。


「あんなにも舎兄に期待されちゃ、頑張らないわけにもいかないですからね。頼まれたことはしっかりこなさないと……、それが舎弟のやるべきことだと思いますし」


すると桔平さん、「どんくらい経つんだ?」舎弟歴を尋ねてきた。

そういえば桔平さんは浅倉さんの舎弟だったなぁ。
ということは同じ舎弟として歴が気になるかんじ? 俺もちょい気になるから、即答した。まだ一年も経っていない、と。



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