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全部で六つ、並列に等間隔に並べられたビリヤード台の一つに浅倉さんがいた。

本来ビリヤードを楽しむ筈の台は、すっかり不良の腰を下ろす休憩場と化しているようだ。

浅倉さんは最奥の右側のビリヤード台に座って、暮夜の景色を窓から眺めていた。彼の両隣には副リーダーの涼さんと、彼の舎弟桔平さんが立っている。

残り数人の不良達が各々ビリヤード台前に立っていたり、寄り掛かっていたり、床の上で胡坐を掻いていたり。

注目を浴びる中、ヨウとシズが先頭に立って向こうのリーダーに歩み寄る。

「よっ」軽く手を挙げる浅倉さんに、「返事しに来た」挨拶代わりの言葉をヨウは投げる。

回りくどい言い方は不要だと微苦笑を漏らす浅倉さんはどこか諦め顔だ。

そりゃあ、な……弱小チームと協定を結ぶ馬鹿はそうはいないだろ。

ましてやエリア戦争に加担するなんて、日賀野チームと対立している俺等からしてみれば負担極まりない。

内輪でも話題にあがったほどだ。
負担になるし、もしかしたらこれが原因で負ける可能性だって出てくるかもしれない。

なかなか協定を結んでくれる馬鹿はいないだろう。


「いいか浅倉。始まる前からンな面してんじゃねえぞ。テメェはチームのリーダーだろうが」


浅倉さんの表情を叱咤するヨウは、「そんなんじゃ先行き不安だな」毒言する。
取り巻きが不快な表情を浮かべているけれど、リーダーは物怖じせずに言葉を続ける。


「仲間を守りてぇなら、死ぬ気でやれ。テメェがそれじゃあ、こっちも困るんだよ。今からたむろ場に帰って、仲間に返事の変更を伝えないといけねぇじゃねえか」


微苦笑が崩れ、浅倉さんの顔は驚愕に変わる。ヨウはしたり顔を作った。


なあ浅倉さん、俺等のリーダーは馬鹿で真っ直ぐなんだ。直球型不良なんだ。

何より義理と人情と仲間を大切にする、不良だけど不良らしくない奴なんだよ。

弱小関係なく、信頼関係を最重視する馬鹿なんだ。
このチームなら俺等と友好的に手を結べると思う、信頼を重視する奴なんだ。

副リーダーもそう。
何だかんだいって、結局は信頼を築き上げることを選択。それに俺等チームも異存はない。寧ろ、こうなることを、誰もが予想していた。

「俺から出す条件は三つだ」

ヨウは一歩前に出て、条件を挙げた。


「ひとつ、勝利のために俺の仲間をダシにしやがったらその時点で協定解消。
少しでも俺の仲間を傷付けるような真似してみろ、容赦しねぇぞ。俺は仲間が傷付くのを何よりも嫌っているんだ。作戦であれ仲間をダシにすることだけは、チーム頭の俺が許さない。

ふたつ、裏切る素振りを見せた時点で俺等はテメェ等チームを潰す。テメェ等から持ちかけてきた話だ。責任を持って俺等と手を結んでもらおうじゃねえか。
ヤマトに寝返りでも見せたら最後だぜ? 俺等、これでも奴等と対立してる状況だ。仮に相手に唆されたとしても、裏切り行為は俺等に敵意を見せたってこと。俺等は協定を解消して、テメェ等を壊滅に追い込む。

みっつ、俺等は負けの喧嘩なんざ眼中にねえ。俺等と協定を結ぶっつー覚悟があるなら、常に勝つ気でいてもらう。弱小チームだから、腕っ節ねぇから、不良の落ちこぼれだから……ンなちゃちい言い訳は俺等に一切通用しねぇ。

勿論、協定を結んだ後は日賀野チームを負かすために協力してもらう。俺等がエリア戦争でテメェ等の肩持つって言っているんだ。それくらいの見返りは求める。

どうする、浅倉。
今ならまだ間に合う。協定の話、無かったことにもできるが?」


ヨウはアーモンド形に目を細め、まるで威圧するように向こうの頭を見据えると、ビリヤード一室に響き渡るような声音を張った。



「これは俺の意思だけじゃなく、チームの意思であり決定。俺達はテメェ等に信用と覚悟を腹に決めて返事をしている。協定を結ぶ気でいるなら、常にエリア戦争の勝者になる気持ちでいろ浅倉。俺達のチームは全員一致で、テメェ等チームとの協定を受け入れてやる!」




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