10-12
ほら、ヨウって仲間大事にするだろ? 仲間の誰かが傷付くのは嫌なんだよ。
本当はさ、ヨウの奴、喧嘩の強弱なんて関係ないんだと思っているんじゃないかな。
ヨウは喧嘩できるできないで友達の判断しているわけじゃない。
あいつは気の合う友達とワイワイしたいタイプなんだ。
成り行きで今は、日賀野達と対立しているけど、本当は喧嘩よりも、仲間とどんちゃんする方が好きなタイプなんだ、ヨウって。
ハジメはチームに何もできない? そんなことないって。
お前は敵の出方を読んだり、敵の分析が上手いじゃないか。
誰よりも作戦立てるのが上手いよ。
ここ最近、シラミ潰しに不良チームを潰していたけど、それはハジメの作戦あってこそだぞ。
しっかりと作戦を立ててくれたから俺達チームは無駄ない動きで相手を潰せたんだ。
「頼むからそんなに自分を卑下しないでくれよ。事情があるならまだしも、そんな理由でチームを抜けるんじゃ、俺もチームを抜けなきゃいけなくなるだろ。ヨウの舎弟もやめなきゃいけなくなるって。
俺はヨウに地味不良だって認められているけど……反面、ハジメの言う不良の落ちこぼれというのにも当て嵌まる。
だって喧嘩弱いし、チームのお荷物になりがちだし、寧ろ俺の方がイケてねぇから落ちこぼれっぽく見えるし。地味平凡悪いかコンチクショウだし。
けどまあ、それでもどうにかやってきてるわけだしさ。これからもヨウを最後まで信じてついていこうと思う。俺達チームメートができることって、一番はリーダーを信じてついていくことなんだって思う。
ヨウだって完璧じゃない。あいつを信じてやって陰から支えてやることでも立派にチームに尽くしているんだと思う」
「ケイ……」
「一応ヨウの舎弟だから言うよ。あいつを信じて、支えてやってくれってさ。ま、付き合いの浅い俺が言うのもおこがましいだろうけどさ。
ハジメ、それでもまだ何か思うことあるなら、俺と一緒にヨウとシズに言ってみるか。『俺等、喧嘩弱いんで抜けちゃいます。ごめんちゃい』って。
馬鹿と地獄を見るのは確実に俺等だけどな。一発かまされても文句は言えないぜ。アウチ、俺等、死亡フラグ!」
おどけ口調で言う俺は、ハジメの両肩に手を置いて言ってやる。ハジメが抜けたら困る、と。
俺の言葉じゃ物足りないのは分かっていても、言われないよりかはマシだと思うから……ハジメに言うんだ。
チームに必要な存在だって。
ハジメの言う、不良のおちこぼれは俺にだって当て嵌まるんだしさ。
相手は目尻を下げて、「ありがとう」俺に礼を告げてきた。
チームを抜けない。はっきりとは言わなかったけど、吐露したことでつっかえていた何かは取れたみたいだ。
それだけで俺は十分だ。
ハジメの表情が和らいだ、それだけで今は十分だ。そう思うのは、俺もまたハジメのことを友達だって思っているからだろうな。
と。
次の瞬間、ハジメの頭に何かが飛んできて、コツンとイイ音がした。
「アイタ」
隣人が軽く右頭部を押さえた。何が飛んできたんだと首を傾げて、飛んできた物を拾う。俺も覗き込んで見る。
うーんと……リップクリーム? ほのかに苺の香りがするらしい。野郎が持つもんじゃないよな。
ということは、これを飛ばしてきたのは……。
「ハジメのバーカ!」
ハジメにけたたましい罵声を浴びせてきたのは弥生だった。いつの間にいたんだ、弥生の奴。
薄っすらと頬を紅潮してハジメにガンを飛ばすや否や、バーカを連呼。舌を出してくる始末。
どうやら俺等の話を一部始終盗み聞きしていたらしい。何度もバーカと連呼、連呼、れんこ!
「そうやってウジウジと考えてチームを抜けると思うなら、私、ヨウにチクっちゃうからね! チクっちゃうんだからねー!」
「ちょ、弥生! それは勘弁っ、あぁあ待てったら弥生!」
今の心情をリーダーにチクられるのはばつが悪い。
ハジメは慌てて倉庫に向かって駆ける弥生の後を追った。
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