02-13
眉根がつり上がる御堂先輩に「邪魔なんだ」二度目の邪魔発言をされるがなんのその。
「俺はうそつきっす」
例え約束をしてもすぐに破ってみせると小生意気に反論して彼女と対峙する姿勢を見せた。俗にいう喧嘩である。
「あ、あらあら。どうしましょう。お二人とも、落ち着きませんこと?」
宇津木先輩が務めて穏やかに仲裁人を買ってくれる。が、俺達の口論はヒートアップする。
「この前、もう嘘はつかないと言ったのは君じゃないか!」「忘れました。俺、うそつきっすから!」「へえ、僕にそんな口をきいて。ずいぶん偉くなったねぇ」「今の俺は偉いんっす!」「へたれ姫のくせに生意気な」「へたれ上等っす!」「それは食われる覚悟があっての発言かい?」「そ、それとこれは」「ないんだね。やっぱりへたれだよ」「へ、へたれでもやる時はやりますから!」「例えば?」「た、た、例えば」「例えば?」「……う、」「う?」
「先輩が傍に置いてくれないなら、おぉお俺は浮気しますからね! 相手は……」
王子から視線を外すと、肉食お嬢様をチラ見。
舌なめずりをしている姿に恐れおののき、慌てて宇津木先輩に視線を留める。が、今度は大雅先輩から殺気を放たれたために断念。
腕を組んで他に浮気できそうな女の子がいないか考える。
さと子ちゃんが脳裏に過ぎったけれど、トロくんからぎゃんぎゃんお小言をもらいそうである。
と、なると此処はやっぱり野郎……いやいや論外である。
あ! いた!
「蘭子さんと浮気します! 年上の女性を口説きまくりますよ、俺!」
どどーんと蘭子さんを指さし、傍に置いてくれないならば彼女と浮気する発言をかましてみせる。
いっちゃん驚いていたのは誰でもない蘭子さんである。
瞠目する彼女はすぐに表情を崩し、困ったように笑って「高校生は」と眉を下げている。
俺も年の差が十以上もある人と実際お付き合いするとなれば、うんぬんと悩んでしまうだろう。
だけど他にいなっ、じゃない! 年上の女性にも魅力はあると思うんだ!
「蘭子さんは大人のお姉さんとして、男心を誘うものを持っています。余裕ある笑みと物腰柔らかい動作。優しい気遣い。どれをとっても完璧っす。お姉さんが優しく教えてあげる、みたいなシチュは蘭子さんのような人が良いと。着物美人で……色っぽい、というか」
「空くん。君、勢いでとんでもないことを言っているよ。そしてご愁傷様」
「へ?」間の抜けた俺に合掌するエビくん。
「今のは空が悪い」
アジくんがため息をつき、イチゴくんとトロくんがひらひらっと手を振った。
その意図が分からず、目を点にしていた俺の背後からおどろおどろしいオーラが漂ってくる。しかも二つも。
こ、これは、まさか。
「ほお。ということは、今まで付き合っていた女は色気がないと?」
「ふふっ、豊福。君が蘭子のような年上好きとは知らなかったな」
あ、愛すべき父さん、母さん、後ろを顧みることができません。
「そーら、一つ年上としてお姉さんが優しく教えてやろう。あんたの身の程というものを」
「とーよーふーく。僕からも優しく教えてあげよう。君の立場というものを」
とととと父さん、母さん、後ろを顧みることができません!
急いで逃げたいとっ、ぎゃっ、両肩を掴まれっ、うわぁああああごめんなさい!
嘘です嘘です、実は俺の好みの眼中は年下か同級生「なに?」「それはどういう意味だい豊福?」
ぎゃぁああああああ! 昔の好みっすぅううう!
今は一つ二つ年上の女性が好きっす! 大好きっす! 愛してやまないっす!
だ、だからっ、許して下さいっ!
確かに蘭子さんの方がアダルティーな色気があって、つい見惚れてしまいますけど、貴方達も負けてi「空。泣いても喚いても」「恨みっこなしだよ」
ほぉおおんと、攻め女可愛いかっこいいいぃいいいい! だから、うぎゃああああ!
以下、傍観者の戯言。
「馬鹿な豊福だぜ。あいつ等に喧嘩売っちまうなんざ……男でいられるといいな」
「空さん。大雅さんに抱かれたら」
「頼むからそれ以上言うな百合子。泣きたくなるから」
「あーあ、空のやつ。攻め女二人を敵に回しちまった。あんなことされちまって」
「う、羨ましいやないかい! 自分もさと子ちゃんとっ……さと子ちゃんは結局来るんかどうか聞いてへん?! 花畑、さと子ちゃんはおるんやろうな!」
「勿論(俺が知るわけない)。桧森はトロの攻め女だもんな! きっと来るさ!」
「……まだ出発まで時間がかかりそうだな。これ」
「みなさん、可愛いらしいですね。しかし、蘭子もそろそろも年齢を考えて、男の方の許容範囲を広げておきましょうか――」
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