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02-08




突然、机に大きな振動が生まれる。


隣近所にいた俺とエビくんが大層驚く中、振動を生んだ犯人が鉛筆を放り出して両肩を引っ掴んでくる。

がくがくと揺すってくる男前くんに落ち着くよう促しても、アジくんは興奮したように言葉を紡いだ。


「聞けば聞くだけ財閥界に腹が立ってきた! なんだよ、金があるから力もあるってか?! 庶民舐めるなよ! 同じ人間だろうが、なあ?!」

「え、あ、え?」


「俺さ、金のない人間を見下す財閥界に前から腹が立ってしょうがなかったんだよ! しかも駒として利用とするとか論外だ!
お前のためを思って、財閥界の毒に染まって欲しくなくて、財閥界に入れ込むなっつったけど撤回! 財閥界の人間をお前が見下せ! くだらん自尊心を打ち砕け! 空ならやれる。やりゃあできる男だ! 手始めに財閥交流会に乗り込め!」


「あ、アジくん。声がっ、授業中だからね」

「安心しろ。俺とエビも手伝ってやる! 俺達がお前を幸せにしてやるから!」


この男前は授業中になんてことを言ってくれるのだろうか。

いやはや女子達をキュンさせるような台詞だども、熱弁するアジくんのおかげで美術室が一瞬にして氷河期に入ったよ。

周囲の笑いと白眼視とその他諸々を一身に受けてしまった俺とアジくんとエビくんは、


「あなた方の友情は行き過ぎています」


見事におばあさん教師から注意されてしまう。しかもずれた方向で。

アジくんはまーったく気にした様子はないけれど、「なんで僕まで」エビくんはこめかみに手を添えて嘆いていた。

どうやらアジくんが食い下がっていたのは、財閥界に不信感を抱いているがゆえだったようだ。

アジくんは正義感が強いから、人を傷つける政略的な行為は許せない男なんだよな。カックイイ! 異性なら惚れるよ、まじで!


気を取り直し、注意を受けた俺達は肩身の狭い思いをしながら作業を再開。

まったく気にしていないアジくんだけが、「財閥交流会か」確か御堂先輩と出逢ったのはそれだったよな? と話を振ってくる。軽く相槌を打ち、鈴理先輩達に誘われてついて行ったのだと返す。

けど、今回は自身がパーティーに参加する関係者。欠席はまずいんだけど。


「気まずいまま御堂先輩とパーティーに行くのもなぁ。どうにか説得できればいいんだけど」

「御堂先輩は空くんを危険に及ばせたくないんだろうね。うーん、監視の目を増やすとかは? 君のところ、ガードマンはいないの?」


「いるようだけど、御堂家のガードマンとは接触したことがないな。ガードマンを増やすことを言っても、簡単には「それだ。ガードマンだ」


俺の言葉を遮ったアジくんが指をぱちんと鳴らし、説得の方法を閃いたと満面の笑顔を浮かべた。

その笑みにとてつもなく嫌な予感がしたのは俺だけじゃないだろう。

エビくんに視線を流すと、「まさか」片頬を痙攣させている。

アジくんの思考を読み取ったようだ。


ニッ、歯茎を見せて笑う男前は人差し指を立て、俺達にこう告げる。



「題して財閥侵略大作戦。シュリンプ、早速授業が終わり次第、竹之内先輩のところに行こうぜ!」




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