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02-03



閑話休題、戻って来た源二さんがくつくつと笑いながら俺達と対面する形で胡坐を掻く。

ぐずっと涙ぐみながら肌蹴た浴衣を整える俺の隣で、


「いいところだったのに」


ぶうっと御堂先輩が脹れ面を作っていた。

お行儀が悪いことに彼女も胡坐を掻いている。

これでも一応女の子なのに。

でもそれを指摘すると彼女の機嫌が最高に悪くなってしまうだろうから何も言わない。

ただでさえ邪魔をされてご機嫌ななめなのだから。


一方、義父予定である源二さんの前ゆえ俺の姿勢は自然と正座になってしまう。

しょうがないじゃないか、(仮)義理のお父さんの前じゃ下手な態度は取れないんだから。


「部屋に来るならまず内線を使ってくださいよ。父さま」


恨みがましそうに相手を睨む御堂先輩に、すまないすまないと源二さんが悪びれた様子も無く謝罪する。


「今度からそうすることにするよ。いやぁ上手くいっているようでなによりだ。
あ、空くん、気にしなくていいんだ。私は君達の事情よりも、男女交際に重点を置いているのだから。玲が男に手を出しているうんぬん、空くんが手を出されているうんぬん、敷かれているうんぬんなど私には関係ないこと。大切なのは玲が男と恋愛をしていることだから」


それは励ましと捉えて良いのだろうか? 俺としては大いに気にするんですけど。

だって仮にも襲われている場面を見られたんだ。

気にしないわけが無い。

未来のお義父さんにあらやだぁなところを見られただなんてっ、ううっ、天国にいる父さん母さん、実家にいる父さん母さん、不甲斐ない息子を許して!


シクシクと泣く俺に追い撃ちをかけるかのように、


「孫が見られるのは一年後かもしれないな」


男でも女でも可愛いだろうな、と源二さんが嬉々溢れる笑みを浮かべる。

一年後と言えば俺は18歳、受験期真っ只中である。

うん、俺の性格上、絶対に子作りなんてしていないし、させていない! 未来の俺を信じる! 信じているよ俺!


……でも、本当に子供ができていたらどうしよう。

ははっ、18で親父になるなら未来の進路は就職で決定だなこれ。


だけど18歳になるのだから結婚はできる歳だ。

来年の俺はどうなっているんだろう?

一応、今も財閥の子息候補ではあるんだもんな。

既に婚約はしているのだから、来年は結婚していてもおかしくない。


もし来年ハッピーウェディングになるとしたらどうなる?


コングラチュレーション!

父さん母さん、我が儘娘、じゃね、我が儘息子は一生懸命恋をしました。フーフーフー! サンキュ!


……こうなるか?! わぁーい、だったら挙式は夏に挙げなきゃだな!

でもでもでも例え御堂家に婿入りしても、豊福空はこれからも父さん母さんの息子だから!

いつまでも精一杯に親孝行するからね!


……阿呆か俺。現実逃避を起こしすぎだろ。おかげで今、頭の中ではモー娘しか出てこない。


脳内でうんぬんハッピーなウェンディングソングを流していると御堂先輩が用件を尋ねた。

水入らずの時間を邪魔したのだから、それなりの理由があってでしょうね? と未だ脹れる王子に(食われかかっていた俺は助かったけどね!)、源二さんがやや困った笑みを浮かべる。どうやらそれなりの理由があるようだ。


一呼吸置くと、


「再来週の金曜に財閥交流会があるんだ」


溜息混じりに話を切り出す。


財閥交流会。

懐かしい単語だ。

確か同じ世代の財閥達が集って交流するパーティーだったよな。

夕飯代が浮くからと大雅先輩に誘われてホイホイついて行ったあの頃がとても懐かしい。

俺と御堂先輩はこれを通じて出会ったっけ。


噂になってしまった思い出や鈴理先輩に仕置きされた思い出も今じゃ笑い話だ。


その財閥交流会が再来週の金曜日にあるという。

源二さんはその交流会に参加して欲しいと相談しに来たようだ。

当然、財閥の令嬢と婚約している俺にとって関係のある話だ。

前のようにのらりくらりとタダ飯を食うだけでは済まされないだろう。


「僕はともかく、豊福も参加ですか?」


早々に異議申し立てをしたのは御堂先輩だった。

自分はともかく、豊福の出席は必要だろうかと意見する。

婚約パーティーの延期(誘拐事件)から、そう月日は経っていない。


パーティーに出席する段階じゃないだろう。

彼女は俺の気持ちを考慮して次回以降の参加で良いではないか、と物申した。



それを言うなら御堂先輩もだろう。あの事件の被害者は俺一人じゃないのだから。

目で主張するものの、「君は場慣れしていないだろう?」ああいうパーティーには心理戦や、政略が必ず蠢いているものなのだと告げ、視線を一蹴。

俺の訴えを素っ気無く退けた。


源二さんも同じことを思っていたようで唸り声を上げながら片腕を組み、鼻下の髭を弄る。

できることなら二人とも欠席して次回以降に出席を考えていたらしいんだけど、そうもいかなくなったようだ。




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