00-06 この時、ぼくの中である一つの疑問が浮かんだ。 ぼくは今まで興味のなかった茶について、仲井は今まで興味のなかった女の子について、興味を持ち始めるようになった。 対照的にぼくの中の女の子への興味は薄れている。 仲井のことはよく分からないけれど、ぼくを観察するような、疑(うたぐ)った眼からして同じ気持ちなんじゃないだろうか? そう思ってくるとひとつの結論に到達する。 まさかお互いの興味が入れ替わった? と。 最初こそ馬鹿馬鹿しい考えだとすぐに一蹴した、が、現状を説明するには十分な答えだ。 でなければ、火が消えたように女の子への興味が消える筈がない。 そして迎えた三日目。 自分の置かされた境遇と受け入れがたい気持ちに耐えかね、こうして仲井に意見している。 仲井がぼくに意見したのも同じ答えを導き出したからだろう。 うん、なるほど。 冷静になって思った。原因は一つしかない。 「あの時の事故だな。頭ごっちんしたあの事故のせいで、ぼくの女の子に対する愛が」 「信じがたいがそれしか思い浮かばん。でなければ、こんなケッタイ気持ちを抱くものか。……つまり貴様のせいではないか!」 二人で三日前の出来事を思い出していたぼくは、仲井の大喝破に首を引っ込める。 「なんだよぉ」 自分だって余所見してたじゃんか。弱弱しく反論するとギッと睨まれた。 眼光の鋭さは心臓を射抜く勢いだ。 今なら眼力で人を殺せると思う。 「貴様が余所見をして落ちてこなかったらこんなことにっ、責任取れ!」 女の子に言われるならまだしも、まさか野郎に「責任を取れ!」なんて言われる日がくるなんて。 ぼくって不憫な男。 野郎は専門外なんだけど。 今日何度目かの溜息をつくと、「聞いているのか!」胸倉を掴まれてがくんがくん揺すられた。 「ちょ、落ち着けって。そんなこと言われても、ぼくにどうしろって言うんだい? ぼくだって被害者だぜ?!」 「貴様の女子に対する気持ちが、おれの質を落としているのだぞ! おれの方が断然被害者だろうが!」 「ぼくの気持ちのおかげで女子に興味を持ったってだけだろ? ストイックな性格には好い刺激じゃんか。ぼくなんてお茶だぜ、お茶。この歳で枯れた気持ちを抱くなんて悲劇!」 「おれの気持ちにケチつけるな! 誰が枯れているって?」 「まんま返す、その言葉。ぼくの気持ちを返せよ! 女の子大好きって思いたいぃいいい!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |