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01-26



「でさでさ。仲井くん。ぼくは少し変わった部活を作りたいっつったじゃん?」

「ああ、言っていたな。あれはどういう意味だ?」


ぱくっとおはぎを口に入れる仲井に、ぼくは意気揚々と答える。


「意味はまんまだよ。ほら、茶道部に限定すると基本的に触れられるお茶って抹茶だけじゃん? でもぼくは…、じゃね、君はお茶好きじゃん? 君ってお茶ならなんでも知っているかんじだろ?」

「勉強しているからな」


「だっろー! おかげさまでぼくはほうじ茶やトウモロコシ茶を大量買いしちゃったわけ。折角部活を作るなら、色んなお茶に触れてみたいじゃんか? お茶代だって馬鹿になんないし、どうにか部費を搾り出してもらってお茶を味わおうって魂胆! どうよ?」


「考え方が狡いな」微苦笑を浮かべる仲井に、「賢いって言えよ」ぼくは指を鳴らして舌を出した。
 
真面目な話。毎週まいしゅうのお茶代が馬鹿になんないだよ。この機に節制できるなら、喜んで部費を狙いたいじゃないか。
 

「しかし色んなお茶と言っても、ただ茶を買うだけなら生徒会は許可を下ろさないと思うが」
 

「んー…、そうだな。例えばさ、国際文化に触れ合う的な理由付けをつけて許可を貰おうぜ。
外国版茶道みたいなのはないのか? ほら、中国とか沢山のお茶が出回っているだろ? 西洋でいえば紅茶? あれも向こうにとってはお茶だしさ。ぼく達は沢山のお茶を研究したいんです! みたいな熱意を生徒会に主張したら、部費くらい出ると思うんだけど」


「紅茶にまで手を出すのか?」それはおれの専門外だぞ、瞠目する仲井。

「なら一緒に勉強だね」あれは西洋のお茶なんだぜ? ぼくは能天気に笑った。
 
そしたら仲井が、「元に戻った途端その熱意も消えるだろうな」と皮肉ってくる。

うーん、確かに否定は出来ない。今のぼくだからこそぽんぽんと部活について思い浮かべることができるけれど、元に戻ったらはてさてどうなることやら。


……、だけど。


「なら、約束するよ。部活が確立するまでは、元に戻ったとしても君と頑張るって」

  
「どーだかな」素っ気無い仲井に、「自分で作るつったんだぜ?」そんくらいしないと割に合わないだろ? 頬を崩して抹茶を一口。


「ぼくはさ。出来ない約束は最初からしないんだ。絶対に。
だけど出来る約束なら必ずやり遂げる。それは昔から自分に課しているぼくのモットーだったりするんだよ。ふふっ、合コンのセッティングで無茶言われてもやれることならやり遂げてきたんだ。何よりMハゲにカチンきたしね。好きなものを貶されたりすると、腹が立つじゃないか」

 
まあ、ぼくの気持ちではないのだけれど。

おどけてみせると生きた武士が竹フォークを置いた。
 
次いで、自分の通学鞄からペンケースとノートを取り出す。
豪快にノートのページを引きちぎって切れっ端を作ると、その紙にボールペンで何やら殴り書き。

何をしているのかと思いきや、「ん」ぞんざいに紙を押し付けられた。

反射的に受け取り、その紙に目を落とす。そこにはミミズみたいな字でメールアドレスと電話番号が記されていた。
 

「遅くなった。おれの連絡先だ」


おーっとここにきて、仲井の連絡先をゲットできるなんて! ……そういえばまだ貰っていなかったな、こいつの連絡先。
 
「サンキュ」必要に応じてメールするから。
相手に言うと、「電話でも構わん」寧ろ茶のことなら電話の方が早い、とか言われちゃったんだけど! なんだか仲井との仲が深まった気がするんだけど!

嗚呼、ちょい仲良くなれたってことは気まずい空気も避けられるってわけで!
 

ついでについでに、もっとお茶の事を聞けるわけで!


ビバ・チャーンス!
 
 
「仲井くん! 実は昨日、スーパーでこんな代物を見つけたんだ。つい、二袋も買っちゃったんだけど」

「はあ? また何かを買っ……、そば茶。しかも袋買い」


遠目を作り、ぼくの差し出した茶の袋を見つめる仲井に淹れ方を教えて欲しいと笑顔を作る。

茶の袋とぼくを交互に見比べた後、仲井はこほんと一つ咳をして、「少しチェンジについて考えたんだが」話を聞いてくれるか? と、もったいぶってくる。


この話をできるのはぼくくらいだろうから当然承諾。

どうしたのだと尋ねれば、茶の袋を置き、仲井がふーっと吐息をつく。
 
 

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