01-25
さて、目的の抹茶とセットで和菓子を頼んだぼく達はメニューが来る間、これからのことについて話し合うことにする。
言いだしっぺはぼく。
でも茶に対する知識を持っているのは仲井。
だからこそ部を立てる話し合いが必要だ。
「生徒手帳の校則によると、正式な部活を立ち上げるには最低三人部員がいるんだってよ。同好会だと二人、か。同好会はぼくと仲井でクリアだけどさ」
どうせなら部活にしてやりたいよな。
頬杖を付いて吐息をついた。同好会だと部活以上に短期間で消えてしまう可能性がある。
ただでさえ茶道部って需要が無さそうだもんな。
ほら茶道って単語を聞くだけでも礼儀作法とか、物の準備とか、そういったのがメンドクサそうじゃん? 文化系でも人気がありそうな吹奏楽や美術部と比べたら、ぜーんぜんだと思う。
あのMハゲのことだ。
今頃きっと、「どうせすぐに消える部活だ」とか思っているに違いない。
……ぼく等世代で終わらせるのは癪だな。
ろくに見向きもしない生徒手帳と睨めっこしていると、さっきの店員が抹茶Aセットを運んできた。
内容は抹茶におはぎというシンプルメニュー。
だけどこれがうんまいだよ!
生徒手帳を放り出し、両手を合わせて早速イタダキマス。
おはぎよりも先に抹茶に手を伸ばし、その味を堪能する。
苦いお茶は苦手だけど、都合上一日一回はお茶を飲まないと気が済まない。
あっつーい抹茶に至福を感じてのほほんとリラックスしていると、「貴様は変わった人間だな」向かい側の席で抹茶を飲んでいる仲井に肩を竦められた。
「苦手な茶を好んで飲み、阿呆面をするなんて」
「幸せそうな顔に訂正してくれるかい? 確かに抹茶は苦手な類いだけど、ここの抹茶は茶道で立てる抹茶よりかは苦くないし。寧ろ甘いから美味いし。あ、でも仲井くんの立てたお茶は美味いよな」
しみじみと感心すれば、相手の表情が無になった。
おっと照れ隠しだな? それ。
褒められるほど顔に出さないよう努めているんだろうけど、モロバレだよ。
意味深に笑うぼくの心意に気付いたのか、軽く咳払いをする仲井は間を置いて「この抹茶。イケるな」と話題を切り替えす。しょうがないから便乗することにしてやる。
ただし話題は戻す方向性で。
「君ほど変わった人間はいないと思うけどな。あくまでぼくの起こした行動は半分、君の気持ちによるものだよ」
「いや…、それだけではないと思う」
語り部が湯飲みを置き、おはぎに手を伸ばす。
竹フォークで四つ切にしつつ、意識はこっちに向けてきた。
「例えおれが本来持っている自身の気持ちを持っていたとしても、あれほどの行動力を起こせはしなかっただろう。だからこそ貴様は変わった人間だ。おれならば諦めから入るだろうな」
「なんで? あのままじゃ好きなものが触れなくなるんだぞ。それって悔しくね?」
「分からない」ただ有りの儘に受け入れるのだと思う。
仲井は消極的な発言を口にした。
性格が災いしてんのか?
ぼくには仲井の気持ちがちっとも分からない。
ぼくは考えるよりも先に行動を起こすタイプだから。
それに対して仲井は真逆なんだろう。生真面目だしな、こいつの性格。
首を傾げた後、「ま。いいじゃん」部活を作るって決めたんだし、何事もチャレンジだ。ぼくは明るい空気に換気した。
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