[携帯モード] [URL送信]
01-08



「えーっと、やかんに水を入れて火をかける。沸騰したら15g入れて…、あ、しまった。トウモロコシ茶の適温ってどんくらいだ? 仲井くんが温度によって風味が左右するつってたよな。折角なら美味く飲みたいし」
 

しまった、仲井の連絡先を聞いておけば良かった!

「ネットで調べるかな」でもそこまでするのは面倒だし。

けど美味しく飲みたいわけだし。

まずネットの情報ってアテになんのか? 嘘もたっくさんあるしな。やっぱ仲井の連絡先を聞いておけば良かった。
 

ガスコンロの前でうんぬん悩んで後悔していると、自室にいたのか、妹がひょっこりと顔を出してきた。

妹は中学二年生。二つ下。
多感な年齢(所謂思春期)で、あんまりぼくと好んで会話をしようとしない。

両親とは仲が良いんだけどね。
ぼくとはなんとなく距離を置きたいようだ。

女好きの性格を好ましく思われていないのかもしれない。妹はおとなしい系だしな。


ま、いいんだけど。
 

台所に入ってきた妹を一瞥し、すぐにやかんへ視線を戻す。


さてどうするか。
 
パックは幾つかあるし、まずは温度を気にせず淹れてみようか。
  

「兄貴。着替えもせずに、台所で何しているの?」


トウモロコシ茶の袋と睨めっこしていたら、妹が怪訝な顔をしてぼくに声を掛けてきた。


「このお茶とお茶しようとしているんだよ」


洒落を言ったら、冷たい眼差しを向けられた。どいつもこいつも冗談に乗ってくれないんだからもう。冷たい奴等。
 
おさげ髪を解いて、手櫛で髪を梳いている妹の皐月(さつき)がぼくの手元を覗き込んでくる。

「トウモロコシ茶?」なにそれ、美味しいの? 悍ましいものでも見たかのような顔がこっちを向く。

見上げてくる皐月の視線を受け止め、「今からそれを試してみる予定なんだ」スーパーの店員さん情報によるとダイエットや冷え性解消の効能があるらしいぞ。と教える。

 
ダイエットという言葉に反応した皐月が本当に? と念を押してきた。 

「あくまで店員情報だけどな」でもお茶って健康飲料としてよく飲まれているよな、ぼくは疑問交じりで返事する。袋をよく読んでみると、確かに『冷え性解消』と記載された文字が。『むくみ改善』にもなるらしい。

皐月にそれを見せると、「ふーん」鼻を鳴らしてちょっと飲んでみたいと呟いてくる。

だったら一緒に飲めばいいじゃないか。どうせ量的に余るだろうから。

温度のことはまた今度にして、まずはお味を確かめるためにトウモロコシ茶を作ることにする。

煮出すのに時間が掛かるから、その間に緑茶の飲み比べでもしよう。

 

買ってきた緑茶三本をテーブルに並べ、順に開封。
 
コップに移すのはメンドクサイから、ラッパ飲みで緑茶の飲み比べを開始。

一本目を口に含んで「渋い」そういえばぼくは緑茶が苦手だった、と顰め面を作る。
 
いやでもこれも飲み比べのため、我慢して二本目にいこう。

いそいそと二本目の茶を口に含む。


嗚呼、やっぱり渋い! ほうじ茶の方がまだ我慢できた! が、やっぱり緑茶は苦手なんだ!


だけどぼくはお茶の飲み比べがしたいんだ! 

てか、なんで緑茶が苦手なんだよ、ぼく! おかしいだろ! だってぼくはお茶が、お茶がっ。


「……、兄貴。緑茶だめじゃなかった? お茶好きにでもなったの?」

 
お茶を飲んでは百面相をするぼくを見かねて、皐月がおずおずと声を掛けてくる。
 
 

[*前へ][次へ#]

8/27ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!