01-07
こうしてぼくの努力もむなしく、親密度を上げるどころか、双方の距離を開くカタチとなってしまった下校時間。
ご丁寧に改札口まで見送りして下さった仲井と素っ気無く別れ(ぼく達はカレカノか!)、ぼくは駅のホームで電車を待つ。
風通りの良いホームは電車の通り道にびゅうびゅう風を通らせている。
風が冷気を纏っているため、電車待ちの人間は肌寒い思いをしなければならない。
季節は夏に向かっている筈なのに、それだけ日陰になっているホームは冷えているということなのだろうか?
二の腕を擦りつつ、ぼくはホームを軽く観察。
ぼくのような学生さんもいれば、取引先から帰社しているであろうリーマンもいる。
可愛い私服のあの子は女子大生かな? モリヘアが可愛い。
女子大生のミニスカを一瞥した後、ぼくは視線を前に戻してブレザーのポケットに手を突っ込む。
ちょっと前のぼくならきゅんっとしているところなのに、今のぼくじゃきゅんすら感じない。
好きなものを目にしているのにきゅんもないって、まるで他人の体に憑依したような気分だよな。
(仲井の言うとおり、ぼくも女の子に対する知識も興味も残っている。けど気持ちが、興奮するくらい好きだった気持ちがなくなっている。それがすっげぇ気持ち悪い)
かわりに込み上げてくるのは茶に対する情熱ばかり。
これはきっと仲井の茶に対する気持ちの比重を表しているんだと思う。
他人に対しては愛想もクソもない仲井だけど、ぼくの思っている以上に、んにゃ感じている以上にお茶が大好きなんだろう。でなければ、お茶如きにこんな気持ちになるか? ならないよな? お茶如きにさ!
快速がやってきた。
それに乗り込んで、十分ほど乗り物に揺られ、自分の降りる駅で下車。
歩調を速めて改札口を通ると、駅構内にあるスーパーに迷わず足先を向けた。
迷うことなく飲料コーナーに向かい、500mlのペットボトルを三本購入。
どれも緑茶。
だけどメーカーが違う。
その後、お茶っ葉を買いに売り場を移動。「千円しかないからな」あんま買えないや、ぼそぼそっと呟いてお茶っ葉の入った袋をカゴに入れていく。
「あ、すげぇ。トウモロコシ茶ってのがある。はじめて見た!」
どんな味だろ? やっぱトウモロコシか?
むくむく興味が湧いてきたぼくはそれまで入れていたお茶っ葉をすべて棚に戻し、トウモロコシ茶に手を伸ばす。早速家に帰って淹れてみよう!
さっさと商品を購入した僕は一目散にマンションへ帰宅。荷物をリビングのソファーに放って台所に立つ。
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