00-04
「なっ」血相を変える九条とは対照的に、私は目を輝かせる。
ニッと口角をつり上げる三枝は俺は許可してやるよ、とウィンクしてきた。
九条と違って話が分かるじゃないの、こいつ!
「なっ…、ま、マジで言ってるんっすか? アサヒさんっ」
「大マジも大マジ。みよ子ちゃんは幸いなことに、空手を習っていたんだろ? 護身術は充分にある。下手すりゃどこぞの男より強ぇぞ」
「それに」チームに色気が欲しいと思っていたんだなぁ、言うや否や三枝が私の背後に回るとそのまま両手を胸に回してお触りおさわり。
額に手を当てる九条に唖然とする私、お触りお触りとセクハラをし続けている三枝。
「胸を締め付けてるみてぇだが」
やっぱオンナだって分かる触り心地だなぁ、愉快に笑う三枝の行為をやっと理解した私は赤面アーンド絶叫。
ド変態と声音を張り、背後を振り返って回し蹴りをかます。
紙一重に避けた三枝は口笛を吹き、触っていた両手の指をバラバラと動かす。
「みよ子ちゃん、実はCくらいだろ? 小さくはねぇぞ」
「〜〜〜ッ、い、今すぐ成敗してやる! ちょっと表に出なさい!」
「おーっと今しばらくは野郎として生きていくんだろ? そういう優しい口調でいいのか? んー?」
意地の悪い笑みを浮かべてくる三枝に、「表に出やがれ!」私は荒々しい口調で相手に喧嘩を吹っかけた。
そうこなくっちゃなぁ、指を鳴らす三枝はそれくらいの威勢がないとチームには置いてやれない。
一変して真顔に変わる。
「なにせ、俺のチームは≪不良を食らう不良チーム≫なんだからな。
分かるか? みよ子ちゃん。
此処はただのチームじゃねえんだよ。
人数こそ小規模だが、皆、不良に私怨を抱いた輩バッカだ。
当然俺や九条もそう。不良のナリをしているが、すべては不良を食らうためだ」
三枝のギラついた瞳に、私は怯んでしまう。
「俺等の最終目的は」
地元の不良をすべて食らってしまうこと、三枝は静かな闘志を燃やし、舌を鳴らした。
九条が彼の名を呼ぶと、大丈夫だと肩を竦めて頬を崩した。
「円(まどか)のことがあったから」
つい力説しちまうんだと三枝は苦笑を零す。
円。
それは人名だと分かるし、私の知り合いでもある名前だ。
だって彼の口ずさむ人名は私の大親友なのだから。
私が男装までして不良のチームに入ろうと思った契機でもある、彼女の名前に私は数日前の出来事を思い出す。
すべては円の、三枝円の交通事故から始まった―――…。
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