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04-07


 

「べつにアダムとイブを作ったことに異論はないのだが、立ち位置がなぁ。男は女を守る。女は男に守られる。神様はどうしてそういう法則を作ってしまったのだろう。女は弱い生き物なのだろうか。いいや、昆虫のとある世界では交尾を終えたメスはオスを食らってしまうらしい。体的にもメスの方が大きいらしいし。
うむ、何故人間もそのようにならなかったのか。カニバリズムを求めているわけではないのだが、人間の世界にも女は男を食らってしまうという法則が欲しい。主よ、あたしは食らいたい人間なのですよ」


「……、大雅先輩。幼馴染みとして、今の彼女をどう見ますっすか?」

「……、ご乱心、としか言いようが」
 

「こうなれば革命を起こすしかないのか! 世界でも征服して法則を変えれば、世の女は皆、攻め女になるのか! よし、だったら何から始めるっ、修行してかめはめ波の取得からでも始めれば良いのか?!」


「……、悪質な風邪にでもかかったのかもしれないな」

「……、あれ。風邪なんっすか?」


「はぁああ。そんな馬鹿なことがあるか。あたしは宇宙人ではない、取得は不可だ。幾らあたしでも不可能という文字が辞書にある。ナポレオンの名言に茶々を入れたくなる。人間誰しも不可能はある、と。不可能と言う奴は愚か者? ええい、だったら人類皆、愚か者だ」


「……、鈴理の変人っぷりには慣れている筈なんだが。あれはちょっと変の度を超してやがる」

「……、病院の何科に連れて行けばいいんっすかね。俺、心配になってきましたっす」


「愚かと罵ったナポレオンに聞きたい。愚かなあたしはどうすればいい! 返事をせんか! こら!」

 
「……、鈴理先輩。見ているだけで痛々しいっす」

「……、泣くな豊福。俺も無性に泣きたくなる」
  
 
ぐわぁあっと呻いてテーブルに撃沈する彼女は、「守られる側など」言語道断だとシクシクと嘆く。

掛ける言葉もないとはこのことだ。

撃沈している彼女に俺達は顔を見合わせた。


本当にどうしたんだろう、鈴理先輩。


むくり。

頭上に分厚い雨雲を作っている鈴理先輩が、静かに上体を起こした。

にへらと笑ってくるお嬢様に、同じ顔で笑みを返す(若干引き攣り気味)俺達の間に沈黙ができるのは自然現象だと思って欲しい。


節々で己の中の中学二年生を暴走させた鈴理先輩は、呆気取られている俺達にいつまでもにへらへらと笑い掛けてくれた。
 

どうしたんっすか、何かあったんすか、聞いても彼女はにへらへらと笑うだけ。


挙句、頭の螺子が緩んでしまったのか、螺子がどっかに飛んでしまったのか、はたまた大雅先輩の言うようにご乱心してしまったのか、かめはめ波が実はできるのではないかと思い立ち、危うく美人お嬢様が見みる少年ごっこをするところだったという。


隣に座っていた大雅先輩が全力で止めてくれたものの、鈴理先輩らしからぬ行動に俺は混乱も混乱だ。

今日以外にも度々目の当たりにしている物思いに耽っている様子、そして彼女らしかぬ言動からして、何かを悩んでいるようには思えるんだけど。
  
 

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あきゅろす。
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