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03-14



「君とは好敵手になりそうだな」男の中でも要注意人物だと吐き捨て、いつか勝負を申し込むとそっぽ向く。
 
「嘘だろ」なんで俺が敵視されなきゃいけないんだっ、アジくんがゲンナリと肩を落とした。

ごめん、アジくん。
今のは俺が悪いよな、マジでごめん。

でもって御堂先輩、闘志を燃やしているどさくさにまぎれて、まぎれて、何してるんっすか。


俺は男っすよ、貴方様の大嫌いな男! 可憐なガールじゃないっす、普通ボーイっす!
 
 
腰に手を回して体を引き寄せようとする御堂先輩に、そう抗議を述べた。
 
彼女の仕置きが怖いから、離れようともするんだけど、「豊福は分かっていないな」顔を覗き込んで微笑を零した。

ギョッと驚いて、大きく一歩後退する。

二、三歩、後退して逃げる俺に迫る彼女はあっという間に俺を廊下の窓際に追い込んで、彼女は顔真横に手を付いてきた。 

 
「嫌いな奴を」守りたいと思う馬鹿がいるか、全力疾走なんてするか、目と鼻の先で言葉を紡ぐ。


「僕は正門で君を待っていた。ずっと待っていたんだ。けれど君は来ない。いつまでも来ない。もしやと思って、君を探していたら…、豊福は暴行されていた。どれだけ僕が心配したと思っている? それでも豊福は僕が君を嫌いと言えるか?」
 

澄んだ瞳に暖かな光を宿している彼女は一切、逃げを許さない。視線を逸らそうとする俺を捉えてくるばかりだ。
 
向こうで鈴理先輩がギャーギャーと騒いでいるような気がするけど、親衛隊がそれを止めている気もするけど、フライト兄弟がおいおいと青褪めている気もするけど、俺はそれどころじゃない。俺は俺で一杯一杯だ。


ちょ、ちょちょ、きょ、距離が近い。激近い。

そしてナニ、この不慣れな展開っ、おぉおお俺は今、攻められているのかっ、なあ?! おにゃのこポジションに立たされているのか?!
 
 
どうにかして状況を打破したいけど、右も左も御堂先輩が逃げ道を塞いでいる。

じゃあしゃがんで離脱しようか。
俺の思惑を糸も容易く見破ったプリンセスは懐に踏み込んでくる。

よってしゃがめない。
右左下の逃走は不可、では上…、無理、物理的に不可能。豊福空は追い詰められた!


こうなれば両肩を掴んで押し返そう。

引いて駄目なら押してみろ、だ。

試みて見事に失敗するのは二秒後の話。
肩を掴む間もなく骨張った指に俺の指が絡め取られた。アウチ、万事休す!

 
アタフタする俺は愛想笑いで、戯れはやめましょうよっと宥めにかかった。

「戯れじゃないと言えば?」こてんと首を傾げてくるプリンセス御堂、小悪魔に綻んでくる。

何もかもが本気なのだとのたまう彼女は、先程の台詞を繰り返した。

「豊福は僕が君を嫌いと言えるか?」と。
  

「いや…、でもおぉおお男ですし。た、助けてもらったことは、か、感謝してますけど」

「嫌いと言えるか?」

「お。男で…」

「言える?」

「(話を逸らしてくれないし!)あぁああっと、す、好かれている方だとは…、思いますっす」

「思うじゃない。好いてるんだ」


ガチ告白をこんなところでしないで下さいよっ!
 
うわぁああ、ま、ままままマジで、これは少女漫画チックな展開だぞ! どうにかしないとっ、俺の性格上、流されちまうっ、流されちまうから!
 

「そ、そうっすか。なんか。て、照れちゃいますっすね。あはは」

「豊福、僕は君が好きなんだ。君となら生涯を共に歩んでもいい」
 
 

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